200 :名無しさん:2007/09/27(木) 23:16:57
ビューティー市ヶ谷が石川 涼美に指示、結城 千種を自軍コーナーに近い位置でキャメルクラッチの体勢に捉えさせる。
「ぐ…くく…」
スープレックスプリンセスの異名をとる彼女の、しなやかに鍛えられた体が石川のパワーで極限まで反らされる。
いまや千種の体はふとももからつまさきがマットに接しているのみで、顔はキャメルクラッチをかける石川の前にあるほど反り伸ばされていた。
千種の腹部を包む黄緑色のコスチューム…その柔らかい生地の上には可愛らしいへその形さえ浮かび上がっている。
今千種の前に立っている市ヶ谷とて、千種の力は十分に認めている。キャメルクラッチで千種に大きなダメージを与えられるとは思っていない。
彼女の目当ては今目の前に無防備に晒されている千種の腹部にあった。
試合序盤で市ヶ谷が千種に仕掛けたストマッククロー。市ヶ谷としてはただの繋ぎ技として仕掛けたのだが、
特別力を込めたわけではないにも拘らず指が食い込んでいった柔らかい感触、予想外の呻き声。それが市ヶ谷のサディスティックな部分に火をつけていた。
「結城 千種!あなたがいくら弱点を隠そうとも、このビューティー市ヶ谷には最初からわかっていましたわ!!」
この試合で偶然発見した、憶測とも言えるような物を根拠に市ヶ谷が大口を叩く。
「この試合であなたが二度と私に逆らえないように調教して差し上げますわ。覚悟なさい!」
どすぅっ!!
「きゃふぅッ!!」
だが、それは当たっていた。市ヶ谷の放ったトーキックは千種の反った腹につまさきを深々と埋めこみ、鈴の音を思わせるような悲鳴をあげさせた。千種は目を見開き、口をぱくぱくさせながら体を痙攣させる。
美しくも力強いスープレックスを作り出す強靭でしなやかな首と背中。投げ抜く際にしっかりと固定する為に鍛えられた腕。めぐみには劣るが及第点以上のスピード・跳躍力を持つ足。ディフェンス、受身の上手さ。
そして武藤めぐみとのタッグでも見せる・・・千種の持ち味とも言える最後まで諦めない精神力、粘り強さ。
そんな彼女に体が小さいという事以外の弱点があるなどと誰が考えただろう。その盲点とも言える部分がまさに、体の小さい結城 千種が昇り詰める為に隠し続けたもっとも弱い部分だった。
「どう!?これで!私に逆らう気は!無くなりまして!!?」「うッ!!ぶぱッ!ごぼっ!!ごぶあぁッ!!!」
市ヶ谷は狂ったようにつまさきで千種の腹を狙い続ける。千種はかなり早い段階で嘔吐を繰り返すようになり、気を失いかけていた。
「うぅ…もうヤダ……たすけて、めぐみ助けて…」
千種がタッグパートナーである武藤めぐみに助けを求め、視線を送る。その目に映ったのは・・・

201 :名無しさん:2007/09/27(木) 23:19:27
「ぐ…あぁあああああああっ!!」
小川ひかるにドラゴンスクリューを食らい、天を突くような高い悲鳴を発しながら、長い足を抱え込んでマットにのたうちまわるめぐみの姿だった。
今までに見た事も無いような千種の弱々しい姿に、自軍の誰よりも早く救出に向かっていた武藤。しかしそれを上回る早さで阻止せんが為にエプロンサイドから飛び出した小川に捕まっていたのだ。
小川はめぐみを無理矢理立たせ、彼女の引きずる、ほっそりした白い足を取って再度ドラゴンスクリューを放つ。
ギュルッ・ダンッ!・「い゛ぎゃああああああああああああああああっ!!!」
めぐみの足が捻じ切れてしまったのではないかと思うくらい、捻られる。
ルーズサブミッションなのではないかと思えるくらい関節の柔らかいめぐみでも、やはりこれだけ捻られれば膝関節への大ダメージは免れない。
綺麗な声の無様な悲鳴をあげ、同じようにマットに転がる。気の強いめぐみからは想像出来ない姿だ。
さらに小川は普段見せない、4の字固めに素早く入る。
バンッ!バンッ!バンッ!「がああっ!!いたいっ!いだい゛い゛い゛い゛ッ!!!」
更に絞め上げながら小川が後受身を取るようにマットを叩くと、めぐみは両手で頭を抱えるように押さえて頭を振って悶絶する。
めぐみとて飛び技だけが能ではないが、飛び技こそが持ち味であり最大の武器である彼女…膝を殺されては天才姫も形無しだ。
よく見るとめぐみの赤いコスチュームのスカート部分・・・股座の所の赤色がじわあっと広がるように濃くなり始めた。
痛みの余り失禁してしまったようだ。
片方はおしっこにまみれ、片方は胃液と涎にまみれ。
これがマイティ祐希子の正統後継者と言われ、新女で3本指にも入る名コンビ・・・その二人の姿だろうか。
「あちらはあちらでお楽しみのようですわ。さて、私もあなただけに構っているわけにはいきませんの。私のファンは一般人に留まらず、今このリングにいる人間を含めたレスラーにもいるのですから。」
電波な事を息も絶え絶えの千種に言い放ち、市ヶ谷はまるでこれからサッカーボールを蹴る前動作のように、足を後に大きく振り上げる。
「そろそろあなたはおやすみの時間ですわ!」
231 :正規軍vs反乱軍 5:5:2007/09/30(日) 19:10:15
大きく振り上げられた市ヶ谷の足が下降を始め、千種の反らされたノーガードの腹に迫る。
「たすけ……やだ、おなか……いやあああぁっ!!!」“どぱんッ!!!”“ぐちッ”「!!!ぶぐええぇッ!!!……………………こぽっ…」
押し込むように思い切り捻じ込まれた市ヶ谷のつまさきは、黄緑色の生地に集中線のような皺を作りながら千種の柔らかい腹に目を疑うような埋まりを見せた。
千種の体がビクビクビクッ!と痙攣し、口から大量の液体が噴出する。へその奥で異様な音を響かせた千種の体は両腕を重力に任せるように垂れ下がらせ完全に脱力した。
「あら。あらあら・・・」
ここで石川がようやくキャメルクラッチを解き、意識を手放した千種の上半身が頭からマットに倒れこむ。
“ゴトンッ”・・・じわ・・・
痙攣を繰り返すうつ伏せの千種の頭辺りから赤くくすんだ半透明の液体、そして股の下からも透明な液体がゆっくり広がっていく。
「弱いですわねえ〜〜。」「ふん、祐希子界隈の連中ならこの程度ですわ。…早くこの汚いのを片付けてしまいなさい」
気絶した千種を二人で見下ろしながら、市ヶ谷がセコンドに千種を運び出すように命じる。と、その時。
「やあぁぁ!」
ニュートラルコーナー最上段から弾丸のように飛び出す人影。二人が声のする方向に振り向く。
マイティ祐希子の愛弟子、『神風ファイター』菊池 理宇だ。
その名に恥じないスピードの乗った力強いミサイルキックで長い距離を一気に縮め市ヶ谷を狙う・・・が、
「ふん…」・ぱぁんっ!・だんっ!!
ベテランの市ヶ谷は突然の奇襲を半身で軽々とかわした上に、平手で菊池の血色の良いほっぺたを張って叩き落した。
「っ?……??」
叩きつけられるようにマットに落ちた菊池は一瞬何が起こったのか理解できずぺたん座りで片手を床につき、もう片方の手でじんじんと痛む頬を押さえる。
頬を思いっきり引っ叩かれたという事に反射的に涙が出てしまったらしく、菊池は涙をぽろぽろとマットに落としながら呆然としていた。
「まったく…立て続けに小さいのが相手だとやる気が起きませんわね。」ぐいっ・・・「あああぁッ!!」
座り込んでいた菊池を市ヶ谷が片手で髪を鷲掴みにして引き起こす。身長差が大きい為、菊池はつまさき立ちになり両手で自分の髪を掴む手を押さえながら泣き叫ぶ。
「祐希子の弟子は本当に生意気で手を焼かせてくれますわ…まあ、今日は厄介なのをまとめて教育し直す良い機会ですわね。」「よ…くも、結城を……がはぁっ!!」
髪を掴みながら顔を寄せ凄む市ヶ谷、それに対し自分の後輩を嬲った事に対し不満の意を露にする菊池。だが菊池の発言を遮るように腹に膝蹴りが入る。
「…貴女の信条は『当たって砕けろ』でしたわね…文字通り砕いて差し上げますわ!!」
腹を押さえて呻く菊池を、トップロープとセカンドロープの間から場外に投げ捨てる。
「市ヶ谷、お前はもう試合の権利が無い!反則を取るぞ!!」「うるさいですわね!!今出て行く所ですわ!」
千種を嬲る前に市ヶ谷は石川とのタッチを成立させていた。今、権利があるのはリング上で手持ちぶたさになっている石川なのだ。
リング上、ロープ際でレフェリーと市ヶ谷がもめている間にリング下では菊池が頭を振ってよろよろと立ち上がる。
「うぅ…」“ドカッ!”「ぎゃうッ!」
その菊池を後から蹴りつける者がいた。『クレイジードラゴン』サンダー龍子だった。
龍子は放送席前に菊池を連れて行くと、青い鉄柵の向こう…放送席の机の上めがけて菊池の体を無造作に投げ込む。
“ガシャンッ!!”「きゃう!!」
机の上の機材があらかた飛ばされ、机の上には大の字の菊池の体が横たわる。
更に龍子が鉄柵を越えてその机の上に乗ると、強引に引き起こしてパワーボムの体勢に入る。

232 :正規軍vs反乱軍 5:5:2007/09/30(日) 19:11:33
「ウオオオオオオオオオオォォ!!」“ドキャアッ!!!”
思い切り咆哮し自分の肩より高く菊池の体を振り上げ、そのまま机の真ん中に鋭角に突き刺した。
「うおわぁっ!!………出たー!新女マット初登場の際にもマイティ祐希子に見舞いKOさせた、クレイジードラゴンのプラズマサンダーパワーボム!!いやはや、私も思わず………」
真っ二つに折れた机の上で泡を吹きながら気絶している菊池の周りで実況とゲスト解説、観客が騒ぎ立てる。
「………貴方はこの世界の市ヶ谷に向かって…な、何をやってますの、サンダー龍子!!それはわたくしの獲物ですわ!」
レフェリーともめていた市ヶ谷が放送席周辺での騒ぎに気付き、握り拳を作ってリングの上からロープ越しに龍子を問い詰める。
「あんたとは利害が一致したから組んでるだけだよ。部下になったつもりはない、好きにやらせてもらう。」「ぬぁんですってえぇ〜〜!?」
下から龍子が臆する事無く市ヶ谷を指差して返答すると市ヶ谷は歯軋りしながら怒り狂った。
だが義理堅い龍子、新女のマットに上がる為のコネになってくれた市ヶ谷に対し…折れた机の上から菊池を引っ張り上げて場外マットの上に放り捨てる。
市ヶ谷が菊池を場外に投げ捨てた時の状態に戻してからエプロンに戻り、せめてもの恩義を見せる。
「ふんっ…」
市ヶ谷がそれに気付き、ようやくレフェリーとの口喧嘩も止めてリングから場外に身を移す。
と、今度は市ヶ谷が菊池の体を引き起こし始める。
「ほら、起きなさい!!私の番が控えてますのよ!!」“ぱんっ!ぱんっ!”「ぅ…ぐ、ぁ……っ」
頬を往復で張ると小さく呻きながらようやく菊池が目を覚ます。目を覚ましたのを確認すると、即座にパワーボムの体勢に入る。
「まったく、どいつもこいつも……………生意気なんですから!!!」「あああああぁぁあぁ!!」
市ヶ谷が思い切りぶっこ抜くと、菊池の体と市ヶ谷の体が縦一直線になるほど菊池を振り上げ、そのまま場外マットの上にしたたかに叩き付ける。
“ずばぁんッ!!!”「ぎゃぷっ…!」
まるで溜まったストレスを全て菊池に叩き込むようなビューティーボムに、大の字になった菊池の小さな体がガクガクと激しく痙攣し始めた。
ジュニアの菊池が、ヘビー級でもトップクラスの必殺技を食らったのだから当然の話。
しかもマットが敷いてあるとは言ってもマットの下はコンクリートの固さ…ショックが床に吸収されにくいため、リングの上で食らうよりも体にダメージ残る。
場外でなくても本来はどちらか一発だけでもくらえばピンフォールは確実だろう。それを立て続けに場外で二発も食らい、尚且つまだ試合が決まっていない。
菊池にとっては災難以外なんでもなかった。
市ヶ谷が虫の息になった菊池の体を抱え上げ、サードロープの下からリングに転がすように投げ入れる。
ごろん、と転がされたすぐ傍には、石川の足があった。ようやく出番が回ってきた石川は菊池の体を三度起こそうと試みる。
「う〜ん……なんだか、私も同じ技で決めないといけないような気がしてきましたわ〜。」
当然、そんな事は無い。が、先の強烈な二発のパワーボムを見て流れを汲んで綺麗に決めたいという気になった石川は脱力している菊池をパワーボムの体勢に強引にとらえる。
「…ぅ…う。う!?うわああぁ!!やだ、もうやだあ!!許してえええええ!!!」

233 :正規軍vs反乱軍 5:5:2007/09/30(日) 19:12:41
荒っぽく体を動かされ、既に石川のふとももに頭を挟まれ胴体をロックされている状態の菊池が覚醒すると、泣き喚きながらディフェンスを取り、パワーボムを拒む。
「あら…でもやらないと試合が決まりませんわ〜〜。もう少し我慢してくださいね〜。」「ぃやだあぁぁ!!たすけてぇ、だずげでぇ゛ゆ゛き゛こ゛ざ ぁ ん゛ッ!!!」
菊池が師匠の祐希子に助けを求めて暴れる。が・・・祐希子は入場の際、反乱軍の奇襲で龍子と石川の合体パワーボムを通路で食らって以降、気絶したまま。助けに応じられる状況ではない。
祐希子のベストパートナーである強力な一発を持つボンバー来島も、直後に
南 利美のサザンクロスアームロックと小川ひかるのアキレス腱固めの合体関節技で失神KOを喫している。助けに来てくれる仲間は誰も居ない。
石川は必死に抵抗する小さい上に軽い菊池の体を引っこ抜いて振り上げる。
「びぁあぁあぁあぁああああッ!!」
頂点まで達した所で菊池は暴れまくった。が、石川のパワーの前では全て無意味に終わった。
“ゴバンッ!!”「ぎゃひッ!!!」
見よう見真似、何の変哲も無いパワーボムも石川のパワーでやれば十分な決め技の威力となった。
頭と背面が青いマットに容赦なく叩きつけられ、潰されたような悲鳴を上げると菊池は首が座らない状態で白目を向いて涎を垂らしながら失神し、そのままエビ固めにホールドされる。
ようやく技を披露する事が出来た石川が、なにやら騒ぎ立てる審判にフォールのサインを送る。
「どうしましたの?フォールですわ〜〜。」「違う!今正規軍で試合の権利があるのは武藤めぐみだ!!」
菊池は千種を助けようとカットに入っただけで試合の権利は元々無かったのだ。言われた石川はしゅんとしてエビ固めを解き、呟く
「そうだったのですかぁ〜、うっかりしてましたわ……では、後でもう一度やらないといけないのですね…。」
「バカを言うな!!菊池がこれ以上試合続行できる状態か!レフェリーストップ、菊池 理宇は失格!」
レフェリーが白目を向いて痙攣し続ける菊池を見るに見かねて的確な判断をくだす。
「なんだかやる気が無くなってしまいましたわ〜。市ヶ谷さんお願いします。」
石川がしょんぼりしたまま自軍コーナーに帰っていき、市ヶ谷とタッチする。龍子は「何で私にタッチしないんだ」という感じでふてくされる。
出てきた市ヶ谷はリングの、小川ひかるが4の字でとらえられている武藤めぐみに歩み寄る。
「い゛ぃ゛ぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛!!!」「あら…まだやってましたの?」「ワン、ツー、スリー、フォー……」
今まで忙しかったレフェリーがようやく小川に警告の反則カウントをとり、4の字が開放される。
292 :名無しさん:2007/10/13(土) 06:11:43
4の字から開放された武藤めぐみが起き上がってくるのを市ヶ谷は仁王立ちで待っていた。
めぐみは市ヶ谷を睨み付けながら痛む足を引きずって必死に立ち上がろうとする。
「ぐ…う……ぐ……!」「………………」
が、何を思ったか市ヶ谷は武藤が立ち上がるとほぼ同時に踵を返して自軍コーナーに戻る。
そして今エプロンに戻ったばかりの小川ひかるにタッチを求めた。
「え……?」「貴方に差し上げますわ。さっきの技をもう一回やって決めなさい。ここでヘビーのトップクラスを倒せれば貴方の株が上がりましてよ?」
どういう気紛れか、市ヶ谷は小川ひかるに勝ち星をひとつ譲ろうと考えたのだ。
意外な展開に小川は驚き、躊躇する。ずっとジュニアヘビー級でやってきた彼女にはまだヘビー級に自分の技が通用するか確たる自信が生まれていない・・・それが迷いを生み出していた。
「ひかる、やるんだ。WARSのジュニアヘビー、小川ひかるの力を見せてやれ!」 「は…はい……」
サンダー龍子が激を飛ばす。ずっと自分の旗の下で戦ってきた小川・・・龍子としても弟子の小川に少しでも大きくなって欲しいという愛情から自然に出てきた言葉だったのだろう。
小川はその言葉に後押しされ、おずおずと市ヶ谷の手を叩き再びリングインする。
一方のめぐみにしてみては心外とも言える展開だった。一流レスラーのビューティー市ヶ谷が自分に背を向けて、
格下・・・しかもジュニアの小川ひかるにタッチを求めたのだから。
「馬鹿にして…!私なら、自分が相手をしなくてもジュニアクラスで十分だっていうの?」
怒り心頭のめぐみがエプロンサイドに戻ろうとする市ヶ谷に照準を定め、痛む足に鞭打ち一気に駆ける。
「はっ…!」 “…どっ!” 「ぐぅッ…!?」
だが、市ヶ谷に走り込むめぐみをタックル気味の体当たりで止め、さっきドラゴンスクリューで痛めつけていた足とは逆の足を取り、再度ドラゴンスクリューを仕掛ける。
「はっ!」 “ギュルッ” “ダンッ!” 「ぐあああああああああああああああぁっ!!」
三度、めぐみが長い足を抱くように押さえマットを転げまわる。
小川はのたうちまわるめぐみの後に回り、抱き起こしてバックドロップホールドの体勢に入った。
「フッ!!」 “ばぁんッ!!” 「ぐふっ!」
「 ワン! ツー!  」 「…ああぁーッ!!」
だが、めぐみはカウント3寸前でキックアウト。小川は間髪入れずスモールパッケージホールド。
「 ワン! ツー!    」 「くああッ!!」
絶好のタイミングの、切れ味鋭い丸め込みだったがめぐみは意地で跳ね返す。
299 :正規軍vs反乱軍 5:5:2007/10/14(日) 06:05:01
(……どうして?)
小川は驚きを隠せなかった。
小川も今日の対戦に備え、武藤めぐみの試合もTVやその他の映像で研究はしてきている。
その限りでは、武藤めぐみはここまで無茶をするような選手ではないという印象が強かったからだ。
めぐみは千種と違って、ビッグマッチ以外では過度な負荷がかかる試合や怪我の可能性がある時は比較的試合を諦める時が多い。
これは試合で手を抜く事とは違い、常に自身をベストコンディションに持っていく為の彼女のプロ根性がそうさせている。
ゴスロリを思わせるような赤いコスチュームも、会社と、会社側の考える自分というレスラーに対しての利益になるからと割り切って着用しているのだ。
千種との違いをひとつ挙げるとすれば、このプロ根性の質の違いだろう。
もうひとつ言うとするなら、受身の上手い千種はしつこいくらいに練習を繰り返し怪我の可能性を最小限に押さえる。めぐみは練習に加え常に自分の体に細心の注意を払い、怪我を未然に防ぐ。
だからこそ、めぐみが今この場でこんな無茶をするのは考えられないのだ。
既に新女正規軍のメンバーは3人が脱落、祐希子は通路で失神していていつ復帰できるか分からない、完全に孤立した状態だ。尚且つ、今のめぐみは飛び技が出来るかどうか怪しい程に足を痛めつけられている。
よほどの奇跡が起こらない限り勝機は皆無に等しい。リスクだけが残ったこの試合を続行するのは危険が大きすぎる。
「何をチンタラやっていますの!!」 「え…!?」
小川が持てる技の全てを持ってめぐみを仕留めようと奮闘していた所を、市ヶ谷が怒鳴り散らす。
「小手先の技なんかしなくても、もうさっきの技だけで十分ですわ!」 「…?」 「足を破壊してしまいなさい!!」 「 !! 」
突然の命令に小川が固まる。『足を壊せ』それは小川ひかるの今までの試合からもわかる通り無理な話だ。
冷酷に関節を攻めるスタイルとは裏腹に、ひかるは常に相手や興行の事に気を遣い、怪我をしないよういつもギリギリの範囲で関節技を使用してきていた。
逆に言うとそれは彼女の技術の高さを証明しているのだが・・・しかしその甲斐あってか、会社やレスラー仲間、後輩からの彼女の評価は意外に高い。
そしてそれはサンダー龍子の考える小川ひかるが一皮剥けられない理由に直結している部分でもあった。本当の意味での『気迫』が生み出せない、これはレスラーにとって良い事とは言えないからである。
彼女は良い意味でも悪い意味でも極端に優等生なのだ。
「ひかる、やれ!!……勝ちたくはないのかッ!!」 「龍子さん…!」
再び、龍子から激が飛ぶ。数瞬迷う小川・・・だが意を決したように、息を整えながら蹲っているめぐみを引き起こそうとする。
そして引き起こす体勢のまま小声でめぐみに話しかけた。
「武藤…、貴女達の勝ち目はもう無いです……ギブアップして」
「敵の言う言葉なんて聞くわけ無いじゃない。千種の腹を蹴りまくって虐めてくれたお返しもしなきゃいけないしね。…壊せるものなら、壊せばいいじゃない」
「そんな……!」
既にまともに立てるかどうかさえ怪しいように映る目の前のめぐみに、市ヶ谷達と同じ事を言われ再びひかるが躊躇する。その躊躇するひかるを睨め付けながらめぐみが続け様に言い放つ。
「千種もおっとりしてて優しい子だけどあんたのは最低ね。リングの上じゃ優しい子じゃダメ……そんな根性なら、プロレスラーなんて辞めちゃいなさいよ……!!」 「…っ!!」
小川がその言葉に激しい衝撃を受け、再び固まる。その時、何時の間に近寄っていたのか小川の横に立つ人影があった。
「貴女がやらないなら、私がやるわ」 「南さん…!」
女子プロレス界きっての関節技のエキスパート、『関節のヴィーナス』こと南 利美だった。
どうやら小川の態度に業を煮やして割って入ってきたようだ。今の状態で南が本気で関節技を仕掛けたら・・・と思うと小川は居ても立ってもいられなかった。自分がやらなければと。
「いいえ、私がやります。やらせてください」 「そう。」
その時、突如めぐみが立ち上がりソバットを放った。
「はぁッ!!」 “ドッ!!” 「はぐッ!」
小川の口から涎の飛沫が飛ぶ。

300 :正規軍vs反乱軍 5:5:2007/10/14(日) 06:10:06
足のダメージの為、いつもの打点の高い華麗なローリングソバットではなく飛ばずに放たれた後廻し蹴りは小川の腹に直撃・・・だが。
「うっ……ぐう!」 “がしっ”
「はぁッ!」“ギュルッ”“ダンッ!”「いッぎいぃ!!がああああぁいぎゃあぁああああ!!」
自分のお腹にめり込んだ足を取り、そのままドラゴンスクリューに持っていく。
本来なら今のソバットは小川からダウンを奪っていたかもしれないが、めぐみの足にダメージが蓄積されている為すぐに反撃に移れたようだ。
南はその間に自軍コーナーに戻る・・・と、エプロンサイドに戻る前に市ヶ谷と南が何やら耳打ちするように話をしていた。
(やらなければ…私は、レスラーなんだから)
小川が腹をさすりながら立ち上がり、めぐみに止めを刺す為にめぐみを起こそうとする。
「あ…ああぁ…っ」
だが気の強いめぐみもここまで痛めつけられ、さすがに足を抱えて弱々しく呻くのみで立ち上がれそうにない。
小川が一瞬動きを止めていると、つい先程エプロンサイドに戻ったとばかり思っていた南が再び小川の横に来て、倒れているめぐみの足を取る。
「な、何を…?」「武藤くらい関節が柔らかさと技術を持った人間ならそうそう簡単に壊せないわ。例えば、私が相手をしたとしてもね」
小川はここまで聞いても南の意図がわからなかった。
「二人でやるのよ貴女はそっちの足、私はこっち。同時に仕掛ける。逆回転で仕掛ければダブルドラゴンスクリューも可能でしょ?」
片足だけならまだ力の逃げ場を作れるが、仰向けになっている相手の両足を同時にドラゴンスクリュー。
関節技を知らない人間でもどれだけの効果が出るかわかるというものだ。
「や…やってみなさいよ……私はそんなに簡単に壊れないんだから。私は……必ず………」
めぐみは最後まで強気の姿勢を崩さなかった・・・そのめぐみの姿を見て小川はまた決心が揺らぎ始めていた。
しかしめぐみの言葉と小川の迷いを断ち切るかのように市ヶ谷が叫ぶ。
「終わりになさい!!」
その声に叩かれ、小川は意を決して逆回転のドラゴンスクリューを放つ。
“ギュルルッ”“ダダンッ!!” “『ボクンッ』”
南と同時に、仰向けに寝るめぐみの両足を外側に捻るように体重をかけて引いた。
関節の外れる音が鈍く響き、直後に武藤の高い絶叫が空気を引き裂く。
「ぎゃああああああああああああああああああああぁあぁああぁぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁ……!!!」
ビリビリと自分の体を揺さぶる悲鳴に小川はまるで目の前で大型の猛獣の咆哮を聴いたような感覚を覚え、座りながらめぐみの姿を凝視していた。
膝は壊れるに至らなかったものの、二人の体重を思い切り外側に掛けられ・・・めぐみの股関節は脱臼してしまった。
“ばしゃあぁっ…”
限界を大きく超えて開かれた股関節・・・激痛からか、はたまた過度の激痛がめぐみにもたらした別の刺激が
彼女の股の中心から体液を噴き出すように溢れさせ、惜し気もなくマットに滴り続ける。
小川の瞳には、異常な股の開きを見せつつ白目を向き、絶えずビクン!ビクン!と痙攣しているめぐみの姿が焼き付けられていた。
その時、会場の全員・・・通路でマイティ祐希子を開放しているセコンドやリングドクターまでもが振り向くような武藤めぐみの断末魔は、
かつての・・・いや、今なお別の意味で新女の象徴であるそのマイティ祐希子の覚醒をもたらした。

301 :正規軍vs反乱軍 5:5:2007/10/14(日) 06:11:45

「う……う、ぐ………っ」 「祐希子さん、祐希子さん!」「祐希子さん……起きられますか?」
セコンドの永原ちづる、富沢レイが祐希子の目覚めに気付き声をかける。
祐希子は頭を振るように、ゆっくりとしなやかな肢体を起こし始めた。
膝を立てる所までに至った時、彼女の横を担架が通った。担架の上には股から雫を垂れさせ失神している武藤めぐみの姿。
祐希子はそれを見た衝撃でようやく完全に意識を取り戻した。
ハッとして体と視線をリングに向ける。
リングへ続く通路の鉄柵が遠近法のように描く二つの青い斜線。
その先にある痛いくらいまばゆいスポットライトの光。そこにさらされている自分の敵である5人の女子レスラー。
セコンドとリングドクターの言葉を黙殺し、彼女はそこへ向かって歩を進めた。
この時の彼女の心中は誰も知らない。
唐突に会場に起こるマイティ祐希子へのコール。
元祖・美形実力派レスラー、パンサー理沙子。その後継者であるマイティ祐希子。
パンサー理沙子が国内のみならず世界に強く知らしめた日本女子プロレス。
その幅を更に広め、様々な宿敵、難敵を下し更に格上げさせ、第二次女子プロレスブームを引き起こしたマイティ祐希子。
タイトルマッチをはじめ対抗戦などのビッグマッチで彼女を後押ししてくれた彼女へのコール。
今も自分に向けられているコール。
彼女は知っていた。かつて自分に送られていたそれとは違うという事を。
相手にとってもファンにとっても今やマイティ祐希子は陵辱の対象でしかないのだという事を。
リングが近づく。
放送席の壊れた机。
リングのマットには千種が吐いた血まじりの涎ともらしたおしっこ。めぐみから絞り出たおしっこと愛液。
彼女はエプロンサイドまで登り、ロープに手をかける。
無二の相棒・ボンバー来島を関節地獄に陥れ、愛弟子・菊池 理宇が叩きつけられたリング。
マイティ祐希子は、そのスポットライトに照らされたキャンバスへとジャンプインする――――
397 :名無しさん:2007/11/12(月) 01:18:55


  ―――― 放送席サイド(タイムラグ:20秒) ――――



リング上、正規軍の4人が消え、自動的に場外にいる正規軍キャプテン・マイティ祐希子に試合の権利が移る。
その為、レフェリーがゆっくりと場外カウントを取り始める。
その状況下、花道からリングへと向かう祐希子を机が無くなった放送席で立って実況しながら見送る辻澤アナ。

「さあ、大変な事になってまいりました!!正規軍まさかの4タテであります!対して反乱軍側は無傷!
 こう言ってはなんですが、この発想は無かったぁッ!! 今、正規軍キャプテンのマイティ祐希子がゆっくりとリングに向かっていますが勝ち目はあるのか!?
 いつものように苛められるだけじゃないのか!?」
「……」

興奮でいっきにまくしたてる辻澤アナのその言葉に、ゲスト解説として放送席サイドに陣取っているパンサー理沙子が苛立ちを見せる。
確かに最近の祐希子の試合は嬲られている印象しか残らないほど痛めつけられているが、言い方という物がある。

「いやあ、大変な事になりましたねえ!理沙子さん!!」 「…辻澤さん、嬉しそうですね。」

さすがの理沙子も不機嫌を露にした態度で答える。辻澤アナがその理沙子を見て、しまったと言った感じでトーンを落とした口調に戻す。

「失礼しました…まさかの展開に私、思わず取り乱してしまいました。しかし本当にとんでもない事になりました!」
「そうですね…それでも退く事はできませんよ。アジアヘビーのベルトを失っても尚、キャプテンに選ばれたくらいなんですから。
 それに現状、WARS参戦や市ヶ谷選手たちの台頭も目立ちますしね…ここで爪痕くらい残せなければ、当分の間アジアの挑戦権さえ手に入れられないなんて事になり兼ねませんし。」

そう、現在のマイティ祐希子は新女の象徴・アジアヘビーのベルトを先ほど担架で運ばれていった武藤めぐみに奪われ、無冠なのだ。
武藤めぐみと接戦の後に敗れ王座転落…そして直後のビューティー市ヶ谷&ジェナ・メガライト戦で足を骨折、長期の欠場を余儀なくされた。
祐希子が負傷欠場している間、武藤めぐみは消息不明となっていた結城千種と合流しIWWFタッグのベルト奪取。結城千種がWWCAヘビー級チャンピオンのスーパーカオスを下し三冠王。
女子プロレス界でトップ3と言って差し支えない団体のベルトを総ナメにしたと言っていい。
今や「めぐちぐ」はただの人気コンビではなく若いながらもダブル二冠王という実績を残し、新時代の予感を感じさせる程の確かな実力も兼ね備えたコンビとなった。
しかしマイティ祐希子も堕ちていくには年齢的に若すぎる。身体的な所を見てもまだまだ向上の余地があるほどだ。
むざむざ新時代の幕開けを指をくわえて見ているのは、ファンにとっても不本意…本人としても口惜しいだろう。
ある種、低年齢化したと言っていいかもしれないこの世界だが…それは時代の流れという物、そしてこの世界の厳しさという物を表しているのかもしれない。

「下手をすれば……新女のエース交代さえ迫られるでしょうね……」
「なるほどぉ……現にマイティ祐希子のすぐ下の世代である"めぐちぐ"の勢いときたらそれはもう飛ぶ鳥を落とす勢いですからねえ。
 っと、マイティ祐希子、エプロンサイドに到達…『炎の女帝』、リングインです!!」

復帰前と同様、エプロンからリングにジャンプインするマイティ祐希子。
アジア絶対王者と呼ばれていた女がそれを険しい表情で見守る。

( ――― 祐希子…自分の時代を守るのなら、今が正念場よ ――― )

かつて祐希子に破れ、身を引いた理沙子が人知れずエールを送った。

398 :正規軍vs反乱軍 5:5:2007/11/12(月) 01:21:28
                          ※名前変え忘れた_| ̄|○|||

  ―――― 反乱軍サイド(タイムラグ:5秒) ――――



「ひかる、私に代われッ!!」

祐希子が完全にリングインする前に、龍子が突然叫んだ。

「あっ…はっ、はい!」

武藤めぐみを葬り、呆然としていた小川はその声で我に返り差し出された龍子の手を叩く。

「あっ!、ずる――」“パンッ!” 「オオォォ!!」

南の文句を振り切るように龍子はタッチとリングインを素早く行い、白いマットを力強く蹴りリング内をほぼ対角線に駆ける。
目指すは祐希子の着地地点と思われるエリアだ。

“たんっ”

マイティ祐希子がトップロープを華麗に飛び越え、白いマットに足を着く。
そして目の前を向いた瞬間だった。

「アアアアアアアアアアァァァァァッ!!」 “グバァッ!!” 「ぐぶッ!!」

祐希子がリングに舞い降り顔を上げた瞬間、既に視界に龍子の右腕があった。
着地の隙を見逃さなかった龍子のラリアートに祐希子はトップロープを越えて転がるように無様に落下し、再び場外に戻される。
龍子も場外に倒れ込む祐希子を追うようにエプロンサイドに出る。

  ―――――――――――――――

「龍子さん…」

小川が呟く。いつも龍子に付いていた小川、心情は察していた。
最初に新日に殴りこんだ際、一度はマイティ祐希子をKOしたもののその後に組まれた正式な試合…同じ技で祐希子にKO負けを喫したのだ。
ここで決着戦に持ち込みたいと逸る気持ちもわかると言うもの。
いや、ひょっとしたら龍子の中では祐希子にKO勝ちした試合は正式に組まれた試合ではないぶん、一度も勝っていないと思っているのかもしれない。
どちらにせよ、居ても立ってもいられない事には変わりないだろうが。

「ふんっ……」 「……市ヶ谷さん?」

タッチはしているが龍子がまた暴走気味になっているのでさぞかし不機嫌だろうと、小川はバツが悪そうに市ヶ谷の顔色を窺う。
しかしその目に映った市ヶ谷は不機嫌というよりも何か考えているように見えた。
小川は背筋に冷水を落とされたようにゾクッとした寒気を感じる。
ここ最近の市ヶ谷は、ファイトスタイル自体は変わっていないが明らかに以前と違っている。
ツメの甘さが消えたというか、抜け目が無くなった。いや、ファイトに関して言えば以前から切れた物を持っていたが油断という油断が消え死角が無いのだ。
殺気染みた容赦の無さを感じさせている。
思えばこの変化は祐希子が人が変わったように不調になるのとほぼ同時期に起きたように感じるが、その相互関係に関してはよくわからない。

「ふむ……いいですわね。では、そうしてみますわ。」 「……?」 “…とんっ”

市ヶ谷が誰に聞かせる訳でもなく独り言のように呟き、待機していたエプロンから場外マットへ降り立つ。

  ―――――――――――――――

「うう……くっ……」

場外に落ちた際頭を打ったのか、仰向けになり手で頭を押さえている。

“ ―タンッ― ” 

その祐希子に大きな影がかかった。

“ドムッ!!!” 「ぐぼあぁッ!!」

気が付いた時には祐希子の腹に揃えられた二つの踵が深く埋め込まれていた。
祐希子の口から胃液が勢い良く溢れる。エプロンに出た龍子が仰向けになった祐希子を見て、これ幸いとばかりにフットスタンプを放ったのだ。

「がはっ、がはぁッ…う、うぐっ……!」

祐希子がたまらないと言う感じで、嘔吐しながら両手で腹を押さえて体を折り、体を震わせる。
スレンダーな体系…その見た目からか、祐希子は腹を狙われる事も少なくない。
最近のパターンでは同系の技を皮切りにスリーパーや叩き付け技などで仕留められる展開も珍しくなくなった。
今日もそのパターンにはまりつつあるのかもしれない。
423 :正規軍vs反乱軍 5:5:2007/11/28(水) 02:54:07
倒れて苦しむ祐希子を龍子が髪を掴んで引き起こそうとする。
「まだ、この程度じゃないだろ…」 “わしぃっ…”
「………!」
引き起こし、両手で腹を押さえる祐希子の顔を見て龍子が絶句する。
「うっ………うっ、うっ……」
余りにも痛かったのか、あるいは何らかの感情がそうさせたのか。
“ ――ぽたっ――ぽたっ―― ”
場外マットに、ライトに照らされキラキラ光りながら落ちる雫…それは祐希子の口から垂れ落ちた嘔吐物でも肌から分泌された汗でもなかった。
「お前……っ」
あろう事か、マイティ祐希子は泣いていたのだ。
龍子が今こうして髪の毛を鷲掴みにしている間も、弱々しく瞳を閉じた祐希子の目の端から涙が頬を伝って雫を場外マットに落とし続けながら。
それが龍子の闘志の灯火に油を注ぐ事になった。
( ――これが…本当に今のマイティ祐希子はこんなものなのか?私を倒したマイティ祐希子の今がこれなのか?―― )
龍子は顔を紅潮させる程の怒りを露にし、それを祐希子にぶつけるように叫んだ。
「ふざけるなっ!!!!」
リングコスチュームの上着、襟部分を掴みながら怒鳴り散らす。
「わざわざ私が出向いてきたんだぞ、それなのに戦う気が無いというのか!?
 …いいだろう、なら嫌でも戦う気にさせてやる…!!」
再び祐希子と戦う為に市ヶ谷と組んでまで新女に乗り込んできた龍子としては心外という他無かった。
祐希子に完全雪辱を果たすには"あの時のマイティ祐希子"でなければ意味がない。それが龍子の本音なのだろう。
「龍子!!」
背後から突然呼ばれた龍子が襟元を掴んだまま声のした方向に振り向く。
そこには本部席を後に捉え、そこの机を親指で指しながら立っている市ヶ谷の姿があった。
「よしっ……!」
それを見た龍子が襟を掴んで祐希子を強引に引っ張りながら本部席の方へ移動を始める。

  ―――――――本部席――――――――

 「フッ………」
高そうなスーツに身を包んだ男性が椅子から立ち上がり、落ち着いた様子でやや後に下がる。
 「社長?」
そう、新女のトップ・・・社長だ。
 「君達も退いた方がいい。次はここを戦場にする…市ヶ谷はそう言ってるんだよ。」
 「えっ…」
そう言うと、本部席に座っていた人間が立ち上がる。
リングアナウンサーは凶器になりそうなゴング等も持って立ち上がっていた。

  ――――――――――――――――――

424 :正規軍vs反乱軍 5:5:2007/11/28(水) 02:55:17

 “ガヅンッ!” 「ぐああっ!」
本部席周辺に到達した龍子は、鉄柵ごしに祐希子の頭を本部席の机に叩き付ける。
祐希子は机にうな垂れたまま頭を両手で押さえ呻く。
龍子はその間に机の上にあがり、祐希子を強引に引き上げてパワーボムの体勢に持っていく。
 「これなら少しは思い出すだろう…!!」
そう呟くと龍子は祐希子の体を一気に引っこ抜き、思い切り振り上げた。
 「ィあああああああああアアアアアアァッ!!!」 「ぅああぁあぁあぁあぁあっ!!」
 “ヅガシャアッ!!!”
鋭角に、頭から叩きつけられたプラズマサンダーパワーボムに机が真っ二つに割れる。
龍子が新女に初めて現れた時と同じ、祐希子をKOした技だった。
真っ二つに割れた机の上で無様に横たわる祐希子・・・だが、龍子に休む暇など与えるつもりは無く、すぐに祐希子の髪を鷲掴みにして立ち上がらせようとする。
 「……世話を焼かす……!」 “ドグッ!!” 「がはっ!」 “びちゃっ”
中腰くらいになり中々動けない祐希子に対し、気付けをするように腹に膝蹴りを入れる。
祐希子は胃液の塊を床に吐き付けながらもいくぶんか意識を取り戻し、よろよろと鉄柵を越えようとしていたが
頭に血が昇っている龍子はその動きの鈍さに苛立ち後から背中を蹴って無理矢理鉄柵を越えさせる。
 「うぐっ……」 “ ―…ザッ…― ”
本部席から場外マットに倒れ込んで戻ってきた所で祐希子に歩み寄る者がいた。
 「さすがに菊池とは違ってまだまだいけそうですわね。」 「ぅ……」
上から声を掛けられた祐希子は声の主を見上げる。市ヶ谷だった。
まだまだいけそう、とは言ってもKOクラスの技を食らったのだ。大丈夫というには程遠い。
祐希子は間近に迫っていた敵に対しなんとか臨戦態勢を取ろうと立ち上がる姿勢を見せるが当然動きにキレはない。
立ち上がる途中でパワーボムの体勢に捕らえられてしまう。
 「……教えて差し上げますわ……」 “グっ” 「く、あ、ううあっ!!」
このうえ必殺クラスの大技を食らう訳にはいかないと祐希子は必死で防御体勢を取る。
 「力強さも切れもプレッシャーも感じませんわ。……本当に堕ちたものですわね……祐希子!!」 “ブンッ” 「く、あああああああああああ!!」
罵りを挟み、高々とビューティーボムを放つ。
 「やあああッ!!」
だが祐希子と市ヶ谷の体が縦一直線になった瞬間、叩き付ける動作より先に祐希子は身を翻し、
市ヶ谷の股をすり抜ける軌道で自ら体を下降させた。ウラカン・ラナ・インペルティダの切り返し。
だが――

425 :正規軍vs反乱軍 5:5:2007/11/28(水) 02:56:40
 「…そう来る事はわかっていましたわ!!」 “ガチィッ” 「うあっ!?」
祐希子の頭が市ヶ谷の足の間に来たあたりで、市ヶ谷のパワーに下降は止められた。
 「切れがないと言ったでしょう!」 “ブンッ”
止めた所から仕切り直すように。
 「嫌あああぁ!!」 「はあああぁぁッ!!!」
市ヶ谷が再び祐希子の上半身を高々と振り上げ、自らの膝を地面に落としながら落差をつけて場外マットに叩き付ける。
 “ばあぁんッ!!” 「げぶっ……!!」
裏の裏をかかれ切り返しの切り返しを食らった祐希子は受身の取れない状態になり、
頭と背中をしたたかに打ちつけられ今度は白目を向き泡を吹きながら完全に失神してしまう。
 「ふんっ……小細工なんてするからですわ。」
ビクビクと痙攣する祐希子に罵倒を吐き捨てる市ヶ谷。
だがいくら市ヶ谷と言えど読んでいなければ、勢いをつけて落ちる人間の体を途中で止め、更にそこから振り上げるなどという芸当は出来ない。
読み合いが出来るあたり市ヶ谷も小細工もこなせる一流のパワーファイターと言えるのだが
その才能に恵まれすぎている市ヶ谷は無意識下でそれが実行できている為、小細工とは思っていないのかもしれない。
それが今の言葉を出させたのだろう。
 「おい、市ヶ谷…お前……!!」
祐希子とのやりとりに横槍を刺された感のある龍子が憤怒を露にし、市ヶ谷にクレームをつけようとする。
だが、市ヶ谷は冷静にそれをいなす。
 「まだ試合は終わりませんわ。貴方がフィニッシュを決めるかどうかも考えておきますから今は黙っていなさい。」 「そういう問題じゃ…!」
市ヶ谷は話を続けようとする龍子を無視して祐希子の体を軽々と持ち上げ、エプロンとサードロープの間からリングに入れ、叫んだ。
 「涼美!!」 「……市ヶ谷さんの意図もなんとなくわかりましたわ〜。」
呼ばれた石川 涼美はタッチの無いままリングインし、倒れて痙攣している祐希子に歩を進める。
 「今日は私の名前に白星がつきそうにありませんわね〜。……祐希子さん、起きてください。」 “ぱんっ、ぱんっ” 「う…あ……ぁ…」
的確な状況判断の出来るパワーファイターの石川は今日もサポートが主だった為、そんな愚痴をこぼしながら祐希子の体を起こそうとする。
そして祐希子が僅かに目を開け、軽く呻いたのを見ると即座に自分のふとももの間に祐希子の頭を入れ両手で胴体をロックする。
 「えぇいッ!」 「ぅっ……ああああああぁあぁあぁあ!?」
この試合、通算7度目のパワーボムは投げ捨て式だった。
 “ドゴンッ!” 「ぶぐぇ……っ!!」
パワーボムの最中に完全に覚醒した祐希子だが、石川のパワーで投げ捨てられ再び意識と闇の境界線に戻されてしまう。
ここまでの大技連発はもはや致命的と言わざるを得ない。まして、今の祐希子は原因不明のバッドコンディションなのだ。
もはや試合は決まってしまったと言っていい。

426 :正規軍vs反乱軍 5:5:2007/11/28(水) 02:57:48
だが、反乱軍側・・・キャプテン・市ヶ谷の意向としてはまだ終わらせるつもりがなく、
その意を汲んだ石川は大の字になりぐったりしている祐希子の体をうつ伏せに転がし、次の展開に移る為、その背中にまたがる。
 「次はこうですわね〜?」 “ぐぐぐぐっ……” 「ぐ……あぁあああぁあっ!!」
石川が両手を祐希子の整った顎を掴み、胸元に引き寄せるように強引に引っ張る。
キャメルクラッチの背筋を伸ばされる痛みと気管が狭まる苦しみに、不運にもまた祐希子の意識は覚醒した。
 「上出来ですわ。これでスムーズに事が進められますわね。」
いつの間にか祐希子の前に移動していた市ヶ谷は、そう石川に返答してから祐希子に語りかけた。
 「ずっと眠っていたからわかりませんわよね、試合の流れが。これではフェアでなくてよ。でも安心してよろしいですわよ。
  順序はバラバラになってしまいますが、今から一番分かりやすい形で貴方に説明して差し上げますわ。
  わたくしは正々堂々勝負したいと思っていますの。」
 「…ぃ……ち…ヵ゛…ゃ……!」
  “ ドッ!! ”
 「がはぁっ!!」
理屈の合わない主張を聞いた祐希子が市ヶ谷の名前を呟き終わるとほぼ同時に、祐希子の反った腹に市ヶ谷のつまさきが食い込む。
そして市ヶ谷のトーキックは一発だけにとどまらず、祐希子の腹を襲うべく立て続けに何度も繰り出され始めた。
 「さっきの!パワーボムで!菊池が!退場!しましたわ!そして!これで!結城千種が!お寝んね!しましたのよ!!」
 “ ドムッ! ドボッ! ドグッ! ドスッ! ドッ! ドッ! バクッ! ドフッ! ズムッ! ドボォッ! ”
 「うぐっ!げっ!うぅッ!ぐっ!うっ!うっ!ぐはっ!がはっ!うッ!ごはっ!」
つまり・・・祐希子以外の正規軍4人がどういう目に遭って退場したのか、同じ技を祐希子自身の体に叩き込む事で教えようというのだ。
矢継ぎ早にめり込むつまさきに祐希子の体がビクビクと痙攣し、またもや口から胃液が垂れ始める。
市ヶ谷はそんな祐希子を見て例の如く、市ヶ谷独特の罵りを折り混ぜながら祐希子の腹を蹴り続けた。
 「情けない!ですわね!そんな事だから!千種の腹も!あんなに!…弱いのですわ!!」
 “ドボッ!バムッ!ドフッ!ドッ!” “―ブンッ―” “どずんっ!!”
 「げぶうぅっ!!!」
千種の時と同じようにモーションの大きいトーキックで終わりを告げる。
と、祐希子の口から嘔吐物が溢れ、祐希子の喉、胸、腋・・・しなやかな肢体を伝って白いマットに雫を落とし始めた。
467 :正規軍vs反乱軍 5:5:2007/12/14(金) 01:28:42
 “ごどっ……”
石川がキャメルクラッチを解くと祐希子は頭からマットに出来上がった水溜りに倒れこむ。
 「…うっ……うっ、ぐっ………」
立ち上がろうとしているのか…祐希子は仰向けで痙攣しながらも、何かを探すような手つきで僅かに両手を動かす。
そんな祐希子を市ヶ谷が前髪を鷲掴みにして引き上げ、状態を引き起こそうとする。
 “ぐいぃっ…” 「うぎぃっ…!」 「あら、やはりおちびの千種よりは持ちますわね。気絶しないなんて偉いですわ。」
とはいうもののパワーボム連発と立て続けの腹へのトーキック連打に、祐希子の意識はいつ闇に沈んでもおかしくないくらい朦朧としていた。
更に気絶できなかったぶん、菊池や千種よりも苦痛を味わっている事に他ならない状態であると言っていいだろう。
ちなみに、千種のウィークポイント克服に関してはもはや祐希子の責任ではない。
結城 千種・武藤 めぐみ 両名はとっくに祐希子の下から離れて独立した、トップレスラーなのだから。
そのへんを分かってか分からずか、祐希子にあてつけるあたり市ヶ谷らしいとも言えるが・・・市ヶ谷の行動はもはや常軌を逸している。

このまま続けばどんな事態になるのか―――


  ――――――― 放送席 ――――――――

(このまま続行すれば……)
 「……本部席に行って試合を止めさせて。レフェリーストップの指示を出させて。」 「えっ、あっ、はいっ。」
事態を重く見た理沙子が、すぐ傍に居た榎本 綾にそう言う。
榎本は一瞬戸惑ったがすぐにその場から移動して逆側に位置する本部席に向かった。
(………何故この状態で止めないの? 祐希子はこれ以上戦えないわ。これ以上続けば危険な状態に―――)
 「どうかしましたか?理沙子さん。」 「あ…いえ、すみません。何でもありません。」
実況の辻澤アナに話しかけられ、僅かに生まれた疑念を隠しながら理沙子は解説に戻った。

  ―――――――――――――――――――


 「たくっ……市ヶ谷の遊びに付き合っていられるか…!」
市ヶ谷に水を注された龍子がぼやきながらセカンドロープとトップロープの間をくぐりリングに戻る・・・が、
 “パンッ” 「なッ!? 南!!」 「出っ放しで疲れたでしょう?ちょっと休んでると良いわ。」
ロープの間をくぐった直後、南 利美に肩を叩かれ強制的にタッチを成立させられてしまう。
当然、そんな南に対して龍子がクレームをつける。

468 :正規軍vs反乱軍 5:5:2007/12/14(金) 01:30:01
 「お前まで私の邪魔をするのか!?こんな中途半端な…」 「…祐希子とやるのを待っていたのは貴女だけじゃないわ!」
リング上の反乱軍、市ヶ谷も含め、マイティ祐希子の欠場や新たな強豪外人の参戦、武藤・結城などの次世代台頭により
日本人トップレスラーはここ最近、祐希子との直接対決がなかった。
そこへ来て今まで倒すべき強敵だと思っていた祐希子が、かつてない不調により醜態を晒しているのだ。
その首を狙っている者にしてみても、気に留めるのは当然の話である。
マイティ祐希子は同世代のレスラーにとって色々な意味で求心力なのだ。
 「あら、そろそろ利美の番ですわね?」 “ぐんんッ” 「ひぎっ!!」 “びだんっ!”
市ヶ谷が笑みを浮かべながらそう言うと、祐希子の髪を乱暴に引っ張って叩き付けるようにマットに仰向けに寝かせる。
南は仰向けになった祐希子を見ると飛びつくように関節技を仕掛けにいく。
チキンウイングアームロック・・・ではなく、
両足で祐希子の右手を逆手状態になるように極め、両手で左手をチキンウイングアームロック。
南のオリジナルホールドであるこの技は、仕掛ける側の体と受ける側の体が十字の形に重なる事から『サザンクロス・アームロック』と呼ばれている。
 「うあっ…!!!! い゛っ! い゛ぃ゛ッ!! 痛いっ、いだいッ、い゛ぎ゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
南の強烈な関節技に祐希子の両肩と両肘、そして艶やかな口から激しい悲鳴が上がる。
そんな祐希子を、締め上げる手を休めず南が語りかける。
 「祐希子………貴方が許せない。本当にこれが今の貴方の力なの?
  あれだけの戦いをしてきた貴方は何だったの?私達との、私との戦いは何だったの…?」
 「いぃ゛、う゛、うぎ゛ひ い゛ぃ゛ぃ゛……!!」
南は締め上げながら祐希子に語りかける。
だが祐希子はミシミシと悲鳴を上げる関節と共に口から悲鳴をあげるながら、足を使って少しずつロープに近づいていくだけだった。
だがその時。
 「小川ッ!」 「………」
市ヶ谷が叫ぶ。重なる南と祐希子を親指で差しながら。呼ばれた小川ももはや理解したのか、少し眉をしかめた顔をしながらも二人に近づく。
 “くいっ、…クルッ………ダンッ!”「う………ぐああああああああああぁぁぁぁ!!」
逃げる為に必死で動かしていた両足が小川の4の字固めに絡め取られる。
四肢とエスケープの手段を奪われた祐希子から、喉を激しく震わせた、いっそう高く激しい悲鳴があがった。
 「おっほほほほ……どうかしら?相棒を葬ったのと同じ技を味わう気分は。」
市ヶ谷が来島を失神させた合体関節技を食らう祐希子に、上から嘲笑を湛えながら語りかける。
だが、南一人だけでも持て余し兼ねない所を足まで封じる為の関節技をかけられているのだ。
当然ながら祐希子は悲鳴を上げ続けるだけだった。
南はそんな状況などよそに、祐希子に語りかけた。
 「本当に貴方がこの程度なら、もう用は無い………………このまま折るわ………!!」
 “ギリギリ、ギチギチギチ…!”
 「あ゛あ゛ぎ゛ゃ゛あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛ッ!!」
やらないなら壊す。それは、まんざら脅しという訳ではなかった。

 “ボクンッ!!!”

関節がすり合って外れる音が鈍く響く。

 「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!!!」

祐希子の左肩が南のサザンクロス・アームロックによって脱臼したのだ。
それに驚き、小川が4の字から祐希子を開放する。
南も技を解き、仁王立ちになり祐希子を見下ろす。 
 「あ゛が゛あぁぁっ!!いぎゃい゛っ、 い゛ぎ゛ゃ゛い゛い゛ぃ゛っ!!!」
まるで赤ん坊のような悲鳴を上げ、左肩を押さえながら跳ねるような小走りで敵に背を向け、自軍・・・タッチする者など居ない赤コーナーに逃げる。
667 :正規軍vs反乱軍 5:5:2008/03/03(月) 03:57:21
  ――――――― 放送席 ――――――――

辻澤アナの慌てふためいた声が飛ぶ。
 「鈍い音がしました!!これはひょっとして………?」 「脱臼…したかもしれませんね、そろそろ本当に止めないと選手生命に関わりますよ。」
理沙子もさすがに落ち着かない様子で、それでも解説役に徹しようとする。
 (遅い………まだ試合は止まらないの?)
理沙子が逸る気持ちを抑えきれなくなったその時、リングサイドを走って放送席に戻ってくる榎本 綾の姿が見えた。
 「どうしたの?どうしてストップがかからないの?」 「……却下されました……」 「何ですって?」
申し訳なさそうに伝える榎本に理沙子が問い詰める。
 「………副社長の命令よ?」 「それが…社長の判断なんです…。」 「そんな…!」
俯いてそう言う榎本から、リングの反対側・・・本部席に見えるブラウンのスーツの男性に目を移した。
 (……一体、何を考えてるの?…あなたは…)

  ―――――――――――――――――――

敵に背を向けて赤コーナーサイドまで逃げた祐希子はしゃがみ込み、コーナーマットの二段目に額をつけて押し殺すように泣く。
 「うぅ…うあうっ、あああ………」
涙をぽろぽろ流しながら痛みに打ち震える。その姿を眺めていた南が呟く。
 「バカバカしい……もう終わりにしていいわよね?市ヶ谷。」
南が市ヶ谷にそう尋ねた時、祐希子はコーナーマットの最上段を見つめながらゆっくりと立ち上がり、左肩を大きく引いた。
 「う………ああああああっ………!」
引いた反動を利用し、左肩を最上段のコーナーマットに自ら叩きつけた。
 “ガシィッ!!!” 「あがあああぁあぁあぁあぁあぁっ!!!………う……あぁ……」
左肩がコーナーマットに叩きつけられる音と幾度となくあげられた高い絶叫・・・そしてまた力が抜けたようにしゃがみ込んで悲痛な呻きをもらす。
どうやら外れてしまった肩を元に戻す為にやったらしい。・・・が、この試合ではどのみち死に腕になってしまった事は変わりなく、状況が好転した訳ではない。
 「ふん……やる気があるんだか無いんだか」
その様子を見ていた南は既に戦意を削がれたのか小さな罵倒を零した。
 「…まあ、いいですわ。ちょっと待っていなさいな」
この試合、キーポイントというキーポイントで動きを見せていた市ヶ谷がまたもここで動きを見せる。
祐希子にゆっくりと歩を進め、祐希子の背後まで到達するや否や背を向けてしゃがみ込む祐希子の後頭部を力強く踏みつけた。
 “ガンッ!!” 「あぐうっ!!」 “ガシャンッ!”
二段目のコーナーマットに祐希子の顔が頬から叩きつけられる。
市ヶ谷はそのままコーナマットに押し付けるに祐希子の頭を踏み躙り、そして語りかけた。
 「これで終わりですの?まさか『炎の女帝』ともあろう貴女がこれで終わりなんて事はないですわよね?
  ……さあ、この足を払いのけて反撃してみなさいな。」
 「うぐあぁぁがぁあぁぁぁ!!」
市ヶ谷がグリグリと躙る力を強めると、祐希子のぎゅっと閉じた瞳の端から量を増した涙が溢れ出た。

668 :正規軍vs反乱軍 5:5:2008/03/03(月) 03:58:51
と、その時・・・祐希子が小さく呟いたのを市ヶ谷は聞き逃さなかった。
 「………て………」
その呟きを聞いた市ヶ谷の眉の端がぴくりと動く。市ヶ谷はゆっくりと祐希子に尋ね返した。
 「………何ですって?もう一度言ってみるとよろしいですわ。」
足を頭から離すと、ぐったりとした祐希子はコーナーマットに顔をつけたまま消え入りそうな小声で繰り返した。
 「許して。もう、許して……お願い…ひっ、ひっ、……もうやめて………」
その姿は小刻みに体を震わせ、闘志を失い弱気になった瞳から涙を溢れさせて許しを請うものだった。
それを見た市ヶ谷の表情は一瞬、険しさを見せていた。
だが、すぐ余裕の笑みを取り戻すと祐希子に対し嘲笑気味に言い放つ。
 「おーっほっほっほっほ………でしたら、こうすると良いですわ。
  『私の負けです。もう貴女には逆らいません、卑しい私を許してください市ヶ谷様』と土下座すれば止めてあげますわよ。」
過剰なまでの屈辱的な条件。一般人でさえ断固として拒みそうなものを、厳しい世界で育ったプロレスラーの祐希子に叩き付ける。
だが、その言葉を聞いた瞬間・・・
 「ひっ、ひっ……わたし、の、負けです……ひっく……もう、逆らいません、いやしいわたし……市ヶ谷様、ゆるして、くださ……」
痛む左肩に構いもせず、急ぐように両手をマットにつき、頭を下げてそう言った。
その姿を見た瞬間、市ヶ谷は激昂し祐希子の髪を鷲掴みにして思い切り引っ張りあげて無理矢理立たせ、
立たせるとすぐさま祐希子を激しく攻めたてた。
 “パァンッ!!” 「あぶっ!!」
平手打ちで祐希子の綺麗な頬を思い切り張る。その衝撃で祐希子の口から唾が飛ぶ。
 “ガヅンッ!!” 「ぶぎゅッ!!」 “たたたっ”
直後に鼻に頭突き。鼻血が勢い良く吹き出て、マットを打つように飛沫が落ちる。
 “ドブゥゥッ!!” 「ぶぐぇええぇぇっ!!」 “びちゃちゃあッ”
幾度と無く攻めたてた腹を膝蹴りで襲う。滝のように胃液が滴り落ちる。
まくしたてるような三連打を叩き込むと市ヶ谷がコスチュームの襟を掴んで思い切り怒鳴った。
 「何なんですの、貴女はッ!!!」
襟を掴まれたままぐったりとして見つめ返すだけの祐希子から返事はない。だが、それでも市ヶ谷は続けた。
 「貴女は新女の顔じゃなかったですの!?パンサー理沙子の意思を継いだアジアヘビーのチャンピオンじゃなかったんですの!?
  今のような情け無い戦い方をしていて良いと思ってますの!!」
 「あ…っ!う……ぐ………」
それでも市ヶ谷の怒声を受け止める祐希子は弱々しく開いた瞳を向けて呻くだけ・・・
そしてそれが市ヶ谷の怒りを更に煽った。
 「ぐぬ……っ。………こんな貴女なら………………!!」 「いぎっ」
市ヶ谷は力任せに荒っぽく祐希子の髪を鷲掴みにするとリング中央辺りを睨み付けるように振り向く。
 「………………本当にッ、もう用はありませんわッッ!!!」 “ぶんっ” 「ひぎいぃっ!!」
そのまま大きく振り回すように、ヘアーホイップでリング中央へ向けて祐希子を投げ捨てた。
 “ばぁんっ!!” 「ぎゃふっ!!」
無造作にリング中央へ打ち捨てられる祐希子。そして市ヶ谷が最後の指示を下す。
 「利美!!小川!!遊ぶのももう終わりですわ!……破壊して差し上げなさい!!」
その言葉を聞き、仰向けの祐希子に南が詰め寄る。

669 :正規軍vs反乱軍 5:5:2008/03/03(月) 04:00:28
 「祐希子、私達が勘違いしてたみたいね。最近の貴女が本当の貴女で……『炎の女帝』のマイティ祐希子が偽りだった。
  これで本当に終わりね。………まさかこんな最後になるなんて。」
そう言って南が祐希子の右足を取る。恐らく合体関節技で無理矢理潰してしまうのだろう。だが……
 「小川?」 「………。」
南が呼び掛けても小川ひかるは一歩も動こうとしなかった。
 「……ひかるッ!! お前……!」 「………。」
思わず後から龍子も怒声を飛ばし、怒鳴るだけでは飽き足らずロープの間を潜ってリングに入り小川の前に立つ。
そして自軍コーナー、青コーナー方向に追い詰めるように肩を突き飛ばし再び怒鳴った。
 「っ……。」 「お前………いい加減にしろッ!!」
突然の内輪揉めに石川もリングの中に入り、南と市ヶ谷も小川を囲むように歩み寄ってきていた。
南が冷ややかに話しかける。
 「…これ以上、イライラさせないで欲しいわ。どういうつもり?」
 「………できません。」
 「何?」
南の問いに反抗の意を示す言葉で返した小川に対し、龍子が睨み付けて聞き返す。
 「これはもうプロレスじゃないです。……私には、できません。」
目の前の四人から目を反らすように俯き、自分の意思を伝えた。
 「お前ぇッ!!」 “ぱぁんッ!!” 「うぐっ!」
龍子の掌がフルスイングで小川の頬を襲う。と、吹っ飛ぶ小川は青コーナーに思い切り叩きつけられた。
その小川に龍子は鬼の形相を向け、片手だけで首を締め付けながら尚も叱咤を飛ばす。
 「お前はまだそんな事を言ってるのかッ! レスラーとしてそれで恥ずかしくないのか!? やるんだ!!」
 「うぐ……っ、で…できません……」
だが、端から血が流れる小川の口から出た意見はやはり変わらないものだった。
 「ひかるウゥッ!!」 “バスっ!!” 「げぶううぅ!!」
変わらない小川の態度に、愛弟子の腹を全力で殴りつける。と、そのまま怒りに任せて青コーナーで小川に猛連打を叩き込み続けた。
 「うぅっ!!げふっ!あうっ!がはっ!!」 「龍子、ちょっと、やめなさいよ!!」 「け、喧嘩はよくないですわ〜〜」
 「身内のいざこざは終わってからやりなさい!…ちょっと、わたくしの言葉が聞けませんの!!?」 「邪魔するなッ!命令するなと言っただろう!!」
青コーナーでぼろ雑巾のようになる小川。静止に入る南、市ヶ谷。それに構わず暴行を加え続ける龍子。
龍子の正パートナーである石川は、こうなった時の龍子が勢い付いてしまって止まらない事を知っているのか・・・巻き添えをくわないよう後ずさりしつつ声をかけるだけだった。
反乱軍全員がこの騒動に釘付けになったこの時だった。
 「どうしましょう…」
オロオロする石川 涼美を背後から襲う影があった。
 “ガヅンッ”「あぐっ!!」
フライングニールキックが延髄にクリーンヒット・・・石川の体勢が斜めに傾いた。
 「はあ、はあ……」
マイティ祐希子だった。

670 :正規軍vs反乱軍 5:5:2008/03/03(月) 04:03:19
 「ふっ………!」
祐希子は意を決したように、傾き倒れ掛かる石川の体を痛めた左肩に鞭打ち抱え上げると
リング中央でそのままシュミットバックブリーカーに捉える。
 “ドッ!!” 「げふっ………!!」
スタイルの良い石川の体が祐希子の膝の上でしなやかに折れ曲がる。
延髄に大技を打ち込まれた上に背中を思い切り膝に打ち付けられ・・・さしもの石川も体の力を奪われたようで、リング中央でぐったりと大の字になった。
祐希子は先程までとはまるで別人のように鋭い動きで自軍コーナーにいっきに駆け上がると素早く身を翻した。
 「ィヤアァッ!!」
凛とした力強くも美しい掛け声と共に放たれるムーンサルトプレス。
 「なっ……?」
その声に青コーナーの市ヶ谷、龍子、南が同時に後を振り向く。
 “ばあぁんッッ!!!” 「ぎゃぶッッ!!!」
三人が視線が祐希子に集中するとほぼ同時に、ムーンサルトプレスは石川に着弾した。
 「まだ動く力が……!?」
南が声をあげるのも無理もない事だった。
体もボロボロにされ、心が折れても仕方の無いような攻めを祐希子は受けていた。
だが、その祐希子が放ったムーンサルトプレスは以前と変わらない美しさと破壊力を兼ね備えた・・・『炎の女帝』マイティ祐希子の技だったからだ。
 “カァンッ!”
ゴングの音がひとつだけ鳴り響く。どうやらレフェリーは意識を絶たれた石川を見て即KOの判断を下したようだ。
もはや絶望と思えた展開に、今までと違った期待を祐希子に向け始めたのか・・・会場が一気にヒートアップする。
 「………だめっ……祐希子さん、ダメぇ!!!」
完全に失神した石川から離れ、立ち上がろうとする祐希子の前に真っ先に向かった小川は、
反乱軍と祐希子を隔てるように両手を広げて立ち、そう叫んだ。
 「ひかる!」
龍子の呼ぶ声も無視し小川は続ける。
 「これ以上やったら殺されちゃいます…! 逃げてください!! 」
ボロボロの小川は祐希子の身を案じ叫ぶ。
動けたとはいえ、祐希子の受けた攻めは死んでもおかしくないような攻めだったのだ。本当にこれ以上やられたら生死に関わる。
小川の判断は間違いではなかったかもしれない。
だが・・・
 「……イァッ!!」 “タンッ” 「はっ…!?」
再び祐希子が疾い動きで小川の両肩に足で飛び乗る。そして両の膝で小川の頭部をしっかりとロックするとしなやかに反り返る。
 “ブゥンッ” “ズダァンッ!!” 「がはっ………!!!」
身を翻し小川の股を頭から抜けた祐希子は、両足を使って小川の頭を若干投げ捨てるようにマットに叩き付けた。
 「…う……ぅ、うぅん………」
強力なフランケンシュタイナーに小川も意識を絶たれ、反乱軍には二人目の失格を知らせるゴングが鳴り響く。
祐希子が立て続けに奪った白星に会場は更にヒートアップ・・・それは今より少し前のように、奇跡を起こしてきた祐希子を見ている時の盛り上がりを思わせた。

671 :正規軍vs反乱軍 5:5:2008/03/03(月) 04:04:24
 「ほ………おーっほっほっほ、良いですわ、良いですわよ!!やはりマイティ祐希子はそうでなくてはいけませんわよね!!
  それでこそわたくしの生涯最大のライバルですわッ!!」
市ヶ谷は歓喜のような声をあげると、フランケンシュタイナーを放って倒れた祐希子に歩み寄る。
しかし、祐希子はうつ伏せのまま起き上がる気配はなかった。
 「祐希子……?」
市ヶ谷は倒れている祐希子に声を掛けた。それでも祐希子は弱々しく肩で息をするのみで倒れているだけ・・・
 「貴女があれくらいで終わるはずがありませんわ………弱い者虐めだけで終わるのは良くありませんわ………」
祐希子の復活を期待していた市ヶ谷は、小川と石川を斬って落とした祐希子に皮肉をぶつけつつ
つまさきで祐希子の右肩を持ち上げ、仰向けに返した。
祐希子は口の端から涎を垂れ流し、気を失っていた。もうとっくに限界を迎えていたのだ。
 「ふっ………他の人とは戦っても、わたくしとは戦いたくないと言いたいですの?」
閉じられた瞳に少しだけ開いた口。脱力したしなやかな肢体は市ヶ谷の言葉を受け止めるだけ。
 「今のままをこれからも続けていくつもりですの……?」
返事は無かった。
 「……そんな貴女なら……」
市ヶ谷は微笑を湛えつつ祐希子の頭側からしゃがみ込む。
 「………もう見たくありませんわっ……!!!」
言うと同時に目を見開き、長く綺麗な足を祐希子の首を四の字の形で素早く絡め取る。
パワーファイターの市ヶ谷の足の力・・・当然腕の力よりも更に強く、絞め技を得意としない市ヶ谷でも強力な首四の字となった。
更に、祐希子と言えばスリーパーに弱い・・・というレスラー仲間の口癖のような物があるくらいだ。
この首四の字がどれだけ危険かは押して知る所である。
 「わたくしが楽にして差し上げますわ……!!」
万力のように締め上げ続ける。
 「祐希子…もうお前に用はないよ。」
龍子がそこに割って入り、右腕を腕ひしぎ逆十字固めに取る。
 「本当にもう終わりね。……さようなら。」
南が左足を取り、膝十字固めを仕掛ける。
 “ギリギリ…ッ”“ミシッ……”“ギチギチギチィ…”
 「う……ぎッ……ぶあがあぁぁあぶぎぃあぁぁあぁあぁやあぁぁぶぐぅえっ!!!!」
手足の激痛と首を締め付けられる苦痛に祐希子の意識がむりやり覚醒させられる。
衰弱しきった祐希子の何処からそんな力が、と思える程の悲鳴が絞められる喉を強引に抜けて絞り出される。
三人による祐希子の処刑が始まった。

672 :正規軍vs反乱軍 5:5:2008/03/03(月) 04:06:00

  ――――――― 青コーナーサイド花道の奥 ――――――――

リングに向きながら密談のように話す三人の人影があった。
一人はボンテージを連想させるような、所々に白い羽毛をあしらえた黒と茶色のコスチューム。
長身でスーパーモデルと言って差し支えないスタイル、紫の口紅、太腿まで届くような長い銀髪、赤い瞳。
広げた掌で人差し指の先を舌で軽く舐めてから語りだした。
 「……締めには丁度いいかもしれないですわね」
色違いだが、鏡に映したかのような二人。
セミロングの髪、
タートルネックのスポーツブラとスカーフ。
エルボーサポーターと一体になったような腕カバー。
腰の大きな皮のベルトとニーサポーターの両方と一体になったような、太腿の外側だけを覆うズボン。
二人ともオッドアイで顔に赤いペイントを施し、
薄紫の髪の方は、左側の横髪の先端に勾玉を思わせる髪飾り、顔の右側に赤いペイント。
薄緑の髪の方は、それを左右逆にそれぞれあしらっている。
 「間に合ってよかったよ。」
 「あんたとも何処と無くうまくやってけそうだね。…二人減ってくれて良い感じだよ、行こうか姉さん」
話し終えると三人はリングに向かい花道に出た。

  ――――――――――――――――――――――――――――

突然、青コーナーサイド花道の辺りが騒がしくなる。
 「何だ?」
龍子が腕十字で締め上げながら目だけを花道に向けると三人の人影が瞳に映し出された。
それは既に試合を終えたフレイヤ鏡と村上姉妹だった。
 「何のつもりだあいつら……!」
三人はリングに上がるとニュートラルコーナー近くで行われている処刑に混ざろうとしているようだった。
 「下がりなさい、三流。貴女達が入ってきて良いリングじゃないわ!!」
南が水を注すように入ってきた三人に制止をかけた。
 「見てたよ。あんたらも人を甚振るのが好きそうだし、いいだろ。私らも混ぜておくれよ」
だが、ニュートラルコーナー近くのエプロンサイドにいる双子の村上姉妹の妹・・・村上 千秋がそれをいなした。
 「あらぁ…まだ余ってるじゃない。もっと素敵な悲鳴が聴けそうですわね。」
そう言うなり、フレイヤは祐希子の右足を取り、南と同じように膝十字の形にとらえた。
ダブルの膝十字に祐希子の股はまるでレッグスプリットのように開かれる。
 「げはっ!げぼっ!!ぐぎぃいぁああぃあああぁあぁぁああっ……!!」
増えた痛みに涙と涎を垂れ流し、股から尿を噴き出させながら悲鳴を荒げる祐希子。
 「ふぅん、じゃあ私はこっちかい。」
双子の姉・村上 千春はそう言うと先程脱臼した側の腕を取り、逆側の龍子と同じように逆十字に固める。
 「ひぎっ……!! ぃッ、ひィぎゃあばああああああああぁあぁぁああがはぁああぁぁぁああああぁあああっ!!」
あまりの激痛・・・五つの激痛に祐希子は白目を向き、体を痙攣させながら途切れる事無く苦痛の絶叫を上げ続ける。
 「村上 千秋!良いですわ、やりなさい!!」
市ヶ谷は首四の字で祐希子の首を締め上げながらニュートラルコーナー最上段を指差し、村上 千秋を促す。
それに対し村上 千秋は口の端をニヤリと上げ、不敵に応えた。
 「良いねえ、今のあんたならそう言ってくれると思ってたよ。これからは同じ反乱軍としてよろしく頼むよ?」
エプロンからニュートラルコーナー二段目に足を掛けつつそう返し、そこから一気に最上段まで上った。

673 :正規軍vs反乱軍 5:5:2008/03/03(月) 04:08:19
コーナー最上段の村上 千秋の足元には、5人の絞め技によってマットに磔にされるようになって叫ぶ祐希子の姿。
着地するとすれば一箇所・・・胴体しかない。
足や股を攻められている様、これから自分が落下するであろう場所を見て思ったのか。
 「 次は武藤 めぐみや結城 千種あたりを虐め抜いてみるのもいいかもしれないねえ 」
言い終わると同時に村上 千秋の足はコーナーマットを離れた。

 “ ドグウウうぅッ!!! ”
 がぼあぁッッッッ……………………………!!!!

拘束されたままビクビクビクッ!!と痙攣するしなやかな肢体。
最上段のコーナマットから離れて自由落下に任せて降下した村上 千秋の揃えた足の裏は、
その全重量と重力の力を乗せて・・・力の入らない祐希子の腹部にめり込む形で着地した。
 「がッ……!! がぼぅッ………………!!!」
白目を向いた祐希子の口から、明らかに赤い体液をも織り交ぜた大量の嘔吐物が噴出する。
その嘔吐物は祐希子自身の顔はもちろん、首を締め付ける市ヶ谷の太腿や脛にも浴びせられた。
さすがにこれを見て終わりと見たのか、関節技をかけていた4人が祐希子から離れる。
 “カンカンカンカンカンッ!!”
試合終了のゴングが鳴る………誰が見てもそうであろう、終局。
だが、市ヶ谷だけはそんな事も構わず絞め続けた。
 「死になさい、祐希子………!!!」
白目を向いてごぼごぼと嘔吐を続け、ひくひくと痙攣する祐希子。
いっそう強く締め上げる市ヶ谷。
そしてその締め上げに・・・遂に祐希子から動きらしい動きが無くなった。
 「市ヶ谷!!止めなさい、終わりよ!!!」 「市ヶ谷ッ!!」
南と龍子が市ヶ谷の足を二人掛かりではがす。
止まるきっかけを得た市ヶ谷は解かれた足で立ち上がり、自軍コーナー、鉄柱にかけていたマントを羽織りリングを降りた。
他の5人もそれを追うように・・・振り向く事無く花道の向こうを目指す。
リング上には、技をかけられた名残で曝すように股を広げ、自分の体液で汚れたままで残った祐希子・・・
ひょっとしたら生死さえも危うい、その祐希子を担架で運んでいる所だった。


慌てふためくセコンド陣、リングドクター。
それぞれ忙しなく動く報道陣
試合が終わってもいまだ興奮している観衆。
相変わらず騒ぎ立てるだけの実況。
 「なんて事………」
パンサー理沙子は落胆し、塞ぎ込んでいたていた。
 (これから……どうなってしまうの? どうするつもりなの………『貴方』は………)

 「ふむ……上々の反応だな。これなら次に移れそうだ………フフフ」
沈むパンサー理沙子をよそに・・・本部席から茶色いスーツ姿の男が会場全体を見回し、そう呟いていた。
675 :正規軍vs反乱軍 5:5:2008/03/03(月) 04:34:57

(以下、インタビュー)


ビューティー市ヶ谷
 「マイティ祐希子?誰ですの、それは。…それはそうと………虐め抜くのも良いかもしれませんわね………ふふ……。」
  ( 『久しぶりに肌を合わせるマイティ祐希子は如何でしたか?』の問いに対して)

南 利美
 「さあ………どうだったのかしらね。知らないわ。」
  (同質問)

サンダー龍子
 「そんな事よりひかるの事だ!!……あいつ……次の興行で私とシングルを組んでやる……。」
  ( 『久しぶりの新女マットに上がった感想は?』の問いに対して)

村上 千春 & 千秋
 「成り上がるチャンスを待ってただけさ。それに『こっち側』なら縛られる事無く思う存分暴れられそうだったからね。
  もういいかい?帰らせてもらうよ。」
  ( 『乱入・反乱軍入り』について村上 千秋が返答。答えるなり、有無を言わさずシャットアウト)

フレイヤ鏡
 「私の欲求を今、一番満たせそうな場所だったから……ですわね。
  虐められる側より虐める側に回った方が気持ち良いでしょう?」
  ( 『乱入・反乱軍入り』について、報道陣に妖艶な流し目を送りながら返答)


※他7名の選手については病院送りの為インタビュー出来ず。
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