14 :オリゼー:2008/08/13(水) 01:04:56
とりあえず書いてみたので投下ー。
もし>>12さんが投下途中だったら申し訳ない……

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「すまん祐希子!!」

 選手控室にボンバー来島の声が少し大きめなヴォリュームで響いた。
 右腕をギプスで固められ吊られたそれが痛々しく、来島は左手を顔の前に持ってくると拝むようにして祐希子へと頭を垂れる。

「ちょ……恵理その腕どうしたのよ……」

「いやぁ……ちょっと……ヘマこいた」

 ジャージ姿でストレッチをしていた祐希子が目を丸くし動きを止め、来島のそのギプスに目を奪われるも、申し訳無さそうに情けない表情を浮かべ後頭部を掻く来島。

「いや、ちょっとじゃなくって、どうすんのよ今日の試合」

「本当にすまん……こんな大事な時に……」

 祐希子の顔に雲がかかる。
 と、いうのも今日の試合は殴り込みをかけてきたWARSの面々と、3対3の特殊ルールを採用した団体戦が行われる事になっており、祐希子はもちろんの事目の前で右腕をギプスで固めた来島もメンバーとして参加する事になっていたからだ。
 だが、祐希子は来島を責められなかった。申し訳無さそうに頭を下げる相手を蔑むほど性格は歪んでいない。 「気にしないでいいよ。早く治してね恵理」 祐希子は晴れない気持ちのまま、むりくり作った笑みを来島へと差し向けるのが精一杯であった。

「恵理が駄目ってなると……めぐみと千種あたりが適任……かな? 理宇はジュニアだしルール的にちょっとね……」

「あぁ、いいんじゃないか? あいつ等も最近は第一線張れる様になってきたしさ」

 誰のせいで悩んでると思ってるのか、ジトリとした視線を祐希子が来島へ向けると 「ははは……すまね……」 来島はそれに誤魔化すような苦笑を漏らすことしか出来なかった。


 新日本女子プロレスのリング。
 興行が始まり既に数試合消化した所で、新女側からマイティ祐希子・武藤めぐみ・結城千種。WARS側からサンダー龍子・小川ひかるがそれぞれジャージ姿でリングへと上がり、中央で祐希子と龍子が睨み合う。

「ん? 石川はどうしたのよ石川は」

 WARSの面々を見た祐希子が、人数自体足りないばかりかWARSの事実上No2でもある石川涼美の姿が見えないのに訝しげに表情を歪める。

「石川はこういう抗争は向かないのでな、今回は外れてもらったまでだ」

「へぇ……そう。それにしても3対2だなんて随分余裕かましてくれるじゃない、負けて咆え面かかないでよね」

 祐希子が数滴有利に表情を緩ませこの勝負貰ったと漏らす。 「何か勘違いしているようだな」 そんな様を見せ付けられた龍子が祐希子の余裕顔をふんっと鼻で笑い飛ばした。

「これはWARS側からのサプライズだ。3人目のメンバーは……そうだな、エックスとしておこうか……試合になればわかる
 むしろ、お前の方こそ来島が見当たらないがどうした? 尻尾を巻いて逃げるような女じゃないだろう」

「う、うるさいわね。あんた達なんかめぐみと千種で十分なのよッ」

 龍子に痛いところをつかれた祐希子は言葉をどもらせながら強がって見せると龍子はその姿に 「咆え面かくのはどちらだろうな」 と、不敵な笑みを浮かべた。

そして、遂にメインイベント特殊ルールで行われる3対3の新女vsWARSの団体戦の火蓋が切って落とされる。
 先鋒、中堅、大将に別れての勝ち抜き戦。その順番はチームが相手の先鋒、中堅、大将を予想し自由に組むことが出来る。しかし相手の先鋒、中堅、大将は教えられずリングに対峙して初めて自分の対戦相手がわかるという方式だ。
 そして、大将だけはアイアンマンマッチルールが採用されギブアップをしてもスリーカウントをしても試合終了にはならないという特殊ルールとなっている。
 試合時間は100分、普段の試合よりも長めに取られた時間、それは大将のみではあるがアイアンマンマッチを採用していることもあり、その過酷さが薄まらないようにとの処置であった。
 20分一本勝負を二本、アイアンマンマッチの60分が一本、あわせて100分という長い時間を取ったのであろう。しかし試合展開によっては下手すれば大将が通常60分のアイアンマンマッチをそれ以上やらされる可能性もあり、そして最後にお互いが大将になった時、ランバージャックデスマッチのルールまで追加される。それが特殊ルールと呼ばれる由縁でもあろうか。

15 :オリゼー:2008/08/13(水) 01:06:57
その2
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 試合開始のアナウンスが場内へと流れると、まずWARS側の先鋒の入場曲が流れる。
 花道に姿を現したのは小川ひかる。大方予想のつく先鋒ではあったが観客は試合が開始されたという事に盛り上がりを見せた。
 緊張の面持ちでリングインした小川、花道へと向ける視線は意外と鋭く不安は感じられない。それは恐らくではあるが先鋒、中堅は武藤めぐみ、結城千種が出てくると予想しているからであろう。
 そして新女側の先鋒の入場曲が大音量で鳴り響く――――。

「う……そ……」

 小川の鋭い視線が一気に泳ぎ、その入場曲に震撼した。
 流れ出した入場曲。それはまさに予想していなかったマイティ祐希子のものであったからに他ならない。
 花道に姿を現した祐希子がリングへと一気に駆けリングインしたと同時にゴングが鳴る。

「驚いた? でも、すぐに終わらせてもらうわよっ!」

 祐希子がリングインの勢いを殺す事無く開幕一番で小川に向かってドロップキックを見舞った。

「きゃぅ――――ッ!」

 完全に動揺しきった小川が胸元へとドロップキックを喰らい二歩三歩後退してから尻餅をつく。

「貴方達がエックスなんて用意するのがいけないのよ。恐らく龍子のプライドからいって、アイツは大将を譲らないだろうからね……
 きっとエックスが中堅なんでしょ? 初見の相手をさせるにはめぐみも千種もまだ荷が重いからね、私がエックスまで片付けてしまえば問題ないって訳よ」

 したり顔の祐希子が尻餅をついた小川に向かって推理をして見せると、髪を掴んで立ち上がらせブレーンバスターの状態で小川を持ち上げる。

「どう? 名探偵祐希子さんの名推理は……当たってるでしょう?」

 対空時間の長いブレーンバスターで小川の背中をリングへと打ちつけると、小川は体をエビ反りにしてその痛みを体現して見せた。

「くぅ……こんなはずじゃ……ぁ」

 普段ジュニアで活躍する小川には荷の重い相手、まだヘビー級だとしても武藤めぐみ、結城千種などの若手であれば互角に戦う事もできたであろう。
 だが、今相手にしているのは新日本女子プロレスのエースと呼ばれるマイティ祐希子である。
 完全に祐希子の雰囲気に呑まれた小川は消極的な動きしかとれず、祐希子の動きに翻弄されっぱなしのまま試合が進んでいった。
 
「そろそろね」

 祐希子が残り時間を表示させる電光掲示板に目をやると5分が過ぎた所、小川をボディスラムでリングへと叩き付け素早い動きでコーナー最上段へと登りつめる。

「たあぁぁぁぁ――――ッ!!」

 リング上に寝そべる小川に向かい祐希子はムーンサルトプレスで落下する。

「ご……ッ……ぉ……ッ」

 みしりと鈍い音が祐希子の頭に響く。
 そう簡単には終れない。そんな表情を浮かべた小川が膝を立て祐希子のムーンサルトプレスを迎撃して見せたのだ。

「そんな簡単にやられたら、龍子さんにどやされますからっ」

 祐希子が鉛のように重くなった体をリングに転がす。
 勝てないにしてもただでは終れないといった表情を浮かべた小川が 「せめて足の一本でもっ!!」 と、祐希子の足を取るとスタンディング状態でアンクルホールドを極める。

「ぐぐぐ……ッ!! ゆ、油断したぁ……ッ」

 祐希子は痛みに表情を歪ませながらも、少し遠いロープへと片手を精一杯伸ばす。

16 :オリゼー:2008/08/13(水) 01:08:08
その3
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「幾らマイティ祐希子といえど、私の関節からはそう簡単に……逃さないッ!!」

 アンクルホールドを極めたまま祐希子をリング中央へと引き戻した小川が、クスっと笑い祐希子の顔面を踏みつけながら更に掴んだ足を捻り上げる。

「どうかしら、格下相手に顔面踏まれて苦しめられる気分は
 それに……聞こえるでしょう? 関節を極められた者だけが聞こえる悲鳴がっ」

「くぅぅぁぁぁッ!!」

 小川の言葉通り、祐希子の脳裏に捻り上げられた足首の関節の悲鳴がこだまし、痛みが楽になればと反射的に体を反りあげようにも踏みつけられた小川の足がそれすらも許さない。

「おが……わっ……あんた……幼い顔して……結構なサディストなのかしら……ね……ぇ゛ッ」

「クス……新女のエースにそこまで言ってもらえるなんて……光栄ですね」

 祐希子にサディストと称された小川が、そのサディストと呼ばれる者が見せる相手を見下し家畜を見るような表情そのものへと変化し、捕らえた足を更に捻り上げた。

「あぐぅぅぅぅ……ッ!!」

 捻り上げられた祐希子の足首がこれ以上曲がると折れてしまうのではないかと思わせるほど拉げ、祐希子が苦悶の悲鳴を漏らしあがきもがくと小川はそれに気を良くしたのか、はたまた目の前にぶら下がる大金星に焦ったのか、踏みつけていた足を離し両脚でしっかりとリングに踏ん張り勝負を決めにかかろうと更に捻りを強くした瞬間。
 
「自分から……金星を手放しちゃ駄目……ねぇ……ッ」

「しま……――――ッ!!」

 祐希子が小川に取られている足と同じ方向に体を回転させると、簡単に小川のアンクルホールドから脱出して見せた。

「で、でも……その足じゃ何もでき――――ッ!」

 小川の言葉が終る前に祐希子のソバットが腹を抉る。
 言葉途中に腹部へと打撃を喰らった小川が体中の酸素を吐き出すと、たまらず腹部を押さえ両膝をリングへとつきしな垂れた。

「マイティ祐希子を舐めんじゃないわよッ!!」

 膝立ち状態の小川の前で祐希子の体がくるりと回転しローリングソバットを繰り出すと、小川の顔面に祐希子のシューズ裏が小気味良い音を立て収まった。

「は……が……ッ……」

 小川の黒目がぐりんっと裏返ると、小川の体がぐにゃりと後方へと折り曲がりリングへと倒れこんだ。

『ワン! ツー! スリー!!』

 そしてすかさず祐希子が小川からスリーカウントを奪う。
 祐希子が小川を破ることは予定通り、観客も予想していたことであろう。
 しかし、唯一の誤算。小川の意外な粘りに祐希子の足は確かに悲鳴を上げていた。それでもローリングソバットを繰り出したのは新女のエースたる由縁と言った所であろう。

「つぅ……ッ……まずったなぁ……でも、まだ……まだ負けられないッ」

 WARS側の中堅が入場してくるまで足に負担をかけまいと、コーナーを背もたれにして足を伸ばし座り込み花道へと視線を移した祐希子。
 すると会場の照明が全て落とされ辺りは闇に包まれる。
 スポットライトが花道の奥、選手の入場口へ当てられ大量のスモークが焚かれた所で次の選手の入場曲が流れると祐希子の表情が凍った。

「……な、なんで……なの?……なんで貴方なのよぉッ!!」

 スモークの焚かれた入場口の両脇が大掛かりな仕掛けによって爆発を見せると、一気にスモークが晴れる。
 そして、入場曲に合わせ姿を現したのは試合前右腕にギプスを強いられていたボンバー来島の姿であった。
 オレンジと黄色を基調とした普段のコスチュームとは違い、服装自体変わりはしないが黒を基調とし燃え上がるような赤色がファイヤーパターンでコスチュームを彩り、黒いエナメルのロングコートを羽織ったボンバー来島がふてぶてしい表情のまま花道を歩きリングへと向かう。

17 :オリゼー:2008/08/13(水) 01:09:18
その4
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「おい、小川大丈夫か?」

 リングインした来島はあえて祐希子へ視線を送らず無視するように小川の元へと歩み寄る。

「ぅ……ぅう……やっぱり、駄目でした来島……さ……ん」

「いいや、十分だ。よくやったよ」

 来島が軽く小川の頬に手を添え健闘を称え朦朧とした小川をリング下へと下ろす。
 「十分だ」 という言葉。来島が祐希子へ背を向けていてもまったく突っかかってこなかったのを見ればそれは言葉通り。小川の値千金の働きによるものだった。

「さぁ、祐希子やろうぜ」

 改めてリング上へと戻った来島がコートを着たまま、コーナーへと座り込む祐希子を睨んだ。

「恵理……なんで? ウソでしょ? なにかの間違いよね?」

 ロープを掴みやっとの事で立ち上がる祐希子の表情には動揺が見て取れ、一体何が起きているのかわからない。そう問いかけるような視線を来島へ泳がせながら足を引き摺り来島へと歩み寄る。

「ウソでも間違いでもねぇよ、オレァ今日からWARSの一員だ」

「だって、ほら、ねぇその右腕……怪我して……あ、あれ?……ウソよ……ウソだと言ってよぉ!」

 来島がロングコートを脱ぎ捨てると試合前に見せていたギプスは姿を潜め、怪我などまったくしていない右腕が祐希子の視界へと晒された。
 長年付き添ってきたタッグパートナー、そして親友、試合前に謝っていた姿。あれが全てウソだった。それを全て認識した時、祐希子の中で何かが崩れ去った。
 そして、無常にも試合再開のゴングが鳴らされる――――。

 祐希子の気持ちに整理のつかぬまま始まった試合。
 一方的に来島が攻め立てる、祐希子の足が動かないことをいい事に見せるやりたい放題の振る舞いに、かつて祐希子のダッグパートナーだった来島の面影はまったく無い。

「う……ぎ……ッ……ぃぃいッ」

 リング中央で来島が祐希子をアルゼンチンバックブリーカーで捕らえると、祐希子の口からは震えるような呻き声が漏れた。

「情けねぇな祐希子、オレが裏切ったくらいでよ? プロレスにゃ裏切りってのはついて回るもんだ……ぜっ!!」

「ぐ……ぎゅ――――ッ!?」

 来島が担ぎ上げていた祐希子の体を振り回しリングへと叩きつけるタワーハッカーボム。
 叩き付けられた祐希子の体が大きくリング上にバウンドすると、来島はピクリとも動かなくなった祐希子をそのままフォールの体勢で捕らえスリーカウントを奪った。
 
 こうなると新女側の計算は完全に狂う、失意のまま何も出来ず敗れ去った祐希子はエックスである来島のいいウォーミングアップ相手でしかなく、次に現れる新女側の中堅はいい具合に体のほぐれた来島を相手にしなければならなくなった。

「敗者がいつまでもリングに寝転がってんじゃねぇよ」

 リング上を掃除するかのように大の字になった祐希子をリング下へと蹴り落とす来島。それを見る限り来島からは祐希子に対してのわだかまりというものは感じさせなかった。

「さぁ……ってと、もうひと暴れだっ」

 来島は無邪気な笑みを浮かべると、乱暴に右腕を振り回して次の選手が入場前に花道へと陣取り体勢を低く待ち構える。
 そして新女側の中堅の入場曲が鳴り響く、それは結城千種の曲。それと同時に来島が入場口へと勢いよく走り始めた。
 恐らく舞台裏で事の流れを見ていたであろう結城千種が意を決した表情で 「いきますっ」 と入場口から花道へ飛び出してきた。
 それは運が悪かったとしか言いようが無い。千種からしてみれば先輩レスラーの裏切りに動揺もあったであろうが、その気持ちを気合で押さえ込み飛び出したはずだった。しかしそれを待ち受けていたのは歓声では無く来島のナパームラリアート。
 花道上で千種の体が一回転し地面へと叩き付けられる。飛び出してきたところへカウンター気味に入った来島のナパームラリアート一撃は千種の意識を半ば断ち切った。

18 :オリゼー:2008/08/13(水) 01:10:53
その5
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「オラァ! どけどけ! あぶねぇぞ!」

 来島が千種の体を半ば引き摺るようにリングサイドまで連れて来ると、リングには戻らず千種の体を観客席へとスルー。

「きゃぁぁ――――ッ!!」

 けたたましい金属と金属がぶつかり合う音と共に、観客席へと突っ込んだ千種の声が響く。
 未だ開幕のダメージが抜け切らない千種はその場でグッタリと椅子にうずもれるように動かない。

「どうした千種ぁ!」

 そんな千種に対し来島は飛び散らかったパイプ椅子を千種目掛け投げつけていく。 「や……っ……やめ……ッ!! 来島……先……輩ッ……やめてくだ……さ……ぁ………」 千種は雨の様に降ってくるパイプ椅子を両手でガードし泣き言を漏らすことしか出来なかった。
 一体来島はいくつものパイプ椅子を千種に向かって投げつけたであろうか、見ればパイプ椅子の墓標のようなものが出来上がり千種の姿はパイプ椅子に隠れ見つける事すら出来ないほどだ。
 その墓標を満足げに見ていた来島であったが、横合いから誰かに突き飛ばされる。 「いい加減に――――しろぉッ!!」 あまりのラフファイトな展開に先ほどリング下に蹴落とされた際、その場で治療を受けていた祐希子が見かねて割ってはいったのだ。
 来島を突き飛ばした祐希子は、高く乱暴に積み上げられたパイプ椅子を一つ一つ崩して行き、千種をようやく救い出すも千種の額からは出血を帯び祐希子の肩を借りなければ立ち上がれないほど憔悴しきっていた。

「はんっ……もうそういう友情ごっこは飽き飽きなんだよ。さっさとソイツをよこせよ祐希子、試合は終っちゃねぇんだから」

「渡せるはずないじゃない! 千種はもう無理よ!」

 祐希子と来島がお互い微妙な間合いから怒鳴りあう。 「祐希子さん……大丈夫ですから……私、まだプロレスしてないですから」 すると千種はふら付きながらも祐希子を押しのける様にしてリングへと向かっていく。祐希子はそれを止める事が出来なかった。 「まだプロレスしていない」 その言葉を言われてしまえばどうして止められようか。

「お涙頂戴の所わりぃけどさ、お前の行く先はそっちじゃねぇぞ?」

 千種がようやくリング下からサードロープを掴みリングへ這い上がろうとした時、千種の後ろ髪が来島によって掴まれ場外へと引き戻された。

「く、くぅ……――――ッ」

 ようやく掴んだサードロープから千種の手がいとも簡単に引き剥がされ連れて行かれた先、それは実況席の前。
 来島が実況席の机の上のものを乱暴に床へ落とし千種と共に机の上に立つと、パイルドライバーの形で千種を持ち上げる。

「リングに戻ったら勝負決めなきゃいけねぇからなぁ!」

 そして尻餅をつくように机に自らの臀部を落とし、千種の脳天を机に突き刺すと 「ぐ……ぎ……ひッ」 普段発するおさなげの残る可愛い声からは想像も付かないほどの鈍い声と、流血の混じった泡が千種の口から漏れ、折れ曲がった机へと倒れこんだ。

「それじゃぁそろそろ決めるとしようかねぇ」

 さっさと起きろと言うかの如く、片手で千種の髪を掴み力の抜けたその体を引き摺ってリングへと押し上げる。
 千種はリングに初めて上がれたものの、既にその力にプロレスをする力など残っては居ないだろう。千種の倒れた顔の位置を中心に白いリングが紅に染まる。
 この試合を見守る誰もが思うであろう 『もう終らせてやってくれ』 と。

「何で止め刺されたいか言ってみ」

「う……ぁ……ぁ?」

 来島に掴みあげられた千種の表情は虚ろだ、視線もどこかを彷徨い覚束無い。今でこそ両脚で立っているが、指先一つで押されればその体はすぐにでもリングに倒れてしまうであろう。

「なにか言えよ、わかんねぇだろ?」

 来島が意地の悪い笑みを浮かべたその時。恐らく意識はまだあるのだろう千種はふらつきながら来島の背後へと回ると来島の腰へと腕を回す。

「何するつもりだ? まぁいいよやってみりゃいいさ。できるならな」

 既に何かを仕掛ける力など残っているとは思えない千種に来島は抵抗する事なく背後を取らせた。

19 :オリゼー:2008/08/13(水) 01:12:27
その6
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「う゛ぅ゛ぅ――――ッ!!」

 千種が呻き声にも似た声を漏らしながら来島の体を後方へバックドロップで投げようとするも、来島は涼しい顔で腰を落としいとも容易くそれに耐え必死の千種を鼻であざ笑う。

「う゛う゛う゛……ッ……う゛ぅ゛ぁ゛ぁ゛!!!」

 だが、次の瞬間来島の顔に少しばかりの焦りが滲みでた。それは来島の足の裏の感触。ふわりと一瞬、一瞬だけではあるが来島の体が浮いたからだ。
 そして千種がまだ諦めない。武藤めぐみの為に、少しでも相手にダメージを、その思いが体を奮い立たせる。

「あ゛あ゛ぁ゛――――ッ!!」

 遂に来島の両脚がふわりと浮く、後は後方へと投げるだけ、会場全体が挙って千種に向かって声援を送る。 
 「ひぎッ」 だが悲鳴を上げたのは千種。よくよく見ると来島の踵が千種の股間へとめり込んでおり、千種は膝をガクガクと大きく振るわせると股間を押さえ尻を突き出すようにしながら前のめりに倒れた。

「あっぶねぇあぶねぇ……腐っても新女ってところか」

 勝負を決めてやる。来島の表情が引き締まるも、それはすぐに和らいだ。
 と、いうのも股間を押さえた千種は黒目を上向きに、涎と共に舌をだらしなく口端から垂れさせ 「あ゛ー……ぁ゛ー……」 と呻き声を上げ股間に薄っすらと染みを作っており、既にフィニッシュ技を繰り出すまでも無い。そう思えたからである。
 そうなれば来島は汚いものでも扱うかの様に片足を使い千種を仰向けにさせると、踏みつけるようなフォールで千種からスリーカウントを奪った。

 結局WARS側はボンバー来島の二人抜きで、サンダー龍子を温存し新女の大将を引き出すことに成功した。
 かえって窮地に追い込まれたのは新女側、予定では祐希子が先鋒、中堅を降しサンダー龍子を残り二人で何とかするという作戦を立てていたはずが、武藤めぐみ一人でボンバー来島、そしてサンダー龍子を相手にしなければいけないという状況に暗雲が立ち込める。

「うおおぉぉぉッ!!」

 武藤めぐみには珍しく試合中雄たけびを上げ闘志をむき出して、負けられないという気持ち、千種をあのような目にあわせた相手への怒り、様々な気持ちを全て吐き出すかのように来島へとぶつかっていく。
 来島も流石にそれを涼しい顔で受けるのは厳しいのか、胸元に落とされるチョップに顔を歪めていた。

「っざってぇんだよ!!」

 武藤の漲る闘志に業を煮やした来島が、助走もつけずその場からラリアットを繰り出し武藤をチョップごとリングへとなぎ倒す。

「ぐ……ぅッ……流石に……ッ」

 武藤が受身を取りながらリングへと倒れるも、追撃をさせまいとすぐに身を起こし間合いを取った。
 もともとの馬力の差、殴り合いでは勝ち目が無い。武藤は戦いながらいかに体力を消耗せずサンダー龍子までたどり着くか、それを画策しながら試合を進めていく、流石次期エースと期待されるだけはあるか。
 ただ、並みのレスラー相手ならばそれも叶ったかもしれない。だが今相手にしているのは自分よりも試合経験が豊富で、WARSへ裏切ったといっても今までは新女で第一線をはっていたトップレスラーの来島である。
 武藤の探りをいれるようなプロレスは、徐々に来島のブルファイトに押されていく――――。

「う……ぐぅ……ッ……ぅ……ッ!! はなぜぇ……ッ」

 リング中央で来島がとうとう武藤を捕らえる。ネックハンギングツリーで軽々と武藤を持ち上げた来島が得意気な表情でリング内を歩き回ろうと動き出した瞬間。

「ギ、ギブア゛ッブゥッ!!」

 武藤が突然のギブアップ宣言。自分は大将であるが故にギブアップを宣言した所で負けることは無い。我慢してスタミナを消耗するほうこそが愚策なのだ。

「はぁ!? もうちょっと頑張れよお前……」

 レフリーに促され武藤を解放した来島がつまらないと口を尖らせる。
 そして、今のギブアップで武藤めぐみの名前が表示されている電光掲示板に数字の1が表示される。それはギブアップ、フォールをされた回数。
 しかし武藤の表情に焦りは無い。恐らく無傷でサンダー龍子までたどり着けるなどとは元より思って居ないのだろう。

「締め技や関節が駄目ってんならいいよ、オレにも考えがある」

 武藤が来島からこの言葉を聞いて、言葉には出さないが 「よし」 と心の奥でもらす。
 武藤は来島の力まかせに繰り出すアルゼンチンバックブリーカーを恐れていた、関節技などで受けるダメージは試合時間が過ぎれば過ぎるほど体に負担が掛かってくるからだ。
 しかし、来島が締め技や関節技に見切りをつけるような事をもらせばその脅威は無くなる……はずだった。

20 :オリゼー:2008/08/13(水) 01:13:47
その7
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「まって……まって……ッ……やだ――――ッ!!」

 来島がツームストンパイルドライバーで武藤をリングへと叩きつけると、武藤は溜まらず首を押さえのたうちまわった。
 来島は締めや関節でなくともピンポイントに痛めつける技なら幾らでも知っていると、腕を攻め、首攻め、足を攻め、多種多様の打撃、投げ、パワー技で武藤をジワジワと甚振り弄ぶ。
 気付けば電光掲示板の武藤めぐみの名前の表示の横の数字は既に5をカウントしていた。

「は……ッ……はぁっ……はっ……ぐ………ぅ………」

「んじゃ、六つ目も頂こうか……めぐみ」

 既に余裕の表情で武藤を掴みあげると、来島が電光掲示板に視線をやったその一瞬。武藤めぐみはそれを見逃さない。
 痛め付けられた全身が軋むのを我慢して来島を丸め込むと、まさに電光石火の早業といおうかようやく来島からスリーカウントを奪った。

「はぁ……はぁ……まだ……70分も――――ッ」

 来島との勝負を終え、少しでも休もうと武藤はリング上で大の字になりながら残り時間の表示に目をやると、まだ70分もの時間が残っていることに愕然とした。
 70分もあれば5カウントくらいすぐに追いつける。そんな風には到底思えるものではなく、できることならば逃げ出したい。そんな気持ちまで芽生えてきそうなほど来島から受けたダメージが武藤を蝕み、そして遂にWARSの大将であるサンダー龍子がリングへと上がた――――。


「悪いが手加減はしてやれん」

「望む……ところ……ですっ」

 逃げ出したい気持ちをなんとか押さえ込み、ふら付きながらも立ち上がる武藤が不敵に笑みを浮かべる。
 せめて一矢報いてやろう、そんな言葉が滲み出そうな武藤の表情を龍子が鼻で笑うと、両者リング中央でロックアップ。
 しかし力の差は歴然としていた、あっという間に武藤の体がコーナーへと押し付けられ、龍子のかち上げ式エルボーが炸裂すると武藤の頭が派手に持ち上がった。

「一発じゃ終らんぞ?」

 持ち上がった頭が元の位置へ戻る度に武藤へとかち上げ式エルボーを食らわせていくと、武藤は両腕をトップロープに絡ませなんとか立っているという状況へと陥り、頭をしな垂らせ激しい呼吸が喉を鳴らす。

「ぜ……ッ……ぜぇ……ッ……」

 完全にグロッキー状態の武藤を龍子が高速ブレーンバスターで後方へと投げ捨てる。
 叩き付けられた武藤の上半身が一度持ち上がるも、力なくその上半身は後ろへと倒れこみリング上で大の字姿を晒した。

「おい、さっき見せた笑みには意味ないのか? さっさと起きろバカたれ」

 追い込まれてもなお、あの笑みは自分を楽しませてもらえるものなのだろう? なにを寝ているんだと、龍子が大の字の武藤を跨ぐように立つと少し前屈みになり武藤の頬へと幾度となく張り手を落としていく。

「痛ッ……いだ……ぃッ……やめ……ッ……ぇ……ッ……立つ……ッ……立ちま゛す……から゛っ」

「ふむ、そうか、なら早くしろ」

 武藤の言葉を聞くと龍子の張り手がぴたりと止まり、龍子はコーナーへ背中を預け武藤が立ち上がるのを退屈そうに待ち受けていると 「ふぐ……ッ……ぅ……ぅうッ………」 あまりの惨めさに涙を流す武藤がえづきながら立ち上がる。
 そして、もうがむしゃらとしか思えない叫び声と共に龍子へと歩み寄りその胸板に張り手を落としていった。

「よもや試合中に泣くとは……ここは子供があるような場所では――――ないッ!!」

「んぐぅ゛――――ッ!!」

 眼光鋭い龍子の逆水平チョップが武藤の繰り出す張り手に割って入る。
 渇いた音が会場内に響き渡ると武藤は目を見開いて胸元を押さえ後ろに下がストンと尻餅を付いてその場に座り込むようにして倒れた。

「これで終わりと思うな」

 起こされた武藤の上半身に龍子のサッカーボールキックが炸裂した。

21オリゼー:2008/08/13(水) 01:16:24
ラスト
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武藤は声にならないような叫び声を上げ場外へと転がり落ちていく 「も……もぉ……嫌……ぁ……ッ」 咽こみながらそうもらした武藤が花道を四つん這いで逆走し始める。
 時計は未だ残り時間40分ほどはあろうか、武藤はもう戦えない、戦いたくない、龍子の技をこれ以上くらいたくは無い。弱肉強食の弱者が見せる防衛本能でもある逃げを打って観衆へこれでもかと無様な醜態を晒すも、武藤の前に人影が立ちはだかる。
 おそるおそる武藤が見上げた視線の先には、これ以上先には行かせまいと仁王立ちした来島の姿。

「おいおい、どこいくつもりだ? ルールを忘れたわけじゃねぇだろ?」

「ご……ぉ゛……や゛め゛……しぬ゛……死んじゃう゛……がら……ぁ……ッ」

 大将同士はランバージャックだと、来島がアクセサリーとして武藤の首に巻いてあるベルトを掴み半ば強引に武藤をリングへと引き戻す。

「ごめんなざい……ゆるじで……ぐださ……ぃ……ッ」

 リングに戻っても武藤の闘争本能に再度火がつくことはなかった。
 武藤が見せたのは土下座、もう勘弁してくれと龍子へ許しを請う姿に会場はどよめきを見せる。
 しかし、その行為が龍子の逆鱗に触れてしまった。常にプロレスラーとしての誇りを忘れず、ストイックなまでの強さを求める彼女はその姿に怒りを包み隠さない。

「いい加減にしろ! お前もプロレスラーだろう!! 土下座するくらいならリングで死んで見せろ!!」

 土下座で頭を下げた武藤をパワーボムの格好で高く持ち上げると、満を持してサンダープラズマパワーボムがリングへと落とされる。
 武藤の黒目は完全に裏返り、口からは涎と泡が混じったものがこぼれ全身は小刻みに痙攣し、トレードマークともいえる髪を結ったリボンは解け長い髪が乱れた――――。

 
『試合終了! 試合終了!!』 

 試合時間の100分が過ぎ、タイムキーパーが試合終了のゴングを鳴らす。
 結果はリング上を見れば見るまでも無い。武藤のコスチュームは肩からはだけ落ち、武藤の体は仰向けで両脚が頭部の方へ折り曲がり見事なくの字を描いて恥部が持ち上げられるような状態でリングへ無様な姿を晒しており、何度も泣き、何度も涎を垂らし、何度意識を失ったのだろう。武藤の表情は目も当てられぬほど哀れな表情で白目を向いていた。

『武藤めぐみ選手のカウントは20! サンダー龍子選手のカウントは0! この試合、WARSチームの勝利となりました!』

 タイムキーパーが結果を発表すると、WARSの残り二人もリングへと上がり三人揃ってレフリーから勝ち名乗りを受ける。
 その後、ボンバー来島は正式にWARSへと移籍することとなり、祐希子は最愛のタッグパートナーがいなくなった失意からか精彩欠くようなプロレスしか出来なくなった。
 結城千種は場外乱闘で受けた傷、リング上でかかされた恥からか長期欠場となり、武藤めぐみもまた長時間いたぶられ続け、もとより高かったプライドが粉々にされプロレスに恐怖を覚えたのか精神的な衰弱が激しく入院を余儀なくされた。
 
 この新日本女子プロレスvsWARSの団体戦は一夜にして新女側を大きく傾かせるほどの衝撃を残し終結を見た――――――。
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ごめん、めちゃくちゃ長くなっちゃった……これでも頑張ったんだ。
6人纏めて動かせればもっと早く終ったんだろうけども……
あと、ランバージャックルールとか適当に追加しちゃってゴメンナサイ
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