431 :430:2008/12/06(土) 06:07:45


 とある新日本女子プロレス興行のメインイベント。
 リング上で戦いを繰り広げているのは近藤真琴と森嶋亜里沙だった。

「は……ッ……はぁ……ッ……はぁ……ッ……」

 森嶋の息は大きく乱れ、口内をカットしているのか端からは一筋の赤。心なし片目は腫れ上がり、苦戦を強いられていると言えよう。

「先輩。そんなものですか?」

 対照的なのは近藤である。涼しい顔で相手の森嶋を微かに見下すような口調で言葉を漏らし、見た目ダメージを負っているような様子は無い。

「く……ッ……舐められたままじゃ終われないわね……沈みなさい近藤ッ!!」

 追い詰められた森嶋が口元から垂れる血の筋を拭い、後輩でもある近藤に一方的に攻められたまま終ってたまるかと、特徴的でもある彼女の長い腕が蛇のような動きで近藤へと伸びる。
  
「また、それですか……」

 伸びてくる森嶋の腕を近藤はワンパターンだ。と、苦笑しながらヘッドスリップでかわし相手の懐へと潜りこむと森嶋の顔が青ざめる。 「しまった」 そんな声を漏らすと同時に身を後方へと引こうとするも、近藤の体は既に回転を始めており森嶋はその渦へと吸い込まれるように動きが止まる。

「喰らえぇぇぇッ!!」

 自ら生み出した渦より飛び出してきたのは、近藤が必殺技としているバックハンドブロー。
 近藤の拳は見事森嶋の顔面を捕らえ、森嶋は声を発する事無くリングへと崩れ落ちていった――――――

「っしゃぁッ!!」

 先輩である森嶋をKOでリングに沈めた近藤がコーナーへ駆け上がり拳を天井へ向け振り上げる。
 その近藤はここ最近めきめきと実力をつけ、メインイベントを張るまでに成長を遂げていた。その中で斉藤彰子、神田幸子など同じタイプである格闘技出身者をも飲み込み、そして今日、プロレスを主体としていた先輩レスラー森嶋までもを飲み込むという結果を見せ、その勢いはまさに飛ぶ鳥を落とす勢いであった。
 そんな大金星を繰り返す近藤であったが、その大金星に気を良くしてしまったのか、徐々にプロレスに対し舐めた態度を取り始める様になっていく。

「動きの遅いプロレスラーなんて、キックをやっていた自分に取っては亀を相手にしているようなもんですよ」

 とある雑誌のインタビューで近藤はそんな事を言った。
 だが、それを良しとしないのは同団体に所属しているレスラー達である。ただ、団体でも実力者と言われている者達を難なく殴り、蹴り倒して来た近藤に対し、文句を言えるようなレスラーは多く無い。
 結局文句を言ってもリング上で負けてしまえば、それはただの遠吠えでしかない。悔しいが近藤の実力はブラフでは無く、それに勝てる自信の無い者は影で悔しさに奥歯を噛み締める事しか出来ないでいた。

「あの野郎――――――」

 しかし悔しがるレスラーの中で一人。一際体の大きいレスラーが悔しがるというよりも、気に食わないといった表情を浮かべ、その雑誌を握り潰した――――――

432 :430:2008/12/06(土) 06:08:45


「おい、近藤。次の興行で私とやる度胸あるかい?」

 練習中の近藤に半ば挑発気味に声をかけたのはガルム小鳥遊。
 近藤は意外な人物からの申し出に目を丸くする。それは普段ガルムが喧嘩を売るというよりも、喧嘩を買い、とことんその喧嘩に付き合うというようなスタンスを取っていたからだ。

「へぇ……ガルムさんでも喧嘩を売る事もあるんですね。いいんですか? 自分で言うのもなんですけど、今の私は強いですよ?」

 丸くした目をゆっくりと細めた近藤が自信ありげな表情でニヤついて、その体で自分の動きについてこれるのかと半ばガルムをバカにして見せる。

「けっ、言ってろ。リングの下じゃ何とでも言えるわな」

 近藤の言う事など戯言だ。と、そんな態度で相手を鼻で笑ったガルムも近藤に対し自信ありげな笑みを浮かべ、お互いがその表情のまま視線だけ鋭い物をぶつけあっていた。


 そして、来るべき時が訪れる。近藤真琴対ガルム小鳥遊。
 両者自コーナーから相手を睨みつけ、試合前から気合の入り方に異様な物を感じ取ったか観客がそれに応え大きな歓声を上げる。
 その歓声を裂く様に響く試合開始のゴング。その音が鳴ると共に近藤は試合早々に勝負に出た。

「うぉぉぉりゃぁぁぁッ!!」

 雄叫びと共に身を低くしながらガルムの元へと駆ける。
 対してガルムはその近藤に焦る様子も見せず、まるで仁王立ちでもするかの如く自コーナーへと聳え立ち不敵な笑みを浮かべるだけであった。

「来いよ。好きなだけ殴らせてやるからよ」

 その不敵な笑みから発せられた言葉に近藤の表情が怒りに歪む。自分の得意とする打撃という分野をあえて受けようとするガルムの態度が気に食わない。八重歯をむき出しに渾身の力を込めたボディーブローがガルムの腹を抉る。

「入った……ッ!!」

「何が入ったんだ?」

 自分の拳に伝わる感触に得意顔を浮かべた近藤であったが、それよりも更に涼しい顔を浮かべ口端を吊り上げガルムが不気味にニヤついた。

「なぁ――――――ッ!?」

 ボディーブローを放ったままガルムの顔を見上げた近藤は驚きを隠せない。自分の拳はガルムの腹へとしっかり埋まり、手応えも十分。だというのに、相手が涼しい顔をしていれば無理も無いか。

「さぁて、試合開始と行こうか――――――」

 体系に似つかわないほどの速さでガルムの両手が近藤の頭を捕えると、ガルムの両目に一段と鋭さが増した。

433 :430:2008/12/06(土) 06:09:50


「う、うわぁぁぁ――――――ッ!!」

 近藤の体がまるでぬいぐるみでも振り回しているかのように遊ばれ、コーナーへと投げつけらるとリング全体が振動で揺れて軋む。
 その勢いを殺せず反動でコーナーから押し戻された近藤が、痛みに顔を歪め背中を押さえ咽び返っている所に 「地獄へ行くにはまだ早いぜ」 ガルムの声が聴こえたと思った瞬間視界が大きく歪んだ。

「な゛……ぁ……ッ!?」

 大きな力で真横へと吹き飛ばされる近藤の頭部。それはガルムの打撃である。ラリアットというには不細工でぶっきらぼうな攻撃。前腕部分を力任せに振り抜くだけの攻撃ではあったが、ガルムの力、そして体重をもってすれば、その攻撃も立派な技になりうるか。その攻撃を右腕、左腕、右腕、左腕。と、近藤の頭部へと交互に打ち付けていく。
 前には巨体のガルム、左右からはガルムの腕、背中にはコーナー、近藤の逃げうる場所は無い。いや、一つだけある。しかし、そこに逃げると言う事は近藤がダウンすると言う事である。

「あ……ぐ……ぅ……ッ」

 しこたま頭部を殴られた近藤の視点が定まらず、コーナーを背にずるずると沈み尻餅を付く形で、ようやくガルムの攻撃から逃れる事が出来た。が、この場合、逃れるという表現が当てはまるとは到底思える物では無い。

「どうしたよ? 私より強いんじゃなかったかよ?」

 意識朦朧とした近藤をガルムはお構い為しに踏みつけるというより、シューズ裏で蹴り潰す。
 何度も、何度も、何度も、シューズ裏とコーナーバックルの間をバウンドするかのように近藤の顔が弾み、鼻は潰れ出血を帯び、顔全体は紅く微かに晴れ上がる。

「ぐふ……ぅ……ぅ゛」

 意識があるのか、既に途切れているのか……恐らくその合間で漂う近藤の体はコーナーとロープに支えられていなければ、起きている事は無いだろう。
 止め処なく垂れ落ちる鼻血が近藤の胸部のコスチューム、トランクスタイプのパンツ、そしてリングを朱色に染めあげる。

「ぶは……ぁ……ッ……ぁ……ッ……ぜ……ッ……ぜぇ……ッ」

 痛々しく腫れ上がった近藤の口から声が漏れる事は無い。漏れるのは激しく上がりきった息使いだけだった。

「ほら、立てよ。試合が終っちまうだろうがよ」

「がふ……ッ……ぁ゛……ぁ゛あ゛ッ!?」

 既に戦意喪失気味の近藤の喉下を片手で掴むと、いとも簡単にその体を持ち上げるガルムが獰猛な犬の如く八重歯を剥き出しにして笑って見せる。今の状態で近藤がその笑みを見えているのか定かではないが、見えているとしたら悪魔の様な面容に見えている事であろう。

「喜べ、地獄の一丁目に招待してやるよ」

 近藤の喉元を掴み持ち上げたガルムが、のど輪落としの要領でコーナーへと近藤の体を投げつける。すると、運がいいのか悪いのか、近藤の力の抜けた両手がトップロープへと絡まり崩れ落ちる事無くうな垂れる様な状態で磔にされ、それはまさにキリストが民衆に投石され傷付き十字架に磔にされた姿のようであった。

「ぁ……ッ……ふ……」

 微かに残る意識の中、近藤が軽く顔を持ち上げる。それを見たガルムは近藤の髪を掴み、己の顔を近藤へと近づけ大きな笑いを零す。

「おい、準備はいいか? メインディッシュがまだなんだよ」

 既に死に体の近藤へそう言い放ったガルムが対角線上のコーナーへとゆっくり歩き、そのコーナーへたどり着くと踵を翻し照準を近藤へと合わせた。
 そして始まる、ガルムズディナーへのカウントダウンが本人の強い足踏みによって始まった。その足踏みに合わせる様に観衆もチャントで応え、ヴォルテージがあがるにつれガルムの足踏むが早まっていく。

「腹ァ下すなよ!!」

 足踏みが一定のスピードまで上がると、一気に近藤へと駆けて行く。その姿はまさに重機関車。

「ごぁ゛……ッはぁ゛!!」

 その衝突、衝撃は正に交通事故と言うに相応しいもので、ガルムの肩とコーナーにプレスされた近藤の口は大きく開き両目も同じく見開かれ硬直してみせると、次の瞬間に近藤の体から力が一気に抜けガルムへ体重を預ける様にしな垂れて見せる。

「これに懲りたら、あんまプロレスを舐めるんじゃあねぇぞ」

 そんなガルムの呟きも、近藤には届かない。
 体を大きく痙攣させ、夥しい量の鼻血を垂らし、半開きの口からは止め処なく涎が垂れ落ちる。そんな状況の近藤をリングへと投げ捨てたガルムは、まるで埃でも払うかの様に一度二度と手を叩く。
 その姿、正に地獄の番犬と言うのに相応しく、近藤に深い傷跡を残した――――――
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