619 :てみた:2008/12/12(金) 06:31:58
1.



「それじゃあ、よろしくおねがいしますね〜♪」
 入場してきた大巨人の姿を見て、会場を埋め尽くす観客は、思わず息を呑んだ。
 両手に、血まみれになった選手をぶら下げ、若草色のコスチュームを赤茶色に染めた、巨大な美少女。
「……ええと〜、落とし前、きっちりつけていただきますから〜、覚悟して下さいね〜」
 手にした選手を投げ捨てると、勢い良くリングに上がる。
 ただでさえ大きな体が、リングに上がると更に大きく、対照的にリングは小さく見えてしまう。
 そしてそれ以上に、ただならぬ雰囲気に、観客達はリングの上を、固唾を呑んで見守るばかりだった。



 事の発端は、みぎりが他団体へ殴りこみをかけている時の事。
 みぎり不在の団体に、殴り込みをかけてきた選手がいた。
 デビュー時期はみぎりよりも少し前で、その実力はまだ新人と呼べる年齢でありながら、一部団体のエ

ースとも対等に戦えるほど。それくらい、才能に恵まれたレスラーだった。
 だが、いくら才能があっても新人は新人。新女ほどの層が厚い団体ならばいざ知らず、所属選手も少な

く、一部のエースと海外の提携団体から派遣されてくるレスラーで支えているような団体に、丁重なもて

なしが出来る人材が、余っている筈も無い。
「あっ……くぅっ……!!」
 試合が始まって5分もすれば、勝負はワンサイドゲームの様相を見せ、面白いくらいに技が決まり始め

る。
 相手に選ばれたのは、中堅としてもそれなりの経験を積んだ保科。相手の攻撃を受ける事に関しては定

評のある彼女も、縦横無尽の空中殺法には対応できないのか、翻弄されるままに攻撃を受け続けてしまっ

ている。
 動きの早さは当然として、時々訪れるチャンスにも、非力な彼女では有効な攻撃を行う前に逃げられ、

仕掛けた技は返される。純然たる才能の差がそこにはあった。
「…………この程度なの?」
 シャイニングウィザード一閃。保科をマットに倒すと、呆れたようにその姿を見下ろし、フォールもせ

ずにつまらなそうな顔を見せる。
「もう少し、強い選手がいるって聞いたのに、これじゃ、わざわざ来た意味無いじゃない」
 殴りこみに行く経験が乏しいから、予想外の圧勝に戸惑っている事や、自分なりの考えもあるのだろう

が、その態度は生意気にも程があるもので、観客の顰蹙を買うには十分だ。だが、いつも試合をしている

会場は、もっと大きく、人の入りもずっと多い。こんな、空席がちらほら見えるような会場で試合をする

事など、経験が無かった。
 だから、気が大きくなっているのかもしれない。
「んっ……ああっ!!」
 保科の体を踏みつけ、それでフォールしてしまう。もっと強い選手を出せと言うアピールなのだろうが

、舐めきった態度には違いない。
「こんな団体、私一人で十分潰せるわ。次は、もっとマシな相手を出して来なさいよ」
 スリーカウントを終えると、保科の体を蹴り飛ばし、さっさとリングを降りてしまう。
「…………退いてくれます?」
 拍子抜けする圧勝に、不機嫌なままリングを降りると、この団体の所属選手達に道をふさがれた。キャ

リアでは、ずっと上の先輩達だが、今更怯むわけも無く。圧勝で試合を終えた後と言う事もあって、ふて

ぶてしいまでの態度を崩さない。
「お前っ……!!」
 その態度に、食って掛かろうとした所で、道を塞ぐもう片方に抑えられ、強引に道を空けさせられる。
「何なんです……?」
 わざわざ、道を塞いでまで、言いたい事があるのかと思えば、一人は今だ、沈黙を守っている。流石に

、その態度には不気味ささえ感じてしまうが、しかし、それほど気には止めない。
「何でも無いなら、通りますけど?」
「…………それも、運命だから」
 ポツリと、囁かれた言葉の意味が分からず、何が何だか分からない。立ち去ろうとしていた足を止めて

、怪訝な顔で振り向くが、そこに声の主はいない。リングの上で、倒れたままの保科を介抱していた。
「意味が分からないわ……相手をしてくれるってわけでも無さそうだし」
 少なくとも、今日の相手よりは強そうだから、試合をすれば今日よりは楽しめただろう。負けるとは思

っていない。
「運命だか何だか知らないけど、まとめて相手してあげるわ」
 その時の武藤めぐみには、これから襲い掛かってくる、『運命』の正体など見当も付かなかったが、た

だ、本当に運命としか言えない、数奇な展開を辿る事になる。
 そしてその運命は、翌日のスポーツ新聞の一面から幕を開けることとなる。

620 :てみた:2008/12/12(金) 06:33:39
2.


「何のつもり……?」
 リングの上で、みぎりを睨み付けながら、異様な光景に息を呑む。
 相手は両手を血に染めて、乾いてベタつくそれを煩わしそうにしていた。
(……鼻血ってわけでも無さそうだけど……いくらなんでも量が多いし……)
 殴り込みをかけてきた、普通よりもかなり大きな選手への話題性作りの演出なのだろうか。それにしてはいくらなんでも悪趣味すぎる。
「何のつもりは、こっちの台詞ですよ?」
 時間が経てば分かる、赤茶色は、絵の具や血糊では絶対に出ない色だ。鼻をつく鉄錆の臭いも、試合中に何度か嗅いだ事がある。
「あら〜、それとも、落とし前って意味、間違ってましたっけ〜?」
 めぐみには、なぜそんな事を言われるのか、意味が分からない。ただ一つ分かるのは、目の前にいるのが、試合をするつもりのレスラーではない、何かであると言う事だけだ。
「知らないわよ、そんな事」
 リング下を見れば、めぐみよりもキャリアが上の選手が2人、伸びている。実力よりも口の方が立つ、それ程強い選手ではないが、これでも荒事が日常茶飯事のプロレス団体で生き抜いてきた人たちだ。
 何があったかは知らないが、その2人を仕留めたのであろうみぎりには、疲れが見られない。頬に小さな引っ掻き痕が残っているくらいで、それくらいしか抵抗の跡がない。
「そうですね〜、困りましたけど〜」
 首を傾げながら、みぎりが近付いていくと、二人の身長の差もあって、めぐみからはみぎりの顔が良く見えない。それくらい、近くまで近付いても、みぎりからは何のアクションも起こしては来なかった。
「…………別に潰しちゃっても、いいんですよね?」
「……は?」
 頭に、痛みが走ると共に、浮遊感を感じて浮き上がる。
「っ………このっ!!」
 投げ飛ばされる前に出た蹴りは、本人にとっても無意識のものだったが、天賦の才と言うのだろうか、みぎりの顔を完璧に捉えていた。
 だが、みぎりの取る行動には、微塵の遅れも生じさせる事は無く、そのまま力任せに、マットへと背中を打ち付けさせられた。
「くぅっ!!」
「さあ、どうしてくれましょう〜?」
 いくら体勢が悪くても、まともに入った蹴りに顔を歪める事もない。だが、ただ一点、口元だけが不自然に歪んでいる。
「こんな事でっ……」
 素早く立ち上がると、遅すぎるゴングを聞きながら構えなおす。髪を掴まれて投げ飛ばされたときに、トレードマークのリボンが外れ、解けた髪を鬱陶しげにかきあげる。
「馬鹿力だけで、いい気にならないでくれるっ!!」
 意表を突く様なめぐみのローリングソバット。みぎりの体をよろめかせながら、自分よりもはるかに目方のある相手に、一歩も引く様子を見せない。

621 :てみた:2008/12/12(金) 06:35:17
3.


「それが、どうしました〜?」
 めぐみの技が決まった。そう誰もが思った直後に、みぎりの手がめぐみの足を掴む。
「っ……頑丈ね……」
 十分、体の弱い所を狙って蹴ったはずだ。みぎりの動きがそれ程早くも無いので、外したなんて言う事は無いだろう。
「いえ〜、それほどでも〜」
「っ……面白いじゃないっ!!」
 下手な小細工をしてくるタイプにも見えないし、足を掴んだまま、馬鹿力で握り潰すように締め付けてくるだけだ。これから、何かをしようとしているのかもしれないが、めぐみにはそんな事、関係ない。
「ほらっ!!」
 軸足を振り上げ、みぎりの顎を蹴り上げる。
 並外れたバランス感覚、瞬発力を持っていなければ、やろうとも思えない反撃だが、みぎりの怪力に触発された今のめぐみにとっては、簡単な事だ。
「んっ……」
 流石に、みぎりも手の力を緩めてよろめく。
 その隙に逃げ出すと、素早くコーナーに上り、みぎりの顔に狙いを定めた。いつもより的が高い分、コーナーの上からなら狙いやすい。
「行くわよっ!!」
 コーナーを蹴ってのミサイルキック。大雑把に見えるそれで、的確にみぎりの顔を狙い打つ。
「んっ……!!」
 みぎりの手が、遅れてめぐみの体を捕まえようとするが、その時にはもう、みぎりから離れて次の技に移っていた。
「遅いっ!!」
 みぎりの腕を掻い潜って接近すると、体格差を物ともせず、エルボーで攻め立てる。動きが早く、狙いも的確。体格差を補って余りある猛攻。
 …………に、見えた。
「………それで、どうしました〜?」
 みぎりにとっては、追いかけるのが大変な相手が自分から飛び込んできてくれる。ただの、美味しい状況に過ぎないのだろう。
「え……っ……ぐっ!!」
 両腕をみぎりの背に回して、力強く締め付ける。
「あっ……がっ……な……っ!!」
 ベアハッグ。それも、めぐみのエルボーを受けながら強引に捕まえたので、めぐみの両腕は自由なままだ。締め付けも緩い。
 しかし、それは、みぎりの怪力を考えなければの話だったが。
「……効かないんですよね〜、全然」
 最初は、強く抱きしめる程度だったベアハッグを、強引に腕の力だけで締め付けて、いつしか、めぐみの体が持ち上がり、抱え上げられている。
「離せっ……!!」
 めぐみも、肘を打ち付けて逃げ出そうとするが、何度殴っても、まるで無機物を殴っているように反応が薄い。
「今、自分の言った事を謝るなら〜、許してあげてもいいですよ〜?」
「な……何の……事よ……」
 めぐみには、何の事だか分からない。むしろ、みぎりの腕の中から逃げる為に必死で、記憶を掘り起こしている余裕が無いと言うほうが正しいか。
「分からないんなら、それでいいんですけど〜…………でも〜」
 締め付けが強まり、めぐみの体が反らされて、顔色も真っ青に変化していく。
 強烈過ぎる締め付けは、めぐみの呼吸さえ阻害し、苦しさと相まって、すぐに青かった顔が紫色へと変化する。
「………………………………試合で死んでも、事故なんですよね〜?」
「ひっ………ぐぅ………」
 ピチャ……ピチャ………
 めぐみの体から力が抜け、失神。そして、失禁まで。
 そこには、ベアハッグで窒息失神させられた、哀れな天才姫の姿が……

622 :てみた:2008/12/12(金) 06:36:51
4.

「………何、寝てるんですか〜?」
 否、窒息失神させて、試合が終わると思われた直後、みぎりが締め付けを解き、めぐみの腹を思い切り、ニーリフトで蹴り上げた。
「うぶっ……ぅっ……ぐっ……」
 腹の奥からこみ上げてくる苦しさに、落ちていた意識が引き戻される。力の無い足では体重を支えられないが、倒れないのはみぎりが体を支えているから。
「まだ、そのくらいで寝させてあげませんよ〜?」
 倒れさせないのは当然、次の攻撃が控えているから。
 手を離すと同時に、身を低くすると、めぐみの体目掛けてショルダータックルと言う名の体当たり。
 みぎりの体重全てを乗せた馬鹿力が、めぐみの体を軽々と突き飛ばす。
「ふぐっ……ぅっ!!」
 今度こそ、マットに倒れると、そこでやっと、めぐみにも、何が起きたのかが分かった。
 リングにある水溜りと、荒すぎる自分の呼吸、そして、体が引き裂かれそうな痛み。
「あっ……あぁ………」
 羞恥と怒りと、言い表せない感情で、顔を真っ赤に染めながら、すぐに、歯を食いしばって立ち上がる。
 内腿を伝う水滴が不快だが、みぎりはまともではない。寝ていては、どんな攻撃が来るか分かったものじゃなかった。そして、何より。
「許せない……」
 試合を止めようとやってくるレフェリーを追い払うと、はっきりとした敵意を持ってみぎりを睨みつける。
「何が、許せないんですか〜?」
 しかし、みぎりには、怯む様子さえ見られない。元々、怯ませる為に睨み付けた訳でもないが、その態度はめぐみの怒りに更に火をつけてしまったようだ。
「所詮、力と頑丈さだけ……」
「はい〜?」
 呟くようなめぐみの言葉に、何を言いたいのか分からず、首を傾げる。
「…………そんな相手になんて、負けられないのよっ!!」
 体を低くして、超低空のドロップキック。とにかく、みぎりに捕まらないよう、素早さを生かし、全身でぶつかる事で体重の差を克服しようとする。
「あら〜……?」
 みぎりの体が揺らいで、膝を突く。どんな攻撃も平然と耐えていたみぎりの、初めてのダメージらしいダメージを確認したときにはもう、めぐみは次の技に入っていた。
「それにっ………私は、負けられないのよっ!!」
 膝立ちのみぎりへの、シャイニングウィザード。助走が足りない分、瞬発力で補って、顔面を叩き潰すように蹴りつける。
「………んんっ………それで?」
 だが、決まったと思っためぐみの目に飛び込んできたみぎりの顔は、苦痛に歪んではいない。むしろ……
「ふぶっ……!!」
 地面に降りる前に、飛んできた張り手がめぐみの顔を張り飛ばし、脳が揺れるような衝撃に、尻餅をつく。
「え……あ……」
「この通り〜、馬鹿力と頑丈さだけが取り柄なので〜」
 効いていないはずは無い。どんなに頑丈でも、人間だから限度があるはずだ。
 そんな思いは、いつの間にか、効いていないはずがない、そうであって欲しいと言う願望に替わってしまっていた。

623 :てみた:2008/12/12(金) 06:38:38
5.

「くっ……効かないわけ、無いっ!!」
 効かないわけが無い。それが事実でも、実際に効いていなかったとしても、どちらにしても今のみぎりの態度は認めるわけにはいかない。
「ええ〜、本当は、痛いですよ〜」
「っ、舐めるなっ!!」
 みぎりの態度が、その余裕が改められない限り、何を言われても、苛立ちが晴れることは無いだろう。
 マットを蹴ると、みぎりの体を蹴りつける事で高く飛び、みぎりの頭を太ももで挟み込む。
「いくら頑丈でも……これならっ……!!」
 倒してしまえば、いくらでもやりようはある。華麗な技とは言い難いが、コーナーの上から飛び上がって踏みつければ、それだけで威力は計り知れないだろう。
 本気ではなった攻撃を、軽く耐え切るような相手に動揺したのか、どうやって攻撃を加えるか、そればかりに考えが向いてしまっている。
「倒れなさいっ!!」
 フランケンシュタイナー。勢いをつけ、みぎりを倒そうと体を反らす。
「………えっ!?」
 だが、みぎりの体はマットに根を張ったかのように動かず、次の瞬間。
「頑丈さと、怪力だけでも〜、そこを見込まれて拾っていただいたので〜」
 めぐみの顔を、みぎりの手が多い尽くす。
「これだけでも、十分なんですよ〜♪」
 グシャッ……
 投げようとしていためぐみの頭が、マットに叩きつけられている。
 実際には、そんな音は聞こえなかったが、その光景を見たら、誰もが同じ音を頭の中に浮かべただろう。
「…………たった一発で伸びちゃったら、だらしない、ですよ〜?」
 顔を掴んだまま、みぎりの手に力が入る。
「うぅっ……あっ……くっ!!」
 ギチギチと、顔に食い込む指の痛みに加え、頭だけでぶら下げられる苦しさから、みぎりの腕を掴んで、相手の体を蹴りつけて抵抗した。
「忘れてるみたいなので~、教えてあげますね〜」
 めぐみをぶら下げたまま、のんびりとした喋り方で語り始めるが、めぐみにとっては、1秒刻みで苦しさが増す状態だ。聞いている余裕はあまりない。
「貴女が〜、うちの団体を馬鹿にしてくれたおかげで、今、大変なんですよね〜」

624 :てみた:2008/12/12(金) 06:40:05
6.

 事の発端は、めぐみが殴りこみに来た翌日。新聞に載った武藤の一言だった。
 それは、プロレスラーと言う職業を考えればたいした事の無い、何気ない一言だったが、現在躍進中の弱小団体に殴りこんだ、最大手団体の選手の台詞として見た場合、話題性が十分ある内容だった。
 こんな団体、自分一人で潰せる。誰が来ても負けない。
 実力が大した事の無い選手の相手をさせられ、物足りなかったから出た言葉だったが、それを面白がったメディアが騒ぎ立て、いかにも、一触即発の抗争が起きそうな雰囲気を作り上げてしまった。
 これだけなら、めぐみに非は無い。
 だが、みぎりの団体にも都合があり、選手数も新女ほど多くない為融通も利かない。そんな事情も知らないめぐみが、取材で尋ねられるままに、口を滑らせてしまった。
『別に、逃げても気にしない』『自分の所の選手が潰されるのが嫌ならそれでいい』
 実際に口にした言葉は、ひょっとしたらもっと違っていたのかもしれない。しかし、その主旨がある一言を発するだけで十分だ。
「そんな……っ…………理由で…………」
「はい、そんな理由ですよ〜?」
 当然、他にも理由はある。だが、その理由を思い出しそうになるだけで、みぎりの握力が更に強められた。
「ひぐっ………ぁ………あぁ……っ!!」
「社長が苦労して作った団体を、そんな言葉で傾けちゃうんですから〜、凄いですよね〜」
 プロレス団体だってしっかりとした予定がある。たった一人の空気を読まない言葉や、挑発に、はいそうですかと乗る事はできない。
 だが、面子を潰されたままで引き下がれないのも、プロレスと言う商売だ。
 押さえていた会場の定員を大きく下回るチケット販売数。グッズの売り上げの低下、海外団体との契約。予定していた新人テストへの参加者の減少。いい返事を貰えそうだったフリーの選手の移籍話の白紙化。
 色んな理由が重なって、苦しい経営を切り盛りする社長の心労は見ていて痛々しいものだった。
「わたしも〜、空気が読めないって言われるんですけど…………今は、本当に、空気を読まないでいようかなって、思っちゃいますよ〜?」
「なっ………!?」
 めぐみの体が持ち上げられると、一瞬、何をされるか分からなかった。
「えいっ!!」
 頭と足を掴み、立てた膝の上に叩きつける背骨折り。
「ぐぁっ……ぁっ!!」
 それを、連続で。
「ひぐっ……ぅあっ……ああっ!!」
「手加減なんて、してあげませんから〜」
 更に持ち上げると、今度はボディスラム。高い所から、加速をつけて叩き落す。
「ひっ………っぐぅっ!!」
「まだですよ〜……んっ……えいっ!!」
 更に、持ち上げて投げ飛ばすと、直後に、いい物を見つけたとばかりに、みぎりの目がある一点を見つめた。
「はぁつ……あつっ……ああっ……」
「これで超高層なら〜、もっと高いと、何て呼ばれるんでしょうね〜?」
「えっ……ひっ……やっ……!!」
 めぐみにも、みぎりが見ているものが何かは分かる。そして、やろうとしている事も。
「やめっ……そんな……あっ!!」
「暴れると、怒りますよ〜?」

625 :てみた:2008/12/12(金) 06:41:42
7.

 逃げ出す為に暴れていためぐみの額に鈍い痛みが走る。
 コーナーに叩きつけられたと、分かったときにはもう、みぎりの肩の上だった。
「え……っ……あぐぅっ!!」
 アルゼンチンバックブリーカー。てっきり、鉄柱の上から投げ飛ばされると思っていためぐみには、予想できなかった痛みだ。
「そうですね〜、このまま、落としたら……流石に、死んじゃうんでしょうね〜」
 一歩一歩、ロープを登りながら、コーナーの上まで登りきってしまう。
「やめて……いや……いや……そんな……いや……」
 めぐみの顔は恐怖で引きつり、その高さの恐怖からか、瞬きも出来ずにリング外のマットを見つめる。
 衝撃を、殆ど吸収してくれないそのマットに、ここから、二人分の体重をかけて首から落とされる。
 考えられる結果は、ただ一つしかない。
「や……死ぬ……それ……だめ……いや……だめ……だめよ……そんなの……いや……死ぬ……だめ……いや……だめ……」
 ガチガチと震える歯と、壊れたテープレコーダーのように繰り返される言葉。股間からは、恐怖で失禁までして、見開いた目は、瞬きもしなかったからか涙を溢れさせながら真っ赤に充血してしまっている。
「こうなったのも〜、貴女が社長を………………って、言うからですよ〜?」
 みぎりの言葉は、めぐみにだけ聞こえるような声で。これだけ聞かせるためにバックブリーカーなんて技を使ったのかと言うくらい、誰にも聞かせない、冷たい声で呟いた。
「あっ……あれはっ!!」
 なぜ自分がこんな目にあうのか、それが分かった時にやっと、めぐみの口から意味のある言葉が零れ出そうとした。
「……問答無用、ですよ〜?」
 そのまま、デスバレーボムは流石にしない。だが、担ぎなおすと宣言どおりに、ボディスラム。足場が悪いので、腕の力で投げ捨てるだけだが、それでも十分馬鹿らしい威力だ。何より落差が馬鹿げている。
「ひっ……ぃぎぃいっ!!」
 瞬時に、痛めつけられた背骨がバラバラになるような、激しい痛みと後頭部を打つ痛みで、全身が痺れる。受身など、こうまで垂直に叩きつけられたら取り様がない。
「そうそう、これも、忘れちゃいけませんね〜」
 更に、めぐみの足目掛けて、飛び降りてのフットスタンプ。太ももを、みぎりの足の裏がえぐるように踏みつけた。
「あぎっ……ぃ……あぁ……」
 激痛に激痛が重なると、限界を超えためぐみの体から、ゆっくり力が抜けて、意識が薄れていく。踏みつけられた足は時間が経つにつれて、踏まれた部分が赤黒く、変色していった。
「これで、勘弁してあげますけど……次は、潰しますよ〜? 分かってますね〜?」
 めぐみをリングに押し上げたとき、力が入っていないからか、その足が、変な方向に曲がったように見えた。それが折れているかなのか、確認する前に、真っ直ぐに戻ったので、実際にどうなのかは分からない。
「さあ、フォールですよ〜。早く、カウントしてくださいね〜♪」
 リングに戻ったみぎりが、めぐみの体を踏みつける。小さく震えるが、それ以上動く様子は無い。
「この程度の団体なら〜、わたし一人で潰せちゃいそうですね〜」
 痛みの残る頬を押さえながら、いつもなら、弱気の一つも出しそうなくらい技を受けた体で、のんびりと呟く。
「別に〜、怖いなら……好きにしてくれていいですよ〜?」
 怒りに任せて乗り込もうとしたみぎりに、ある人が教えてくれた魔法の言葉。それも忘れずに。
「誰が来ても、同じ結果になっちゃいますから……どうぞ、逃げてください〜」
 言いたい事を言ったみぎりが引き上げると、慌てて、めぐみが回収される。
 傷は深いが致命的ではない。しかし、みぎりが掴んだ場所にはくっきり、その手形、指の形の痕が残っていた。
動画 アダルト動画 ライブチャット