232 :名無しさん:2009/03/04(水) 00:17:06
「…ああ…はぁ、はぁ…」
ここは三重サンシャインアリーナ 巡業最終日のセミファイナル。
コーナーサイドでは、斉藤彰子が荒い息をしながらも、ロープにす
がって何とか立っていた。がしかし、体は汗まみれで右瞼は腫上が
り、口元の涎も疲労のせいか粘性を帯び糸を引いている。
一方リング中央では、「どうした?もっと攻めてこいよ。」「倒れ
そうだぜ。意識あるか?」とニヤニヤしながら、アジアヘビー級チ
ャンプの村上千秋が挑発していた。千秋のセコンドである姉の千春
にいたっては、「あーあ、退屈だ。」と脇で雑誌を読んでいる始末

斉藤は気を失いかけながらも、「(……どうしてこんな事に…この
状態からどう抜け出せばいい?)」と考えをめぐらせていた。

233 :名無しさん:2009/03/04(水) 00:19:16
きっかけは3ヶ月前のことだった。
斉藤が所属している団体は、旗揚げして6年目にもかかわらずEX
・ファイナルリーグを制し、海外団体のベルトを数多く有してい
る国内最大の団体である。が、最古参の一人である斉藤はいまだ
ベルトを獲得した事が無く、口さがないファンからは「永遠の青
コーナー住人」とか「ミスかませ犬」「KO負けの芸術家」などと
呼ばれており、社長も実力を認めつつも、泣く泣く彼女をスキル
の「魅惑」「地味」を生かした筋肉系グラドルとして、今まで売
り出して来たのだ。
そんな彼女に転機が来た。新女の村上姉妹が殴り込みに来たのだ。
しかも2,000AP払えば、アジアヘビーのタイトルマッチも組んでく
れるらしい。一応裏を取ると、千秋は姉による妨害と前チャンプ
の油断を誘って丸め込みフォールをしたに過ぎず、タイトル防衛
はほぼ不可能とのこと。新女も「すぐ返すよりも小遣い稼ぎと話
題・交流の機会を」とのことだ。

234 :名無しさん:2009/03/04(水) 00:21:06
「ならば3ヵ月後で。こちらは斉藤を。」と返答したところ、相手
は快諾した。
斉藤はここでこそ目立たないが、他団体ではエース級であり村上千
秋との体格差も大きい。千秋は技も水準並みであり、不意のロープ
バウンド裏拳さえ気をつけていれば心配要らない。姉の妨害も、セ
コンドにソニックや寿を付ければ万全だろう。そこで社長は、彼女
の誕生日に地元で大々的にタイトルマッチを行い「負け犬」の汚名
返上を図った。勿論彼女も「あ、ありがとうございます。社長のご
期待に沿えるよう、がんばります。」と満面の笑みで答えた。
そのとき二人は気付いていなかった。この戦いはAP目当ての参戦だ
けではなく、老舗たる新女の駆け引き、嫉み、そして実力を思い知
らされる事となる……。

235 :名無しさん:2009/03/04(水) 00:22:34
序盤は斉藤の優勢に見えた。斉藤は皆にいいところ見せようと緩急
をつけた攻撃をし、千秋は何度も弾き飛ばされていた。が、斉藤は
焦っていた。手ごたえがあまり無いのだ。一方千秋は軽口を叩きな
がらも、斉藤の一挙手一投足を睨む様に見ている。
「この一撃を受けてみろっ!」苛立った斉藤が早々に飛燕脚を繰り
出し、千秋は腕でガードしたものの、姉のいるコーナーまで吹っ飛
ばされた。
「千秋、生きてるか?」「やべぇ。仕込みプロテクターしてても死
ぬ。」「でもまあ、八島の姐さんの特訓そのままじゃねえか。」「
ああ、足向けて寝られねぇ。それじゃ計画どおりいくか!」

236 :名無しさん:2009/03/04(水) 00:24:35
様子を見守っている斉藤に一言「地元へのサービスはこれで終わり
。そろそろイクか?」と余裕の挑発。斉藤は焦り気味の掌底を放っ
たものの難なくかわされ、逆にチンにナックルパートを叩き込まれ
フラフラと後退し、ロープの反動でよろめき出た。裏拳に備え前か
がみになったものの、千秋が実際放ったのは強い踏み込みからの打
ち上げるようなラリアート。「アグハァッ!」斉藤は永源以上に大
量の唾液を吐きながら一瞬つま先が50cm近くリングから離れ、そし
てダーン!と頭からマットに叩きつけられダウンした。会場では、
誰もが流れが変わったことを理解した。

237 :名無しさん:2009/03/04(水) 00:27:06
何とか立ち上がったものの頭を打ったせいかトローンとした表情の
斉藤。千秋はその隙を逃さず、「投げ」「飛び」「打撃」の小技を
斉藤の顔面・腋・膝裏・素足の指など鍛えにくい箇所に打ち込んで
いった。「グッ」「ウッ」「アグッ」「ウァッ」「グエッ」。顔面
が歪み、頬は潰れ、乳房は変形、腰は落ち、足はぐらつき、目の焦
点が合わない。攻撃自体は軽いものの、レガース等に樹脂を仕込ん
でいるせいか、ナマクラ刀で殴られるような衝撃を受けている。

238 :名無しさん:2009/03/04(水) 00:29:08
 しかし、「まだ倒れるわけにはいかないっ!」ノーモーションの
飛燕脚を、千秋の肝臓の部位に叩き込んだ。これで流れが変わると
思った瞬間、薄ら笑いを浮かべた千秋が立っていた。「全然効かね
えな。(ガッ…死ぬ、マジ死ぬっ…)」種明かしすると、蹴りの位置
をずらし、八島に鍛えられた腹筋に力を入れ、しかもバックステッ
プしたのだ。にもかかわらず、吐き気がするほど痛い。精一杯余裕
の表情を浮かべたに過ぎない。焦っているせいか斉藤はその事に全
く気付かず、侮っていた相手に恐れを抱いてしまった。解説席にい
る当団体の選手兼コーチである上原などは「今のあの子(斉藤)には
実力は兎も角、度胸も覚悟も足りないようね。」とため息をついて
いる。

239 :名無しさん:2009/03/04(水) 00:32:05
 「ウワーッ!」斉藤は恐れを振り払うかのようにロー・ハイキッ
ク、本来なら反則の正拳突きを繰り返し、千秋は防戦一方だった。
千秋は生きた心地がしなかったけれども、細工レガースのお陰で両
手足が痺れるに留まった。むしろ逆に斉藤の方が拳も脚もかなり傷
めてしまった。「ハアッ、ハアッ、ハアッ、ハアッ」疲労とダメー
ジの無い(ように見える)千秋への恐怖からか、斉藤は滝のような汗
をかいている。「駄々っ子だな、まるで(あのラッシュはもう勘弁
してくれよ)」と斉藤の腕を取り、姉のいるコーナーへとハンマー
スローで投げた。コーナーに背中からぶつかり体から力が抜けたよ
うに膝が崩れ、そのままうなだれ肩と腰を落とし、足裏を突き出す
ようにして座りながらのダウン。しかし千春は手を出すところか、
見向きすらしない。斉藤のセコンドであるソニックや寿は歯噛みし
ていた。これで千春が手を出してくれれば応戦し、斉藤を休ませる
事ができる。が、こちらから手を出す事は団体と斉藤の立場上まず
い。二人に出来る事はアドバイスと声援を送る事ぐらいだが、斉藤
の耳にはもう届いていないらしい。コーナーで背もたれダウンして
いる斉藤に、容赦の無い顔面ウォッシュを食らわせた。「…ブフェ
ェ……」千秋を前にして鼻血を垂らしながらうつ伏せダウン。嫌味
ったらしく「アタシの靴を舐めな」と言うと、「…倒れるまで闘う
…勝敗など二の次っ!」と千秋につかまりながらも立ち上がろうと
していた。彼女が完全に立ち上がるまで待ってやりながらも、「い
やおまえ、何度もダウンしてるから」と言い放ち、両肩をポンと押
した。足元がまだふらついている為、そのままロープより掛かる形
になった。

240 :名無しさん:2009/03/04(水) 00:36:22
冒頭に戻る。
千秋は口撃を続けながらも、作戦の予想外すぎるほどの大成功を喜
んでいた。八島に対する感謝とギャラのアップ、怒鳴るだけの新女
社長を見返してやれる。あと少しで、あと少しで。
 対する斉藤はかろうじて立ち上がったものの呆然としているのみ
で、どうすればいいか分らず動けないでいる。動きがあるのは髪か
ら滴り落ちている汗のみだ。そのとき、セコンドがアドバイスを叫
んでいるのに初めて気付き、それに従って基本であるガードを固め
ての細かい攻撃をコツコツと繰り返し始めた。が、両手足を痛めて
殆ど使い物にならず、単に千秋いや新女の生贄になるだけだった。
千秋は近い将来へと向かって「自分の非力さを嘆きな!!」と必殺
の裏投げをかけた。けれども焦ったせいか斉藤の大量の汗のせいか
、胴着だけが脱げ、斉藤の背中を打ち付けるに留まった。「ケッ、
運のいい奴だぜ。」髪を掴んで立たせようとしたら、観客から歓声
が沸いた。千秋が何事かと思えば、濡れた為サラシから斉藤のかな
り艶めかしいボディラインがくっきりと浮き出ているのを会場の大
画面で映されていたのだった。「くっだらねえ。今度から負け犬な
らぬ牝犬と名乗ったらどうだ?」そう言いながら腹に3発ナックル
を入れたが、強い腹筋に守られ効果が無い。

241 :名無しさん:2009/03/04(水) 00:38:57
斉藤は朦朧としながらも「この日のために鍛えてきたんだ。鋼の肉
体を侮るな!」と精一杯の反抗。「(やばい。非力を気付かれる前
に仕留めないと)そうかよ、それならこいつはどうだ?」と再びナ
ックル。しかし今回は、中指の第一関節をヘソに突き刺した。「
ウグゥゥゥ」と声を上げ胃液を嘔吐しながら前のめりになった瞬
間、「きったねーなー」と言いつつライガーボムを見舞われ踏み
つけフォール。斉藤は「グッ ま、だ、だぁぁぁ」と半分失神し
ながらも、左足の指5本をロープに伸ばしてブレイク。それでも
斉藤は「立てば、立てさえすればまだチャンスは…」と起き上が
ろうともがいた。震える腕で体を支え、千秋に向かって瞳を見開
いていた。だが、その千秋の像でさえもはやピンボケにしか映ら
なかった。無情にも中央にまで引きずられコブラツイストを掛け
られた。

242 :名無しさん:2009/03/04(水) 00:41:22
 斉藤は泣いていた。情けない・恥ずかしい姿を映された事もそう
だが、自分の地元で手も足も出ずに負けること。またタイトルを逃
してしまうこと、会社のAPを無駄にしてしまうこと、そしてなによ
り社長の期待に応えられないことが何より悔しかった。しかも相手
が格下であり、反則も使われずに惨めに倒されるとは。戦うどころ
かもう心が折れてしまっている自分が許せないでいた。「ウッ、ウ
ゥッ。ヒック、グスッ…」
声を押し殺しているつもりでも泣いている声が聞こえてくる。千秋
は自分が弱いもの虐めをしているような気分になり、さっさと終わ
らそうとしたところ、
「彰子ォ!もういい、もういいんだ。ギブアップしろ!」リングサ
イドで叫んだ人間がいた。千秋がその声に顔を向けた。この団体の
社長だ。その瞬間千秋は、斉藤に対し嫉みと敵意を掻き立てられた
。新女では強い事、勝つ事、稼ぐ事だけを求められ、団体内の自分
の地位も低いながらも戦いの中から勝ち取っていったものだった。
それでも碌でもない生活から足を洗わせてもらい、居場所をくれた
新女の社長に対し感謝していた。一方のコイツ(斉藤)は、自分程度
に完膚なきまで叩きのめされ、団体に大損させているにも拘らず他
社とはいえ社長から心配されている。

243 :名無しさん:2009/03/04(水) 00:43:46
 「ブッ壊してやる」そうつぶやくとコブラを解き、サラシを掴み
ながらサンドバックのごとく乱暴に扱った。斉藤は際限なく打たれ
、そして倒された。
「タオルを投げろー」と野次も飛び交う。もう斉藤の瞼は腫れて垂
れ下がり、両目の周りと頬は既に痣に。鼻血は垂れ、満足に口を聞
く事も唾を飲み込むこともできない。肋骨の真下を殴られ、そして
ヘソに膝を思い切り打ち込まれ「…あ、う、うぇっ」と顎が出たと
ころを掌底アッパーが一閃。斉藤は目の中に白光の爆発を見た。
グワシャッ!! 嫌な音がして「げぼぉっっ!」と斉藤が再び唾液
を吹き上げながら宙を舞い、自分の汗と涎と涙で汚れたマットに叩
きつけられた。大の字になってもう既に白目を剥いており、顔から
足指先まで己の涎と汗で濡れ、ライトによりキラキラと乱反射しな
がら全身を痙攣させている。
 レフリーや斉藤側セコンドのみならず、千春も「勝負は付いた、
もう止めろ!」と怒鳴っていた。観客席も悲鳴を上げている。

244 :名無しさん:2009/03/04(水) 00:45:41
「んじゃ、これでフィニッシュにしてやるよ。」とぐったりとして
いる斉藤を手荒に起こし裏投げの体勢に構え、「泡吹いてノビてる
姿を見てもらうんだな!!」と叫ぶやいなやマットに叩き落した。
「……ゴフッ……」斉藤は仰向けに万歳の恰好になってピクリとも
していない。千秋は上機嫌に言った。「レフリー、フォールも10カ
ウントも必要ねえよ。」
斉藤は一瞬動いていないように見えたが、腋の下と裸足の親指だけ
がピクピクと痙攣している。レフリーはすぐに斉藤の呼吸を確かめ
た。意識は兎も角、「…うぐっ、ぶふっ、ごほっ…」と咳き込み始
めたが、泡を大量に吹いている。彼女は意識が遠のく中で自分の名
を呼ばれた気がしていた。

245 :名無しさん:2009/03/04(水) 00:47:28
そしてゴングが鳴り響く中担架を待つ間、アジアヘビーチャンプ村
上千秋の防衛戦勝利の名乗りを挙げた。横では倒れて気絶したまま
の斉藤を、社長をはじめドクターが介抱し選手達が心配そうに見守
っている。上原は一部の選手達が千秋に掴みかかろうとするのを必
死で抑えている。お約束としてレガースなどの凶器は見つからなか
った事になっているのだし、斉藤がより惨めになるからである。

246 :名無しさん:2009/03/04(水) 00:49:43
千秋は「凶器すら必要無いなんて、おまえ全然つまんねーよ!地元
で情けねぇ姿を見てもらえてよかったなぁ!」と担架で運ばれてゆ
く斉藤を嘲笑した後、計画の最終段階として大きく息を吸い込んで
「新女を舐めんじゃねぇぇぇ!!!」と絶叫した。
「古参がこの程度なら、チャンプもたかが知れている。ウチのベル
トはそんなに安いもんじゃあねぇ!海外のベルトだって金で買った
んじゃねーか!?」と社長に向かってアピールする。会場の空気は
完全に千秋のものだった。「これが目的か。」社長は千秋の目を見
据えながら思った。老舗だが業界2位に甘んじている。そのルサン
チマンを読みきれなかったのが失敗か。ウチの声望を下げ新女の名
を上げる。実力を示すには、APこちら持ちで風下にたったまま半年
ほど共同開催するしかないか。新女をメインとして・・・それでも
お客様はどう思うだろう?規模を思い切り大きくして混沌な状態に
すれば、道も開けるだろうか?それにしても新女社長:井上霧子、
恐ろしい女だ。私は結局彰子を道化にしてしまった。彰子、すまな
い。

247 :名無しさん:2009/03/04(水) 00:51:38
 社長は怒鳴り返した。「よーしわかった!ウチのベルトとIWWF、
WWCA、TWWAの各ベルトとそっちの貧相なNJWPとアジアのベルトを賭
けて、思い切り派手に開催しようじゃないか!会場の皆様!如何で
ございましょうか!?」
割れんばかりの歓声。村上姉妹も頷いたかと思うと、千春が千秋を
肩車して意気揚々と花道を歩いていった。「(姉貴、両腕と肋骨に
ヒビ入ちっまた見てーだ。頭も朦朧としてきやがった。)」「(千秋
、まだ気絶すんじゃねーぞ。まだ客いるから。しかしよくやったよ
、お前は)」「(へへっ、そう言われたの初めてだよ。)」声の無い
ささやかな姉妹の会話が続いている。

248 :名無しさん:2009/03/04(水) 00:53:10
 この後のファイナル。草薙のIWWF防衛戦は会場では盛り上がった
ものの、翌日のスポーツ紙トップは斉藤が初めて飾った。けれども
その写真は、千秋の言葉どおりに泡を吹いてノビている斉藤の無様
な失神KO負けの姿だった。
この写真の為かこの日の新聞は売り上げもよく、新たなファン層を
開拓できたが、斉藤彰子23歳の誕生日プレゼントは、何度も経験の
あるなかでの彼女にとっての最も無様な「惨敗」の2文字だけだった。
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