463 :オリゼー:2009/04/14(火) 16:13:54
1.

「Оно двигает lass.……К ему делает и щелкает……(動くな小娘……へし折るわよ……)」

「ぐ……ぅ……ッ」

 一体幾らするのか予想すらつかない豪華な装飾が主張し合う社長室。
 その部屋はまさに映画などで目にするような社長室で、相当金をかけたと思わせる空間。
 そんな空間でナスターシャ・ハンが己よりも小さい萌木色の髪の少女の腕を取って組み伏せていた。
 関節の軋みから少女は思わず顔をゆがめるも、その視線は目の前の機能性という言葉をまったく感じさせない大きな机越しから、背もたれの高いオフィスチェアに踏ん反りかえっている男へと差し向けられていた。

「Русский не водит к ей. Выпускать, он. (その子にロシア語は通じないよ。放してあげるんだ)」

 その視線を向けられた男がハンに向かってロシア語で話しかけると、少女は 「な、何を話して……」 と不可解な表情を浮かべ、聞きなれぬ言語に一抹の不安を覚えずにはいられなかった。
 男はそんな少女に目もくれず、少女を捕獲したハンに物腰柔らかい視線一つ投げるも 「Но ...... президент……(しかし……社長……)」 ハンは男の言葉に理解を示さない。
 自分の仕事は社長を守る事、今この少女を解放して少女が社長に襲い掛からないという確証は無いのだからと、厳しい表情を崩さないでいた。

「……Вы выпускаете, оно(……放せと言っている)」

 自分の言うことが聞けないのか、と男の表情が一変する。
 子供をしつけるような生易しいものではない、ましてや上司が部下をしかりつけるものでも無かった。対人間とは思えない、言うなれば人が力で動物を押さえつけ主従関係の上下を知らしめるような表情。
 それを見たハンの表情が瞬時に凍りつき、びくっと両肩をかすかに持ち上げて唇を小刻みに震わせると、その震えを強引に押さえ込むかのように口を真一文字に結ぶ。

「Там...... Там не будет отговорки(も……申し訳ありませんでした)」

 ハンは男に頭を下げ、ゆっくりと少女を解放した。
 とは言っても、いつ少女が目の前の男に飛び掛ってもいいようにそれなりの警戒心だけは残しているようで、少女の背中にぴたりとその身を寄せていた。

「すまないね菊池さん。女子プロレス界ジュニアの象徴とも言われる貴方にこんな非礼をしてしまって……私のボディーガードは聊か心配性のようだ」

「く……ッ……そんな見え透いた事を言って……ッ!!」

 関節を極められていた方の腕を摩りながら、男の言葉に食らいつく。

「……いやいや、それは誤解だ。私が彼女に放せと言わなければ、摩っているその腕は今頃折れていたのだがね……」

 「それに、金のかかっていない所で貴方を蹂躙するだなんて勿体無い事するはずが無いでしょう? くっはっはっは」 男の腹の底を震わせる笑い方は実に耳障りなものであった。

464 :オリゼー:2009/04/14(火) 16:15:40
2.

「もった―――ッ!? そうやって……そうやって貴方達は祐希子さんをあんな目に……ッ……」

 菊池の脳裏に祐希子の姿がフラッシュバックする。
 ICUで今もまだ無数の管と酸素マスクをつけて見たことも無いような機械に囲まれ、なんとか命を繋ぎとめているマイティ祐希子の姿だ。
 「は……て、祐希子……ゆきこ……ユキコ……Yukiko……―――」 男がその名前を聞くと己の記憶を遡るかのように、祐希子の名前を繰り返す。日本語、英語、イタリア語、ロシア語、フランス語……果てはどこで使われているのかすら首を捻るような言語まで、様々な言語の発音でその名前を繰り返すも、男は困り果てた表情を浮かべ 「ふむ……誰だったかな」 それはワザとでも目の前の菊池を挑発するようなものではなく、男がその名前を本当に覚えていないと思わせる口調。
 
「あ……貴方って人は―――ッ!!」

 もはや人間の出来る事じゃない。祐希子が箱詰めにして送られてきたあの惨劇を忘れたとは言わせない。
 それなのに男は祐希子の事をまったくもって覚えていないような態度を取ったのを見て、菊池は怒りを露に男へ食ってかかろうと身を乗り出した。

「Перст одно не делает касанием президента(社長に指一本触れさせやしないわ)」

 が、菊池の体をハンが後ろから羽交い絞めにしてその動きを止める。それでも菊池は構わず暴れるのだが、ハンの羽交い絞めから逃れる事は出来なかった。

「……この下衆野郎ッ!! 貴方みたいな人を下衆野郎っていうのよッ!!」

 祐希子の無念、尊敬する先輩を侮辱するような態度。それら全てに菊池は涙ながらに吼えた。

「下衆……野郎? くく……くはは……はっはっはっは!! 久しぶりに聞いたよ。下衆野郎……下衆野郎ね」

 菊池の言う下衆野郎という言葉に男は目を丸くしたかと思えば、いきなり笑い出した。それはその言葉自身を懐かしむように、下衆野郎と呼ばれた事に対し怒る様子も見せずただ笑うだけだった。
 「菊池さん。覚えておいたらいい。そういった下品な表現はね……」 男は溢れかえってくる笑いを堪えるかのように、くつくつとした笑い声を漏らし言葉を続ける。

「私達のような人間には―――最高の褒め言葉だ」

 男は虚空の球を掴むようにして指を折り曲げ片腕を前に突き出すと、片目だけを一際見開いて口元から八重歯を覗かせ、目を見開いた側の頬に笑みを浮かばせる。
 それはまさに狂喜。正常な頭を持たぬ者が浮かべる狂喜の笑みである。
 
「そうだ。菊池さん。どうです、その怒りウチのリングでぶつけて見ては?」

「元よりそのつもりです!! 許せない……絶対に許せない……ッ!!」

 菊池の瞳に復讐の業火が灯った―――

465 :オリゼー:2009/04/14(火) 16:16:50
3.

「はっはっは……これは予想外の拾い物だったな。私好みの戦い方をしてくれる」

 喧騒とした会場の中央にあるリングを見ながら、男がおかしそうに両手を叩き口端を吊り上げた。
 そのリングの上では、社長室であれほどまでに気炎を上げていた菊池が鮮血を迸らせながら殴られ続けていた。
 菊池を殴り続けている相手、それは限りなく薄い菫色の髪をして右目に蒼玉、左目に紅玉を埋め込んだような瞳を持つ村上千春。

「噂には聞いていたが、まさか本当にあったなんてなぁ……実に私ら好みの団体だぜ」

 菊池の髪を左手で掴み躊躇無く顔面へと打ちつける千春の右拳には金属製のナックルが握られていた。
 
「ごぶ……ッ……ぶ……へッ……おぶぅ……ッ」

 その拳が顔面に当てられる度、菊池は得もいえぬ呻き声を上げ体を硬直させるだけ 「オマケだ。取っておけ―――よッ!!」 そして千春がおもむろに髪を離し菊池の懐へ踏み込めば、全身のバネを使った強烈なアッパーカットが菊池の顎を襲った。

「はっはっはぁ!! 砕けたよなぁ? えぇ? 今の感触たまんねぇぜ!!」

「ごぼ……ッ……げぅ゛……ッ……あ゛……ぁ゛……ぁ゛……ッ」

 後方へ倒れこんだ菊池が顎を抑えながら泡状の血をぶくぶくと口端から垂れ流し、散々殴られた鼻は潰れ、そこを中心に鼻血が菊池の顔に朱色の華を咲かせていた。

「あぁ? 何言ってんのかわっかんねぇよ。しっかり喋りやがれ」

 菊池の呻き声にしか聞こえないそれに千春がイラつきを覚えたのか、菊池の腹部に踵を捻り込むようにして踏みにじる。

「ん゛……ぉ……ぉ゛……ッ!? こ゛……んお゛……ひぎょ……ぉ゛……ぼ……の゛……ぉ゛お゛ッ!!」

 砕けた顎でまともに言葉すら発せられない状況で菊池は口を開く。
 凶器を使うことに躊躇いを見せず、その凶器で人を殴る事を楽しむ千春に対し、恐らく 「この卑怯者」 と、言ったであろうその言葉。

「卑怯者? 私が卑怯者だってぇ? はっはっは!! そうさ卑怯者だぜぇ? だからどうしたよ? そいつぁ私にとっちゃ 『最高の褒め言葉』 さぁ―――!!」

 下品な笑みで菊池を踏みつけ、己をののしる言葉に高笑いをしてみせるリング上の村上千春に 「くっはっはっは、いいぞアレは素晴らしい」 と男はその姿に惜しみない拍手と笑い声を上げずにはいられなかった。

「子供は二人目の方が出来が良いとも聞く、姉であれだというのだから妹はもっと素晴らしいのだろうな」

 そう言って男は村上千春へ普段口にすることの無い賞賛を口にした。
 自分の団体にレスラーは数居れど、ある者は特定の人物を超えるため、ある者は自分への恩を感じて、ある者は自分に嫌われたくが無い一心で
 そういった理由でリングに上がる者の中で、今リング上にいる村上千春は一方的な蹂躙を好み、それをするのに手段は選ばない。
 団体に身を寄せるレスラーの中で村上千春が一番この男の感覚に近いものを持っていた。単純に人を痛めつけ、自らが最低の人間だと言うことを自覚し、なおの事それが楽しくて仕方が無い。ただそれだけである。

466 :オリゼー:2009/04/14(火) 16:17:55
4.

「はっはっは、こいつぁいいや……動けるか? 動けねぇだろうなぁ? ジュニアの象徴、キリスト様の完成だぜ」

 男が千春に賞賛を送っている間に、リング上では千春がトップロープとセカンドロープに菊池の両腕を挟み込み磔していた。千春が言うように菊池の姿はまさに十字架に磔にされたキリストを思わせ 「おい、神に請えよ。お助けくださいってなぁ!!」 そして千春がそれをバカにするかのように腹を抱え大きな笑い声を漏らす。

「ゆふ……ひゃ……な……ぃ……ぜっら……ぃ……ゆふ……ひゃ……は……ぃ」

 菊池が千春の言葉通りに許しを請う事は無かった。
 むしろ、試合前に灯した瞳の業火を消す事無く、壊れた顎関節でこんな団体は存在してはいけない。こんな事は 「絶対許さない」 と、訴えるかのようにそれを繰り返す。

「別に許してもらおうなんて、これっぽっちも思っちゃいねぇよ」

 「高貴な高貴なキリストさんよぉ」 菊池のその瞳が暑苦しすぎると、千春がそれをはんっと鼻で笑い飛ばし菊池の顔を覗きこむ。

「アンタの最後は確か槍に刺されて死んじまうんだったよなぁ? その槍、ここにあるぜ?」

「ぇ……―――?」

 千春の言う事がまったく理解の出来ない菊池だったが、千春が自らのシューズを指差して言う。 「安全靴って知ってっか?」 千春のその言葉に菊池は全てを理解した。

「う゛……ぅ゛……ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛―――ッ!!」

 菊池が叫ぶ。それは恐怖から来るものでも、相手に許して欲しいがためにあげた様なものではない。それはレスラーとして、いや人間として、何故ここまで出来るのか、到底理解しえぬ行為に対しての叫び―――。

「いちいち吼えんな、うるせぇん……だよッ!!」

 中底に鋼板を仕込んだシューズで、千春は菊池の腹部に目掛けトラースキックを放った。
 それは槍の様に鋭く菊池の腹部を抉り胃袋を押しつぶす。

「ん゛ご……ぉ……ぉ゛……ぅ……ぶッ」

 菊池の両目が見開かれた瞬間。
 両頬が大きく膨らみを見せたかと思えば、押さえ切れなかった吐瀉物が菊池の口から吐き出され、口内に溜まっていた血が入り混じるその吐瀉物がリングを汚し、菊池はそのまま意識を失った。

「Она как после того как я сделана?(今回はどうなされますか?)」

 試合が決まるとすぐに男の下へハンが歩み寄る。

「Я буду обрабатывать(私自らやるとしよう)」

 「なにせ、気分がいいからな」 顎を摩りならが下品な笑みを浮かべた男がそう呟いた―――

467 :オリゼー:2009/04/14(火) 16:19:14
ラスト.

―――数日後。 


「君!! 待ちたまえ!! 今私の部屋から出て来たが何者だね」

 とある団体の自社ビル。
 社長と思しき男が社長室から堂々と出て来たツバ付きキャップ深くかぶり作業着姿の男を呼び止めた。

「……あー……もしかして社長さん? 聞いていないんですか? 参ったなぁ……いや、ね。社長室の照明器具を変えてくれって言われたんで、その通りにしたんですけども」

 呼び止められた男は深くかぶったキャップを外し、困り顔を浮かべ後頭部を掻いた。

「うん? 私はそんな事頼んだ覚えは無いが……秘書が頼んだのかな……? ま、すまなかったね。ごくろうさん」

「いえいえ、しっかし……良いセンスしてます。かなりイケてると思いますよ今回の照明器具は」

 そう言って作業着の男はキャップを深くかぶり直し 「それじゃ」 と社長に簡単な一礼を見せて歩き始めた。
 そして男が廊下を曲がりエレベータに乗り込み扉が閉まった瞬間。

「うわあぁぁぁ―――ッ!!」

 フロア内に社長の叫び声が響いた。
 社長室の扉が開かれた前で腰を抜かした社長が震える指で指す先には、天井から逆さ吊りにされた菊池の姿があり、トレードマークでもある鉢巻で片足のみを吊られゆらゆらと体を揺らし、試合用コスチュームの臍から下は破り捨てられ膣口には電球が差し込まれていた。
 そして白目を剥いた顔面に半開きになった口にも電球が押し込まれていた。それは一つに留まらず、中には割れてしまっている物があるほどの無数の電球が押し込まれ目を背けたくなるような姿だった。

「お……ぼ……ぉ……ッ……」

 菊池の口から無数の電球が吐き出された。
 それはまだ菊池が生きている証拠でもあるか 「……ゅ……ひゅ……ひ……ぁ……ぁ……ぃ……」 そして宙吊りにされた菊池は既に意味も持たぬ理解不能な言葉を漏らし続けた―――
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