523 :名無しさん:2009/04/27(月) 01:00:27
「は…ははは…」
リングを呆然と見つめる外道社長の口から思わず笑いが漏れた。悪い夢を見ているようだった。ありえない。そう頭でかなくなに否定しようとも、目前の光景は非情なる現実だった。
「えぐッ!オッ!グハッ……うぅ……」
地下闘技場のリング上にて身体をくの字にに折り曲げ、嗚咽を漏らしている少女。バイオハザードと呼ばれたその巨体が今はあまりにも小さい。

燃えるファイアーパターンをあしらったレザーのリングコスチュームが、小刻みに痙攣する巨体を見下ろしている
「立て」
頭上からの声に大空みぎりはびくりと身を硬直させ、泣いて懇願する。
「いや……もういやぁ!」
外道社長はやはり自分の眼が信じられない。あのみぎりが、どんな実力者も圧倒的な力量差で叩き潰してきた自分の最強の手札が、咽び泣いて許しを請うている。
四つん這いで逃げ出そうとするみぎりの髪を掴み、無理矢理に立たせているのは、神田幸子。
表の世界では中の下程度の評価でしかない雑魚中の雑魚。そんなレスラーが外道社長の庭、地下闘技場に突然殴り込みをかけてきた時には思わず失笑を漏らし、「まぁ、盛大に潰れてくれるならそれでもよい」と考えたのだが、事態はとんでもない方向に動きだしていた。

524 :名無しさん:2009/04/27(月) 01:41:26
自ら「表からの刺客」を名乗った神田幸子は一つだけ要求を突きつけてきた。

神田が勝った場合、この地下闘技場の主、すなわち外道社長を一分間だけリングにあげろ、いうのだ。
外道社長は鼻で笑ってその要求を呑み、神田は負けた場合はそのまま五対一のデスマッチに突入させてもらうことを逆に約束させた。

普段以上の虐殺ショーを期待し、実力派のハンを送り出したのだが、そのハンは今、リング下に横たわりぴくりとも動かなかった。ハンの売りの一つである端正な顔は、今や青黒く変色し南瓜のように腫れ上がっている。完全に砕けている、とだけリングドクターは報告し、本来ならばあってしかるべき治療の見立てなどの話はなかった。
「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさ――グフぅ!」
腹部に突き立てられるボディーブローに、リング上のみぎりは悲鳴すらあげさせては貰えない。以前、スポーツ誌に載せられていた記事、神田が拳を壊してボクシングを捨てたという話は根も葉もないガセだった。

第一試合、グラウンドに持ち込もうとしたハンに逆らわずテイクダウンされた神田は、なんなくマウントポジションを取ったあと、そのままハンの顔面を殴り続けた。
光速の拳の異名は伊達ではない。ガードを掻い潜るパンチング技術も相まって、防ぐのは困難。しかし、問題なのはそんなことではない。神田は拳を握った。クリーンなプロレス用の掌底ではなく、硬く鍛えられたボクサーの拳を。
グローブもなく、バンテージが巻かれただけの神田の拳は完全なる凶器だった。
1発目はハンは何が起こったのか理解していなかった。2発目は必死になって顔を庇おうとした。そして3発目を喰らったときには、もうハンの意識は途切れた
神田は意識のなくなったハンの顔面をひたすらに殴り続けた。返り血を浴び、バンテージを赤く染め上げながら表情一つ崩さず殴る。殴る。殴る。

525 :名無しさん:2009/04/27(月) 02:34:56
ようやく我に返ったレフェリーが止めに入る。しかしそのレフェリーも振り向きざまのバックブローに、顎骨を粉砕され意識を絶たれた。
時間にしておよそ三分。誰も止める者のいなくなったリングで神田は拳を降り下ろし続けた。残虐な光景を好んで観てきた観客たちでさえ静寂に包まれ、闘技場にはゴリ、ボキという耳障りな破砕音だけが響く。

動かなくなったハンをリング下に蹴落として、神田はマイクを要求した。
「これで分かって貰えたと思う。私はプロレスをしにきたのでもなければ、壊しあいをしにきたのでもない。制裁のつもりもない。なんてことのない、ただ殴りにきただけだ」
そして、「リングにあがれ」と神田は外道社長に約束の履行を迫る。
「上がらないのならば、こちらからいくまでのことだぞ。そこまでの道上にあるものは総て砕く。私はここにあるもので、壊すのに躊躇うものは一つとしてない。下卑た観客共も含めて、な」
その言葉と同時にリングの鉄柱に神田は拳を打ち付けた。選手を守るためのカバーなどされていない、血濡れた錆の浮く真鍮製の鉄柱が凹んだように見えるのは流石に錯覚に違いないが、冗談じゃない、と外道社長は思う。

殺される。自分を見据える神田の緋色の瞳を見て外道社長は確信する。あいつがボクサーをやめたのは、あの人外の拳のせいだ。リング上の最悪の事故。あいつはやったに違いない。しかし、今、追放され封印したその拳を振るうに躊躇いの欠片もない。
殴りにきただけ。嘘だ。あれは紛れもない銃弾だ。俺を殺しに放たれた――
「調子にのらないでくださいね〜」
リングに乱入して神田を羽交い締めに捕まえたみぎりの姿にほっとしたのもつかの間、そのみぎりも腹部への肘うちで逃れられサンドバックにされるまでに、さほど時間はかからなかった。
「伊達ぇ、上原ぁ!行け、二人がかりだ、アイツを潰せ!」
外道社長の叫びも虚しく、伊達も上原も地獄のような光景に身がすくんでその場から動かない。伊達に至ってはその場にへたりこんで、必死に耳をふさいで震えている。
未だ解放される気配のない執拗な腹部への攻撃に、みぎりの悲鳴が上がる。断末魔だろうか。あれだけの肋骨は総て折れ、内臓はぐちゃぐちゃに違いない。
阿鼻叫喚の地下闘技場に寡黙な拳が振るわれ続ける。
外道社長は壊れたように笑いながら、処刑場たるリングへ歩を進めた。
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