566 :名無しさん:2009/05/09(土) 17:07:37
 白いコスチュームをまとった肉体に、黒い肢体が絡みついている。

「く、ああぁ……!」

 戒めをなんとか抜けようと桜井千里はもがくが、身体は全く自由にならない。
 千里がかけられている関節技の名は卍固め。またの名をオクトパスホールドという。
 しかし千里の対戦相手が掛け手となれば、その様は蛸というより蛇のように思われた。

「ふふふ、あなたの無様な泣き声、もっと聞かせてごらんなさい。ほら、ほら……!」

 サディステッィクな性癖を隠そうともせず、身体だけではなく言葉でも千里を攻める掛け手の名は、フレ
イア鏡。
 パンサー理沙子やブレード上原といった一線級の実力はないが、関節技の名手として知られているレスラー。
その噂に相違無く、フレイアの卍固めは完璧に決まっていた。
 千里がなんとか関節を緩めようともがきほんのわずかなスペースを作っても、鏡がちょっと力の方向性を
変えると、ただそれだけで千里はまた身動きが取れなくなってしまう。
 試合が始まってから、鏡の関節技で何度も千里は窮地に陥っていた。これまではロープ際だったのでなん
とか助かったが、今二人のいる場所はリングのど真ん中。ロープブレイクにも持ち込めない。
 脱出の方法が何一つ思いつかないまま、関節はぎしぎしと締めつけられ激痛だけが大きくなっていく。

(くぅ……これは、抜けられない……)

 ギブアップの五文字が頭に浮かぶ。
 強くなりたいという思いは人一倍強い千里にとって、フォールやKO負けはともかく自分から白旗を揚げる
ギブアップは屈辱で、できることならしたくない選択だった。
 しかしこのまま技をかけ続けられれば、関節を本格的に痛めかねない。

(悔しいが……ここからだとどうやっても勝てない)

 千里が苦しい息と共にギブアップを口にしようとした時だった。急に、全身の戒めが解かれた。

「な……!?」

 技を解いて千里の身体から降り立つ鏡。その意図が読めず千里は混乱した。あとほんの数秒で得られた勝
利を手放した理由が分からない。
 反射的にファインティングポーズはとったものの呆然として動かない千里をくすりと鏡は笑って、自分も
構えた。
 左手をやや前に出して身体を傾けた左半身の構え。さらに両手が握られる。
 試合が始まってからずっと、鏡の手は相手を捕らえ関節技に持ち込むため開かれていた。その手が、今は
拳を作っている。
 それはちょうど、千里の構えと全く同じ。打撃技を主体とする者が取る構えだった。

「あなた、たしか打撃が得意でしたわね」

 挑発するようにゆらゆらと拳を揺らしながら、鏡が言った。

「殴り合いなんて野蛮で私は好まないのですけど、今日は気分がいいから付き合ってあげますわ。……それ
に、私とあなたはこれぐらいのハンデがあってようやく五分でしょうし」

 鏡の言葉の意味を脳が理解した瞬間、千里の全身の血が頭に上った。

567 :名無しさん:2009/05/09(土) 17:08:55
「みくびるな!」

 腹の底からの怒声を上げ、千里は大きく踏み込んだ。
 身体を半回転させて勢いをつけ、渾身の力で肘を打ち込む。
 千里のエルボーは防御しようとした鏡の腕を弾き、そのまま顔面へと吸い込まれていった。
 したたかな手応えが腕に伝わり、鏡は一歩たたらを踏んで退する。その口元から、つつっと赤い雫が流れ
た。しかし血に濡れた唇からは嘲りの笑みが消えない。

(その余裕顔、絶対に叩き潰してみせる!)

 強い決意と共に、さらに激しく千里は拳撃を繰り出していった。




 そこからの展開は、プロレスというよりキックボクシングのようであった。
 投げや極め、飛び技は一切使われず、お互いの手足肘膝を相手の身体へ叩き込むことだけに専心する。
 普通のプロレスよりもより肉体同士がぶつかり合う試合の流れは、やや千里に傾いていた。
 関節技なら鏡に一日の長があるように、打撃技なら千里の方が勝っていた。なによりも、あからさまに格
下扱いされた屈辱が、千里の打撃に鋭さを増している。

「はあっ!!」

 鋭い気合一閃、ミドルキックが鏡の脇腹を直撃する。鏡の冷たい美貌にやや苦痛の色が走ったが、すかさ
ず平手打ちが返ってきた。
 ぱぁん、と破裂するような音がして頬に痛みが走るが、足を止めず千里は蹴りを鏡の腰から下へと連発し
ていく。何度も放っていくうち、出際を読まれて半分以上は脛で防がれるようになった。しかし、それこそ
が千里の狙いだった。
 鏡の視線も気持ちも、完全に自分の下半身への攻撃に集中している。最高の好機だった。
 さらに一発、千里は打ち下ろすようなローキックを放つ。ガードしようと鏡の右足が持ち上がった。
 しかし鏡の下半身の手前で、千里は足を勢いそのままに跳ね上げる。鍛え上げた脚部は腰よりもさらに上、
鏡の銀髪へと吸い込まれていく。
 会心の変則ハイキックが、側頭部に炸裂した。ぐらりと、鏡の身体が揺れる。
 決まった。完璧に決まった。
 千里の脳裏には、そのまま力を失い倒れていく鏡の姿が描かれた。現実にもその通りになるはずだった。
 だが束の間崩れるかに見えた鏡の足に力が戻り、ふらついた身体が安定する。

(そんな!? 今の手応えで、どうして気絶しない!?)

 リングシューズの影から覗く口元に、にやりと一際不吉な笑みが浮かんだ。

568 :名無しさん:2009/05/09(土) 17:10:02
          ※




 蹴りを放ったまま呆然と立ち尽くす千里を見て、鏡は高笑いしたい気分になった。

(やっぱり気づいていない。本当に間抜けですこと!)

 試合の前半、脇固めや膝十字で千里の手足を相当痛めつけておいた。度重なる関節技によって力が入らず、
千里の打撃力は半減しているのだ。
 さすがに今のハイキックは意識が飛びかけたが、全体的に見れば食らったダメージは何ほども無い。攻撃
が効いているような演技までしたので、千里は全くそのことに気づいていないようだった。

「さて……ここまであなたに華を持たせてあげたのですから、ここからは私の番ですわ!」

 頭部に触れたまま止まっている千里の足に、鏡は手をかける。関節技で来ると思ったのか、慌てて千里が
足を引っこ抜こうと力を込めた。
 その瞬間を狙いすまし、鏡は逆に足を突き放した。
 鏡の力に足を引こうとした自分の勢いが加わって、千里はバランスを失ってぐらつき鏡に背を向けてしま
う。
 その無防備な腰と胴体の繋ぎ目を狙って鏡は思い切り、腰骨がずれよとばかりに蹴り飛ばした。

「くあっ!」

 悲鳴を上げて千里が前のめりに倒れ伏す。
 尻を上げて雌犬のような姿勢でダウンしている千里の腰を、鏡はブーツの踵で踏みにじった。

「ああああぁぁ、ぐぁっ!!」

 関節技を得意とし技巧派のイメージがある鏡だが、筋力も並のレスラーより強い。その鏡が全力で腰を蹴
り、なおかつ同じ場所に体重をかけて踏みつけているのである。
 千里は海老のように身体を反らせ、苦悶の声を漏らした。

「残念だけれどあなたの打撃、全く効いていなかったのですわ。打撃だけで五分五分と言ったけれど、訂正
の必要がありますわね」

 必死で鏡の下から逃れようとする千里を足一本でマットに縫い止めながら、鏡は言った。

「自慢の打撃でもこの程度。あなたでは、百年経っても私の前に無様に這いつくばるだけのようね」
「わ……私は、まだ負けていません……!」
「あらそう。ならもっとあがいてみせなさい」

 足をどけてやると千里は起き上がってきた。腰をかばいながら立ち上がる速度は遅く息は荒いが、まだ眼
が死んでいない。

(もう少し身体も精神も痛めつけておいた方がいいようね)

 わざわざ相手の攻撃を受けてまで作り出した、鏡が大いに愉しむためだけの展開である。フィニッシュあ
たりで無駄な抵抗をされては興が削がれる。

「レフリー! 試合が終わるまでに、私が打撃以外の攻撃をしたら反則負けにしてもらってかまいませんわ。
そうでもしないと一方的すぎて、お客様が退屈して帰ってしまいそうですから」

 唐突に提案されたレフリーは、戸惑った顔で鏡と千里の顔を交互に見る。
 しかし千里は何も答えず、強く唇を噛み締めると鏡に飛び掛ってきた。

569 :名無しさん:2009/05/09(土) 17:11:20
 また、拳と蹴りの応酬が再開される。
 言葉通り、鏡は打撃技だけを使用した。千里もむきになって、打撃だけで対抗してくる。
 しかし腰への痛撃で、もはや千里の攻撃にはキレが完全に失われていた。
 軽々と受け止めて反撃する鏡は、わざと千里がこれまで繰り出してきた技をなぞって攻撃を加えていく。
 肘を顔面に打ち込み、ロー、ミドルと蹴りを打ち分ければ、面白いように決まっていく。千里の腿に赤い
痕がつくまで何度も下段蹴りを叩き込んでから、ハイキックで締めた。
 もっともあっさり気絶されてはつまらないので、最後の蹴りは力を抜いておいた。
 それでも今の千里には大きなダメージになったのか、力無く鏡に向かって倒れこんだ。緑髪が鏡の胸元へ
ぽふっと埋まる。

「あら、大口を叩いたのにもうおねんねかしら?」

 優しく囁いて、鏡は千里の頭部を柔らかく抱きしめてやる。千里も意識が半分飛んでいるのか、すがるよ
うに鏡の背中へ手を回してきた。
 状況を一切無視すれば、二人の美女が抱き合っている穏やかな光景。
 しかし銀髪の美女が次に取った手は、残酷そのものだった。
 下半身だけ下げて千里の胴体との間にスペースを作った鏡は、勢いつけて膝を突き上げる。
 千里の白い腹に、膝がめり込んだ。

「ごふぅ!!」

 頭蓋骨で守られている頭部への攻撃と違って、腹への攻撃は直に内臓を痛めつける。苦痛という意味では、
頭部とは比較にならない。
 閉じかけていた千里の瞼が、苦悶で見開かれた。
 三度、四度と膝を叩き込んでいくうち、千里の腹筋が緩んでくる。女性本来の柔らかい腹部の肉を蹂躙す
る感触に、鏡は恍惚とした。
 膝が密着した状態でぐりぐりと抉ってやると、ひゅう、と声にならない吐息と共に口から唾ではない黄色
い液体が飛び出す。
 大半はリングに零れたが、一部が鏡のコスチュームにかかった。

「汚いですわね!」

 尻尾のようにくくった髪を掴んで、千里の顔面を自分の吐いた胃液の水溜りに叩き込む鏡。
 そのまま何もせず見下していると、千里はのろのろと汚れた顔を上げた。何とか立ち上がった千里だが、
鏡を見る眼がどこか虚ろになっている。
 もう少し。あとほんの一息で、自分の得意とする打撃で圧倒された千里の心は壊れる。
 靭帯の捻じ切る際の布を引き裂くような音も、関節を壊された者が上げる悲鳴も素晴らしい。
 しかしプライドのへし折れる時の音が、鏡に一番の快感をもたらしてくれるのだ。
 千里はかろうじて立って構えたものの、鏡が二、三発掌底を繰り出すとよろよろと後退していく。あっと
いう間にリングの隅へと追い詰められてしまった。
 コーナーに背中がついた時、衝撃で千里の豊かな胸が揺れた。それに眼を止めて、鏡はにんまりと笑う。

570 :名無しさん:2009/05/09(土) 17:13:41
「そんなに大きな胸、打撃をする時に邪魔でしょう。潰して小さくしてさしあげますわ」

 改めて拳を握り固めた鏡は、千里の乳房めがけて連打を打ち込んだ。まるでパンチングボールのように、
千里の胸が揺れ回す。
 千里の腹に打撃を加えるのも良かったが、胸もいい。硬い骨に邪魔されず、肉の潰れていく感触がじっく
りと味わえた。

「や、やめ……」

 か細い声を上げて千里が胸を覆う。
 がら空きになった顔面を鏡は突き上げ、掌底を見舞っていく。顔を守るようになれば、今度はボディブロー。
 両手だけでは守りきれない肉体の場所へ、的確に拳や膝を叩き込んでいく。
 もはや完全に、千里は鏡のサンドバックと化していた。
 三分と経たぬうちに口からは流れるように血が滴り、コスチュームから覗く横乳と大きく開いたへそ部分
は薄紫色に鬱血していた。胸などは小さくなるどころか腫れて一回りサイズを大きくしていた。
 身体をかばおうとしていた手は、意味も無く中空で漂っている。視線はぼんやりと鏡を捉えているものの、
そこに力は一切見えない。
 気つけに軽く数回頬を張っても、焦点は合わなくなっていた。
 ふっと笑って、鏡は攻撃の手を休め千里の耳元に口を寄せる。

「弱いなりに私を愉しませてくれましたわね。ご褒美にスリーパーで楽に落としてあげたいのですけど、打
撃以外を使ったら負けになってしまいますから……少し痛いですけど、我慢することですわね」

 千里の足を払って、その場に腰をつかせる鏡。
 自身はロープ沿いに後退して助走距離を取ると、
 そのまま、ぼんやりとした表情を浮かべる千里の顔面を、一気に蹴り抜いた。

「がふっ!」

 千里の口から血飛沫が飛んだ。
 座り込んだ体勢の千里が、さらにずるずるとコーナーをずり落ちていく。手が最下段のロープに引っかかっ
てようやく止まった。
 ぴちゃり、という音が鏡の耳に届く。視線を落とすと、千里の股間から黄金色の液体が漏れ出し、リング
に広がっていた。

「最後まで無様なこと」

 腫れ上がった乳房を踏みつけ、鏡はレフリーにカウントを要求する。
 千里の眼は薄く見開かれてはいたものの、3カウント中、その肉体はぴくりとも動かなかった。
 ゴングが叩かれ勝ち名乗りが上げられる間、手足に残る千里の肉体に打ち込んだ時の感触と快感を思い出
し、鏡は口元を吊り上げた。

「打撃技も、案外悪くないものですわね」




          終わり
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