864オリゼー:2009/08/07(金) 18:53:27
 古き者は新しき者に、弱き者は強き者に閉ざされる。
 この連鎖は生きる上で必然的に行われている行為。
 そして、その連鎖に飲み込まれようとしている者が一人。

 名は葛城早苗――

 葛城は日本国内の所属団体でトップレスラーの仲間入りを果たすべく努力し、そして海外遠征のチケットを手に入れた。
 その遠征先で葛城は一人の日本人女子プロレスラーと出会う。

――大空みぎり。

 身の丈は2mにも届こうかと思わせる程高く、身体能力も体の大きさを感じさせない程の物を持っており、日本で同等の者を探そうとしても該当する者は現れないだろう。

 とある日、みぎりは葛城にこんな事を言った。

「私、日本でプロレスラーとして活躍するのが夢なんですよ〜」

 みぎりは日本国内でプロレスラーとしての活動は一度足りともした事が無かった。類稀なる大型女子プロレスラーの彼女が何故日本の団体から声がかからないのか。
その理由、葛城には解っていた。

「仕方の無い事だ。言ってみれば今の日本女子プロレス界は飽和状態にある。幾らお前が凄くても国内で選手が余り余っている現状からしてみれば、日本女子プロレス界が海外の団体にいるお前に目を向ける可能性は限りなくゼロに近いだろう」

 この時、日本の女子プロレスブームは最高潮。女子プロレスラーを目指す
者が次から次へと現れ、日本の団体は海外まで手を伸ばす必要も無かった。
 故に、みぎりの存在は知っていたとしても、どこの団体もみぎりに声をかける必要など無かったのだ。

「その飽和状態はいつになったら無くなるんですかね〜?」

 葛城の言葉にガクリと大きく肩を落とすみぎりに対し 「さぁな。ただ、この業界から去る者が出ればその分空きが出来る事は確かだな。まぁ、この人気の中で自ら業界を去ろうという者がいるとは思えないが……」

「でも……業界から去る者がいれば、私も日本でプロレス……できるんですよね――?」

「あ……あぁ、可能性はあるだろうな」

 このとき、葛城はみぎりの言葉に少しばかり背筋を凍らせる。
 それは、普段から緩い喋り方のみぎりがはっきりとした口調と微かに口元を吊り上げ不気味に笑う表情を見てしまったからだった――


 葛城の遠征期間も大分終わりに近づいた頃、遠征先のリング上で葛城とみぎりは対峙していた。
この団体に来て、同じ日本人として葛城はみぎりとタッグを組む事は何回かあったものの、直接シングルで対決するのは初めてである。

「これで葛城さんとお別れになるのは少し寂しい気がします〜」

「そう言うな、お互いプロレスを続けていれば、いつか何処かでめぐり合えるだろう」

 遠征が終わりに近づいてようやく二人のシングルマッチを組まれるという扱いなのだから、この先、残す期間でみぎりと戦う事は無いだろう。そしてみぎりもそれをわかっているのかもしれないと、寂しがるみぎりに対し葛城は少し照れくさそうに微笑む。

「そうであればいいのですけど〜。あ、私、手加減とか出来ないので〜」

「ふふ、手加減などされては困るな。私は強くなるためにここにきたのだから」

 そんな会話が続き、とうとう二人の戦いのゴングが打ち鳴らされた――

865オリゼー:2009/08/07(金) 18:54:46
2.

 試合が開始して数十分が立ち、葛城はリング上でみぎりに対し何も出来なくなっていた。
 それは得意な打撃で一撃必殺を狙おうとしても、身長の高いみぎりの前ではハイキックはミドルキックにしかならず、関節技もみぎりの力の前では強引に振りほどかれ無意味な物でしかなかったからだ。

「せ〜の〜、え〜い!!」

「ぷぁ――ッ!?」

 葛城の頭を両手でしっかりと固定したみぎりがお辞儀をするかのように頭を下げる。だが、お辞儀といっても、それはヘッドバッドである。丁寧でゆっくり下げるものでは無く、相手の鼻を目掛け勢い良く振り下ろされたみぎりの頭部が葛城の鼻をぐちゃりと潰す。
 押さえられた状態で仰け反る事も出来ない葛城は、みぎりの頭部を見つめながら潰れた鼻から飛び出す鮮血に顔を赤く染め上げた。

「これで終わりじゃないですよ〜?」

「ぶぇぁッ!!」

 みぎりが次に繰り出したるは、大きな掌を広げて頬を打ちつける平手打ち。
 乾いた音が響いたと同時に、葛城の上半身が平手の勢いのまま大きく泳ぐ。

「まだまだ〜もう一丁です〜」

「あぶ――ッ」

 葛城の泳いだ先に待っていたのは、同じくみぎりの平手打ち。
 大きく泳いだ葛城の状態を元に戻すような逆側からの平手打ちに、葛城の顔は酷く拉げた顔になっていた。

「えぶッ、おぐッ、ぐひんッ、ぶぁっはッ」

 何度も何度も繰り返されるみぎりの平手打ちが葛城を襲い、振り子のように体を左右へ振られ呻き声をあげる事しか出来ないその口からは、口内をカットしたのか血が滴り落ちる。

「ぐ……ぅ……、ぜッ……ぇ……ぜぇッ」

 そんな葛城はみぎりに抱きつく事でしか逃れる術が無かった。
 潰された鼻と、カットした口からは止まる事の無い血がマットを紅く染め、鼻呼吸が出来ず口を大きく開いて荒い息を漏らす。
しかし、叩かれるままの状況から逃れる事が出来た、葛城がそう思ったのもつかの間。
葛城の視界がみぎりの掌で塞がれると共に、こめかみを中心に側頭部へと激痛が走る。

「あ……ぎぃ……ゃぁぁぁあああ――ッ!!」

 悲鳴を上げると共に、葛城はアイアンクローを外すべくみぎりの手首を両手で掴むも、みぎりの怪力の前では叶わぬ願い。万力に締め付けられているような痛みに掴んだその手へ満足に力を送る事すらもできず、駄々っ子のように暴れ、腰の入らぬ不恰好なローキックでみぎりの脚を蹴るのが精一杯だった。

「どうですか〜? 地味な技ですけど〜意外と痛いんですよね、これって〜」

みしみし、ぎしぎし、きりきりと……。

――頭蓋骨の軋む音。

「は……ぉ……ぉッ」

 ほんの数秒間、その間に葛城は抵抗する力すら奪われた。
 みぎりの手首を掴んでいたはずの両手はだらりと垂れ下がり、両脚も力が抜けているのか膝が心なし落ちこんで、細々とした呻き声が葛城の口から漏れ、みぎりの片手だけが葛城の体を支えていた。

「自分で立ってもらわないと困ります〜。次に行けないじゃないですか〜。ちゃんと自分で走ってくださいね〜? それじゃ、いってらっしゃ〜い」

至極普通のロープへのスルー。だが、みぎりの桁外れの力でスルーされた葛城はカタパルトから発射された戦闘機のような加速を見せ、大きくロープを軋ませると、その反動から更に速度を上げてみぎりの元へと戻っていく。

「おかえりなさ〜い」

 十分に勢いのついた葛城をみぎりがケブラドーラ・コン・ヒーロ、風車式バックブリーカーで出迎える。

「あが――ッ!! あ゛ッ、あ゛ぁぁっ!?」

 みぎりの立てた片膝に折り曲げられる葛城の背骨。
 両目を大きく見開いて口を大きく開けたそこからは口内の血溜りが粒上に飛び出し宙に舞う。
 体はこれでもか、と思えるほど折り曲げられ、それはまるで人間サイズの紙を半分に折畳んでいるようにも見えた。

「お゛ぁ……ぁ……っ……」
 
 ケブラドーラ・コン・ヒーロ自体、決定的なダメージを与える技には部類されない。しかし、みぎりという超々規格外の人間が扱えば話は別である。
 葛城は大きな声をあげる事すら痛みを覚えるのか、みぎりの片膝から下ろされて、エビ反りというよりもほぼブリッジに近い状態まで背中を反らせて小さな呻き声をあげるだけだった。

866オリゼー:2009/08/07(金) 18:56:15
ラスト.

「面白い格好ですね〜。そんな格好していたら、潰したくなっちゃいますよ〜」

 そう言ってみぎりはその場で大きく跳躍した。
 そのみぎりが、目掛け落ちていく先は葛城の腹部。その場飛びのじゃんピングフットスタンプが葛城のそこを押しつぶせば、先ほどまでブリッジのような体勢をとっていた葛城の体は、あっという間にVの字へと姿を変える。

「ぐお゛ぅ――ッ!?」

 苦悶の表情を浮かべた葛城の体がゆっくりとリングのマットへと伸びる。
 万歳するかのように両腕を伸ばし、両脚はひっくりかえった蛙のような蟹股を描く。
 葛城がなんとか酸素を取り込もうと呼吸をするたび、苦しみながら身を 震わせる所を見ると、肋骨の数本は持っていかれているのかもしれない。

「ん〜苦しいのですか〜? いきなりVの字に折れ曲がったからですかね〜? あ、それなら、また逆側に折り曲げればきっと痛みが消えるかも知れませんよ〜」

 葛城の様を見たみぎりが顎先に人差し指を添えながら歩み寄り、言葉途中にひらめいた、とばかりに片方の掌にもう片方の拳をぽんっと打ちつけると、そのひらめきに葛城は 「ち、ちが……やめ――」 と、みぎりの桁外れの力の前で何をされるのかわからず恐怖の戦慄を覚えたか、表情からは一気に血の気が引いていく。

「ほら、ほら、立ってくださいよ〜。きっと私の名案で葛城さんを楽にする事が出来ますから安心してくださいね〜」

「や、やだ……や、やめ……やめろぉぉぉ――ッ!!」

 腹部の痛みを感じるよりも、よほどみぎりの存在のほうが恐ろしかったのだろう、先ほどまで苦痛で動く事の出来なかった葛城の体は本能的に体を起こし尻餅をついた状態のまま後ずさり拒絶する。

「怖がらないでも大丈夫です〜。すぐに終わりますからぁ」

 嫌、嫌、と首を振り乱す葛城などお構い無しで、力任せに葛城を掴み起こしたみぎりは自分の肩に葛城を仰向けに乗せ顎と腿をしっかりと掴む。

「それじゃ、行きますからね〜」

――えいっ!!

 みぎりが放った合図の掛け声が葛城の耳に飛び込んだ瞬間。葛城の体はまるでみぎりの首元に巻きつくマフラーのような形に姿を変えた。それは、おおよそ体が柔らかい者ですら、痛みを覚えようかと思えるほどの姿だ。
 それと同時に、葛城の中で何かが切れた。
 瞳は陰りを深め、口元は筋肉が緩みきって大口を開ける。その口からは重力に引かれた舌がダラリと垂れ出し、唾液と血の混じった液体、更に鼻孔から垂れ出す鼻水が葛城の顔を汚していく。

 そんな葛城の口から発せられる言葉など――無い。

 悲鳴も、呻き声も、喘ぎ声も、ギブアップの声さえも発する事無い。
 その光景は葛城早苗という人間が大空みぎりの首元を温める人間マフラーという物でしか存在せず、それ以上でもそれ以下でもなかった。

「どうです〜? 少しは楽になりましたか〜? ……あら〜少し曲げすぎてしまいましたか〜? すみません〜もう終わりにしますから〜」

 そう言ってみぎりが背面を谷にして反り返ったままの葛城をリングのマットへと投げ捨て、その上に覆いかぶさるようにしてフォールの体勢に入ると口元を心なし吊り上げたみぎりが呟いた。

「これで、プロレスできる体じゃなくなってしまいましたね――葛城さん」


――数ヵ月後。

 日本国内のとある団体。
 そこは元々葛城早苗が所属していた団体だ。
 しかし、今この団体に葛城早苗の姿は無い。いや、日本女子プロレス界から葛城早苗という名前は既に無くなっていた。
 
 そんな団体のメインイベント。
 今ではそのリングに身の丈が2mにも届きそうな程の大きな少女が立っている――
動画 アダルト動画 ライブチャット