873オリゼー:2009/08/07(金) 23:22:41
1.

「どうしたのかしら? 私に災厄があるというのならば、食して御覧なさいッ!!」

 そう言いながら声を張り上げ、コーナーに追い詰めた相手にニーリフトを打ち込んだのは芝田美紀。
 そして、そのニーリフトをまざまざと食らい腹部を押さえながら片膝をついた相手は十六夜美響。

「まだ……。まだまだ足りない……貴方の災厄をもっと吸わせなさい」

 だが、片膝をついた十六夜は涼しい顔を浮かべ挑発的な口調のままに不敵に笑って視線を向ければ、その視線の先にいる芝田は片目の尻をひくりと動かし奥歯を鳴らす。

「また、そんな事を言って――ッ!!」

 芝田の 『また』 と言うのは、試合が始まってからというもの十六夜は反撃を一度足りともする事は無く、芝田の攻撃を受けながら 「まだ、まだ足りない」 その言葉を繰り返していたからだ。

「そう、もっと怒りなさい。そして私にそれをぶつけなさい」

「貴方のその命令口調、どうにかならないのかしらねッ!!」

 芝田は確実にイラついていた。
 十六夜が余裕面を浮かべ反撃してこないのはもちろんの事、自分に対しての命令口調。もとよりプライドが高く、お嬢様気質の芝田にはそれがどうしても我慢ならなかったようだ。
 そんな芝田が助走を取ると、コーナーを背に片膝立ちでいる十六夜のその膝を踏み台にシャイニングウィザードを放てば、十六夜の頭部は芝田の膝とコーナーに挟まれる形となり、十六夜はとうとうリングへ前のめりに倒れこんだ。

「あら? どうやら私の災厄とやらを食べ切れなかったのね」

 倒れた十六夜の頭を踏みつけ、あご先に手の甲を添えた芝田が満足げな笑みを浮かべる。
 倒れた十六夜に対して追撃を見せない所を見ると、恐らくシャイニングウィザードの手ごたえを感じての事だろう。

「このままフォールに行ってもいいのだけれど、それじゃぁ面白くないわ……。この生意気な女を謝らせる……あぁ、そうね、そうしま――」

 十六夜の今までの行為に、このまま試合を終わらせてしまっては腹の虫が収まらないと、芝田が十六夜をこの後どう料理しようかと自問自答を繰り返し、その答えが出た瞬間、足蹴にしていた十六夜の体が小刻みに震え出す。

「くくッ、くくくッ、貴方の災厄、酷い臭いと酷い味。もう吸い飽きてしまったわ」

「な、なん――ッ!?」

 足蹴にしていた芝田の足首が不意に掴まれると、十六夜が不気味な笑みを浮かべてそのまま立ち上がった。
 それを見た芝田は片脚立ちのまま、ケンケンと小刻みに飛び跳ねバランスを取りながらも表情を強張らせる。

「恐れているのかしら? そう、隠さないでいいのよ。人間とは臆病で弱い物なのだから……もっと、恐れればいい」

「な、何を言って……あ、貴方なんかに恐れる訳が無いでしょう!?」

 くつくつと喉で笑い自分を恐れていると言う十六夜に対し、芝田は一瞬目を丸くしたものの、その目を鋭く尖らせ睨みを効かせれば 「いつまで人の足をッ!!」 と片脚状態から飛び上がり十六夜の延髄目掛け蹴りを放つ。

「ケェェ――ッ!!」

 それは芝田の蹴りが十六夜の延髄を捕らえようとしていた刹那――
 十六夜の奇声が芝田の鼓膜を突き、延髄斬りは十六夜を捕らえる事無く十六夜の片腕を持ってして芝田の体はリング中央へと投げ捨てられた。

「い、今のは一体……」

 リング中央で尻餅を付き、上半身を持ち上げた芝田は何が起こったのかわからない様子で十六夜に視線を向ける。

「貴方を投げた。ただ、それだけよ? さぁ立ちなさい。続けましょう――」

 芝田の視線に答えるように口を開いた十六夜は何てことは無い、単純な事だ。と言ってのけ芝田に向かって歩み寄っていく。

「ひ――ッ!?」

 立てと言われても立ち上がらず、おもむろに悲鳴を上げる芝田。その理由は歩み寄ってくる十六夜の瞳にあった。
 瞳孔は縦長に絞られ瞳の輪郭はやけに強調されたその様はとても人間と呼ばれる者が持つ瞳の形をしておらず、その不気味さから芝田は悲鳴を上げてしまったというわけだ。

874オリゼー:2009/08/07(金) 23:24:24
2.

「あ……ぁ……あ、貴方は一体……ッ」

「私は十六夜美響。災厄を喰らう者。それ以外になんと言えばいいのかしら?」

 「何者だ」 と、芝田が言うよりも先に十六夜が言葉を挟んだ。
 それは到底答えと言うには程遠いものであったが、十六夜自身はそれ以外に例えようが無い、と薄気味悪い笑みを浮かべながら両肩をすくめ上げる。

「立ち上がらないのかしら? それとも腰が抜けてしまった? でも、立ってもらわないとね」

「……このばけ――あう゛ッ!?」

 強気の姿勢を崩さない芝田であったが、体は金縛りにあったとでも言うかのように動く気配を見せず、いとも簡単に髪の毛を掴まれると強引に起き上がらされた。

「酷い有様になってしまったら御免なさいね。全ては貴方の災厄のせいなのだから」

 十六夜が芝田を捕らえたままロープの傍まで連れて行くと、芝田の顔をトップロープへと押し付け 「とくと味わいなさいッ」 そんな言葉を吐き捨て、芝田の顔をロープに擦りつけながら走り出した。

「ぎゃぁぁぁあああッ!! か、顔がッ!! 顔が……ぁ……ッ!!」

 ロープ伝いにコーナーまで辿りついた十六夜が芝田を解放すると、芝田は両手で摩擦の熱で焼かれた顔を覆いながらリングを転げまわる。

「よ、よくも……私の顔に……ッ」

 一頻り転げまわった芝田が顔から両手を離すと、そこにはくっきりと真横にロープの後が赤く残り、自分の顔に傷を付けられた芝田は怒りを露に十六夜を睨みつけながら立ち上がる。

「貴方に、そんな無駄口を叩いている暇なんてないのだけれど」

 それは一陣の風のようだった。
 立ち上がり怒りをぶつける芝田を前に、ひゅんっと音を立てた十六夜の体は一瞬にして芝田の懐へと潜り込んでいた。

「はや――いっ!? 痛ぅッ!?」

 十六夜の動きはそれだけに留まらない。両肘に痛みを感じた芝田が痛む所に視線をやれば、自分の両腕が既に十六夜に閂状態で捕らえられている事に気付く。
 だが、芝田がそれに気付いた所でどうすることも出来なかった。出来る事と言えば、既に閂スープレックスの体勢に入った十六夜に投げ捨てられる事だけだ。

「くッ!!」

 受身を取り一際派手な音を立てて背中から落ちた芝田であったが、閂スープレックス自体にさして威力が無かったのか、十六夜よりも早く起き上がり相手の頭に手をかけた瞬間。

――ミシッ

 芝田は自分の手首からそんな音が聞こえた事に気付いた。

「あ……ぁ……あ゛あ゛あ゛ッ!!」

 その音が手首の砕け散った音だとわかるのに数秒。
 十六夜が自分の手首を握り潰したのを目で見て、それを脳に伝えるまでの間、芝田の表情はポカンとしていた。が、それを認識した事で芝田の表情は一変した。
 生まれてこの方あげたことの無いような濁声交じりの悲鳴、砕けたと認識してから襲う酷い激痛に顔は歪む。
 芝田は掴まれている手から自分の手を引き出すと、試合中だという事も忘れ手首を押さえ十六夜を目の前にして蹲ってしまう。

875オリゼー:2009/08/07(金) 23:25:24
ラスト.

「いいの? 対戦相手を前にそんな格好で……」

「だ、だまらっしゃい……ひ、人の手首をこんなにして……おいて……ッ」

 幾ら口調を強めようと、芝田の額から止まる事無く流れ落ちる脂汗を見れば、強い口調が強がりであるという事は明らかで、十六夜もそれをわかっているのだろう、芝田の言葉に耳も貸さぬ態度で視線を合わせるべくしゃがみこみ 「強がりだけじゃ、ダメよ」 そう言って、至極ゆっくり芝田の喉へ手を伸ばすと、芝田はそれを交わす事が出来なかった。動きがゆっくりしすぎて逆に反応できなかった、とでも言おうか。

「ご……ぉ……ッ……ぉ゛……ぇ゛ッ」

 十六夜の手に力が篭れば篭るほど、芝田の呼吸器は締め付けられ顔は真っ赤に染まっていく。
 呻き声と共に泡状の唾液を吐き出す芝田を片手で軽々と持ち上げた十六夜が、その手の力を少しばかり緩めて芝田を見上げると 「何か、言う事は?」
 そんな短い言葉を投げた。


「わ、わかったわ……私の災厄……。私の災厄は貴方に出会った事なのね」

「ふぅん、今の貴方から滲み出てくる災厄の味……最高よ」

 苦悶の表情を浮かべながら、か細い声でそう答える芝田に十六夜は舌なめずりをして見せ、最高の味を体全身で味わっているのかブルっと身震いして見せる

「カァァァアアア――ッ!!」

――災厄 降臨

 十六夜の手に再び力が篭ると、指の一本一本が芝田の首筋に食い込んで、全ての指が食い込めば、十六夜は力の限り芝田の体を喉輪落としでリングへと叩き付ける。
 試合はそれで決まっていた。
 しかし、十六夜はそれでは終わらない。リングへと叩き付けた芝田を再度持ち上げ一度、二度、三度、四度……連続して芝田を喉輪落としでリングへと叩きつけるのだった――


 十六夜が芝田を喉輪落としでリングへと何度叩き付けた事だろう。
 既に芝田の体に力はなく、まるで人形のようにその四肢を垂らし、十六夜の思うがままに蹂躙され続けていた。

「最後の一滴まで……美味しく頂かせてもらったわ、お疲れ様」

 まるで果汁を全て絞った果実の絞り粕をゴミ箱へと投げ捨てるように、十六夜は芝田の体を場外へ向けて放り投げる。
 大きな放物線を描いてトップロープを越えた芝田の体であったが、場外には落下せず、片脚がトップロープに引っかかると逆さ吊りの状態で、その惨状を観衆の目へと晒す。

「ぁ……あ゛……ッ……ぇ゛……う゛……ッ」

 既に力尽きた芝田はその状態から抜け出す事も出来ず、白目を向いたまま体を小刻みに痙攣させ、助けられるまでの間その痴態をさらし続けるのだった――
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