445 :んじゃ、せっかくだしノエルネタを……:2009/12/25(金) 00:07:16 ID:GbtauzP6
「何してんだよノエルちゃんっ!!」

声と共にリングへ駆け寄っていったのは相羽 和希と、杉浦 美月だ。
周りの二人には目もくれず、噛み付かんばかりの勢いでノエルへ詰め寄っていく。
しかし、当人は至って静かな様子で一瞬目を伏せると、二人に向かってハッキリと言った。

「……バイバイ……」

言うと同時に片手を伸ばして和希を捕まえると、その身体を宙へ軽々と放り投げた。
冗談のような高さに宙を舞った和希の身体は、見る者が詰まらせた息を再び吐く程の時間を掛けてリングの外へと消えて行き……
のだ。。

"ドォ…ッ!!"

決して大きくないハズの重々しい音を、会場に轟かせた。
あまりの光景に場内が静まり返る中、そんな場の空気を全く解さない間延びした声が静寂を破る。

「あ〜あ、捨てらちゃいましたねぇ……それじゃ、こっちの要らないのもポイしちゃいましょうか〜」

その声に我を取り戻した美月の眼前に、みぎりの巨大な手が迫る。
逃げなければという思考よりも、危険を察知した本能が回避運動を始めるよりも遥かに速く迫る暴力。
……しかし、それが美月に届くことはなかった。

「……だめ」

みぎりの腕を掴んだまま、ノエルはそれだけを呟いた。
むっとした表情を浮かべて無理矢理に手を伸ばそうとするみぎりだが、譲らないノエルにしぶしぶといった様子で引き下がった。

「ノエルさん、どうしてなんですか?」

話を聞くには今しかないと、再びノエルに突然の離脱の真意を問う美月。
しかし、それに答えたのは零だった。

「弱いからだ、よ」

たった一言のあまりに短い答え。
俯いたまま何も答えようとしないノエルに代わり、今度はみぎりが口を挟む。

「負けてばかりの人達となんて、一緒に居たくないですもんね〜。難しいこと言えたって、試合に勝てないんじゃ意味無いですよ?」

その言葉に一気に怒りが込み上げた。
自分の用いる"計算"が、詰るところは唯の奇策であることも、それに頼らざるを得ない自分の弱さも嫌になる程自覚している。
だからと言って……

446 :んじゃ、せっかくだしノエルネタを……:2009/12/25(金) 00:08:57 ID:GbtauzP6
「そんなこと知るかぁあああああああああああっ!!」

その叫びはリングの外から迸った。
先程放り捨てられた和希がリングへ登り、再度ノエルへと迫る。
皆の注目がそこに集まる……自分から意識が逸れた瞬間、美月もまたノエルに掴み掛かった。
怒りに任せて暴走したのではない……和希の声が抑えてくれた……いま優先すべきなのは、ノエルの身の確保だ。
これまでの様子から、二人と心から協調しているわけではないらしい。
このデモンストレーションが目的ならば、他の団体メンバーがいつ集まってくるかも知れない状況で、何時までもアウェーに留まり続ける意味は無い。
小賢しい手だが、それさえ凌いでしまえば問答をする時間などいくらでも作れる。
そこまで考えたところでノエルの腕に絡みついた美月の視界が反転し、凄まじい衝撃に襲われた。


"……〜ぅ、すり〜ぃ……"


遠くからの声と視界一面のスカイブルー……和希の朦朧とする意識はゆっくりと現状を把握していく。
ノエルの突然の離脱、そこに駆けつけた自分と美月、リングの外に投げ落とされ……

「わ〜ん、つ〜うぅ、すり〜ぃ♪ またまたスリーカウントですねぇ、これで……え〜っとぉ、何度目でしたっけ?」

からかいの響きを含んだ声に一気に正気に返った和希。
うつ伏せの状態からが慌てて立ち上がろうとするも、背後から強烈な力で無理矢理リングに貼り付けられ、頭を下げたまま尻だけを突き出す様となった。

「……あ、起きた」
「とっくにKOですけどね〜。でも、これでよ〜っく分かりましたよねぇ?」

何とか首を捻って辺りを窺うと、自分の傍に片膝を着いたノエル……その手は自分を押さえ込んでいる……と、その両脇に立つみぎりと零を見付けた。

「二人掛かりで負けちゃってぇ、後輩相手に気絶してぇ……ホント、だらしないです〜」
「結局口だけだ、ね」
「っ!! 何だと、この……」
「言いたいこと、あるなら……起きてからにし、て」
「話はそれからですね〜。まあ、無理でしょうけど」

みぎりの言うとおり、先程から必死に立ち上がろうとするも自分の上半身が持ち上がる気配はまるで無い。
嘲りの眼差しで見下してくる二人の前で、無様に尻を振り続けるだけだ。

「面白いですよね〜二人揃ってじたばたじたばた……」
「カウントしてたよ、ね」

視線を追うと……丁度ノエルを挟んで、仰向けにリングに貼り付けられている美月の姿が見えた。
襟元を片手で抑え付けられ、自分と同じく上半身が全く持ち上がらないようだ。
さっきまでの自分と同じく、必死になって起き上がろうとするもバタバタ足を振り回し、腰を上に突き上げるだけの滑稽な様。
自分が暢気に気を失っている間に二人から散々なぶられたのだろう、普段のクールな様子など全く窺えない顔だ。
美月もまた和希を見て、その視線が絡み合う。
屈辱感と無力感、絶望感に彩られた……いまの自分の心境を突き付ける光景に、胸の内に冷たく、重いものが込み上がり……弾けた。
それまでの抵抗が完全に止まり、静かにリングに這い蹲る和希と美月。

447 :んじゃ、せっかくだしノエルネタを……:2009/12/25(金) 00:10:10 ID:GbtauzP6
「静かになった、ね」
「ですね〜。折角ですから、そのまま自分のことをじっくり考えたほうがいいんじゃないしょうか〜?」
「……あっ そろそろ時間だ、よ」

見れば、さらに数人がリングに向かってこようとしているようだ。

「むぅ、今日は不完全燃焼ですよぉ」
「行く、よ」

駆け出す二人を追うべく立ち上がるノエル。

(……ひどいこと、言っちゃった)

二人の言葉が不快だった、とても辛かった。
しかし、二人の言ったことも事実……何時までも若手のままではいられないのだ。
プロである以上は結果……自分の価値を示すことができなければリングに立つことさえできないのだ。
そして、聞いてしまった……団体が無価値な人員を整理しようとしていることを……。
ノエルにしても、傍らに立つ二人のような天才ではない。
ただ、力が強いと言うその特徴が、ことプロレスに於いては和希の根性や三月の計算に比べて結果に現れ易かったにすぎない。
キャラを演じたり、スタイルを変えるような器用な真似ができない自分たちを護る為、ノエルがとった手段がこれだった。
だからこそ、立ち上がることのできない和希と美月に向かってもう一度言った。


「……バイバイ……」
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