656名無しさん:2010/02/25(木) 00:46:12 ID:???
―1―

「アイツを凌駕するのかWARSの龍とやらは……。あぁ、愉快だ。実に面白い、面白くてたまらないな」

 一人の男が目下の光景を可笑しそうに口端を持ち上げながらそう呟いた。
 男の目と鼻の先には自らが主催するリングの上でコスチュームに龍の刺繍をあしらい、ポニーテールを荒々しく揺らす一人のレスラーがいる。
 そして、そのレスラーに蹂躙される大きな体をもつレスラーが一人――。


「負けちゃいけないんです……ぅ……負けたら社長さんに……嫌わ……れ……ぇ……」

 大きな体のレスラーは体の至る所に痣を作り、顔は腫れ上がって出血も見て取れる。
 果てに両足は既にいうことを利かないのだろう、両腕だけでその巨体を引き摺りロープを目指す。
 
「お前が誰に嫌われようが、そんなもんアタシの知ったことか」

 ポニーテールのレスラーはそう吐き捨てる。
 そんな彼女も無傷とは言えないものの、その姿は巨体のレスラーとは対照的で試合の勝者と敗者は明確だった。

「あ、貴方は……なんで……みぎりに意地悪するんですかぁ……っ……みぎりは……ただ、社長さんに好かれたいだけ……なの゛――ッ!?」

 そんな事を言いながら自らをみぎりと呼ぶレスラーがロープに手をかけた瞬間。
 背後から歩み寄ったポニーテールのレスラーがぶっきらぼうに、みぎりの顔を後頭部から踏み潰し、あまつさえ踏みつけたその足に捻りまで加える始末。

「何度も言わせるな、ガキじゃあるまいし」

 お前の都合などどうでもいい、そう思わせる口調と見下す冷めた視線、ポニーテールのレスラーは踏み潰した相手にそれを向ける。
 だが、その踏み潰した相手から反応が返ってくる事は無かった。
 マットと押しつぶされた顔の隙間から紅い染みがゆっくりと広がって、みぎりの大きな体は不自然なまでの痙攣を繰り返す。
 そして、少し遅れて試合の終わりを告げるゴングが会場内に鳴り響いた。

658名無しさん:2010/02/25(木) 00:47:14 ID:???
―2―

「サンダー龍子……単身乗り込んで来ただけの事はある。やはり殴りこみはこうでなくてはいけないな」

 少しばかり間をおいたおざなりの拍手と共に、先ほど口端を持ち上げていた男がおざなりの拍手とは打って変わって感服した様子でリング上のレスラーに向けて目を細める。

「社長、みぎりの処理はいかがしましょう」

 その男の斜め後ろ、そこから黒服に身を包んだロシア人女性が男に向ってそう言うと男はくくっと喉を鳴らし片手で顎を擦りながら 「しないでいい」 と、ロシア人女性に告げる。

「珍しい事もあるのですね」

「そうかい? 壊れた訳ではないからな、使い道は幾らでもある。それにハン、君はこれから試合があるじゃあないか、みぎりの事を考えている暇なんてあるのか?」

 ハンが男の判断に目を丸くすると、男はゆっくりとハンの方へと振り向いてそう言うと小さく両肩を竦めて見せた。

「時間は気にしないでいい。君の試合の賭け内容は勝つか負けるかの単純なものだ」

「わかりました」

「しかし、君を雇って正解だった。なにせこのリングで関節の女神が釣れてしまったのだからなぁ」

 丁重に頭を下げるハンを尻目に、顎を擦り上げながら男は不敵な笑みを浮かべ既に無人となったリングを見る。

「楽しみにして頂ければ幸いです」

「楽しみに? 悪いが私はここでの試合全て、試合前から楽しみにした事など一度たりともない。試合を見て面白いと思う事は多々あるがね」

「そ、そうですか……では、失礼します」

 決して自分に視線を向けてくる事の無い男に対し、ハンは全身を凍りつかせると震えた口調で再度頭を垂れ姿を消した――。

659名無しさん:2010/02/25(木) 00:48:34 ID:???
―3―

 ――それは少し前の事。

「ぎいぁぁぁあああッ!! あ゛!! あがッ!! ぁ゛ッ!!」

 リングの上で肘を抱えながら蹲って断末魔の叫びを上げるのは村上千春。
 傍らには彼女が愛用していた金属製のナックルが転がっていた。
 そのナックルを拾い上げ、しげしげとそれを眺める対戦相手であろうショートボブカットのレスラーが 「貴方がこんなものを持ち出すからいけないのよ」 と、悪びれも無く言い放ち拾い上げたナックルを興味なさ気に再度マットへ放り投げた。

「別に壊してなんかいやしないわ、ただ外しただけなのに随分と情けないものね……それにしても……本当にこんな所にいるだなんて思っても見なかった」

 未だ叫び声を上げ続ける千春を他所にボブカットのレスラーは涼しい顔を一変させ眉間にシワを寄せたかと思えば、鋭い視線を場外向けると観客席のとある場所に向って人差し指を伸ばす。
 伸ばした指の先、丁度そこにいたのはこのリングを統括する男だった。

「ふむ、どうやら関節の女神様は君に挑戦したいようだ」

 指の先にいる男はリング上の彼女が自分を指していない事くらいわかっていた。
 リング上の彼女が指を指している相手は自分の斜め後ろにいる、眉一つ動かす事無く男は指招きだけで斜め後ろに待機しているハンを真横に呼び寄せ 「南利美、君が釣った獲物だ」 と、それだけを告げる。

「お騒がせして申し訳ありません……」

「いや、いい。関節の女神と関節の女王と呼ばれていた君の試合が組めるのだからね、むしろ此方が礼を言いたいくらいだ。いい金になる」

 本人を目の前にしても男は利益を生むことならば問題は無いと本音を隠す事無く零し、リング上の南利美へ視線を移し酷くゆっくりなテンポで拍手をして見せた――。

660名無しさん:2010/02/25(木) 00:49:45 ID:???
―4―

 ありとあらゆる欲望が支配するリング上に二人のレスラーは入場を済ませ、互いに自らのコーナーで同じような仕草のウォーミングアップで体を解しゴングを待っていた。
 一人は日本女子プロレス界で関節の女神と称される南利美。
 もう一人はかつて関節の女王と呼ばれていたナスターシャ・ハン。
 公開されたオッズには然程差は無くお互いかなりの金額が賭けられているようで、それを見て主催の男は思惑通りといった笑みを浮かべるとタイムキーパーにゴングの合図を送った。
 そして誰もが待ちわびていたであろうゴングが鳴り響くも、リング上の二人は中央で睨み合ったまま動きを止めていた。

「貴方に人を壊せる勇気はあるかしら?」

「壊す勇気? そんなもの必要ないわ。壊す前に試合は終わってしまうもの」

 ハンが南にそう問えば南は涼しい顔でそう言って 「人を無駄に壊すだなんて下品過ぎるわよ」 と、最後には鼻で笑ってみせる。

「ふふ、下品に見せないように綺麗に壊す事だって可能よ? それに、それが出来なければこのリングでは戦えない。特に私たちのようなレスラーはね」

「貴方がレスラー? 笑わせないで、あんな下種の下について関節の女王も地に落ちたものね」

「そう?」

 地に落ちたと言われようとも、それに関してハンは何も感じる事は無いのだろう。不機嫌になるわけでも無くあっけらかんと惚けたような表情で両肩を竦め上げると 「そろそろ始めましょう」 そう言って構えを取った。

「そうね、始めましょう。関節の女王は今日で死んだことにしておいてあげるわ――」


 二人の試合が始まったというのに会場はシラけ切ってた。
 プロレスが好きで見ている者からしてみれば息をするのも忘れてしまうような緊迫したグラウンドの攻防なのだが、ここにいる客層というのは別にそういったハイレベルのプロレスを見に来ている訳ではない。
 それこそ総合格闘技のような荒々しい試合や強者が弱者を一方的に蹂躙するような試合を求める者が多い中、二人のグラウンドの攻防というのはどうしても退屈に見えてしまうのだろう。

661名無しさん:2010/02/25(木) 00:51:40 ID:???
―5―

「……どうやら私はハンを飼い殺してしまったかな」

 そんなシラけた会場の中で真剣な眼差しを一人送るのは主催者である男。
 脚を組み、肘掛に肘を立て頬杖をつきながら男はそんな事を呟く。
 だが、そうは言ってもとりわけハンが南に遅れを取っているといった訳ではないのだが、逆にハンが南を攻め立てるといった事も無かった。
 両者の実力は五分五分であるというのが男の判断なのだろう。

「下種の犬に成り果てて……腐ったわね関節の女王も」

 リング上で肌を合わせる南ですらハンとは一度も対戦した事は無かったものの、かつてプロレス界で関節の女王と恐れられた彼女の今の実力に拍子抜けしているのか組合の最中に呆れ交じりの表情を浮かべていた。

「そんな事は無いわ、貴方が買いかぶり過ぎているだけよ。プロレスラーだったナスターシャ・ハンという人物を」

 南のグラップリングをいなして、己を愚弄する言葉すら否定せずに受け入れたハンは南とは対照的に笑みを浮かべていた。
 それは喜びや楽しさを表現するような笑みでは無く、何かそれ以外の物を含ませる不気味な笑み。

「貴方がさっき言ったように、関節の女王と呼ばれたナスターシャ・ハンは今日死んだことにしたほうが良いみたい……もしかしたら、貴方ならと思ったのだけれどね残念」

「訳のわからない強がりを言って――ッ!!」

 南からしてみればハンが何をもってそんな事を言うのか理解できなかった。
 その南が語気を強めると、今までの動きはウォーミングアップだったと思わせるかの如くキレのある動きでハンの腕関節を取りに行く。

662名無しさん:2010/02/25(木) 00:53:46 ID:???
―6―

――獲った!!

 素早い動きの中で南はハンの腕を掴んだはずだった。
 しかし掴んだと思えたハンの腕はなんて事無く南の手からするりと抜けて、ハンはそのまま立ち上がるとマットに寝る南を冷たい視線で見下ろした。 

「もはやプロレスへの興味は無くなってしまった……とでも言えば? 貴方とならきっと面白いと思えるだなんて……どうかしていたのね私たら」

 そう言うハンの表情は少しばかり名残惜しそうで、南から視線を外すと視線だけで軽く上を仰ぐ。

「く――ッ、それならば……その少しの未練と一緒に私が貴方に引導を渡してあげるわッ!!」

 ハンが試合に集中していないと見るや、南は起き上がりざまに両足を刈り取ろうかと身を低くしてタックルでハンの下半身を狙う。

「勘違いしないで? プロレスに興味が無くなっただけで戦うことに興味が無くなったわけではないのよ」

「な……ぁ――ッ!?」

 それは本当につかの間の出来事だった。
 ほんの少し前、ハンの腕を掴んだと確信した時と同じ様に南はハンの両足をタックルで確実に捕らえたと思っていた。
 けれど現実は片腕を取られたままマットにうつ伏せで組み伏せられ、身動きの取れない状態にさせられていた。
 ハンの見せた一瞬の動き、もはやプロレスとは形容しがたいもので、ある種の捕獲術とでも言えばいいだろうか。

「プロレスをしない私にプロレスラーである貴方が勝つ事は出来ない」

 ハンは組み伏せた南の横顔に自らの膝を押し当てると、膝とマットで南の顔を固定した。

「ぐく……そんな事、やってみなければわからないわッ」

 不利な体制を取らされてはいたものの南は強気の姿勢を崩す事無く奥歯を鳴らす。

「そうね。このリングに上がった以上、やらないわけにもいかないもの――ねッ!!」

「が……ッ……ぁ……あ?」

 ハンが言葉を終えた瞬間、マットに鮮血がほとばしった。
 固定した南の横顔にハンが真上から鼻を潰すように掌打を落とし南の鼻骨を叩き砕いたのだ。
 鼻を砕かれた南ではあったが組み伏せられ片腕は捕らえられたままゆえに、もがく事も出来ずただ自分の鼻血がマットを紅く染めるのを見ることしか出来ない。

「そう簡単に終わると思わない方がいいわ。何せここのお得意様方は秒殺というのが一番嫌いな決着なのだから」

 そう言うとハンは追い討ちをかける訳でも無く南を開放して見せた。
 試合はまだ始まったばかり――

663名無しさん:2010/02/25(木) 00:55:30 ID:???
―7―

 ハンが南の鼻骨を砕いてどれくらいだったであろうか、シラけ切っていた会場はいつの間にか興奮の坩堝と化し歓声が乱れ飛ぶ。
 中には 「殺せ」 などと物騒な台詞まで飛び交い、人のありとあらゆる醜い感情がリング上を染め上げるほどだ。

「くっはっはっは、どうやら飼い殺しにしてしまったと言うのは早合点だったようだ。なかなかどうして恐ろしいものじゃないかナスターシャ・ハン」

 両目を大きく見開き、さぞ楽しそうに笑うのは主催の男。
 リング上の光景を、会場の異様な空気を、ハンの姿を、南の姿を、それはそれは楽しそうに眺めていた。
 そのリング上では鼻を潰され鼻呼吸もままならず口を大きく開けて息を切らす南と、組み合った際に汚してしまったのだろう白い肌を南の血で染めたナスターシャ・ハンの試合が続けられている。

「ぜ……ぇ……ぜ……っ……ぇ」

 息を切らす南だが鼻を潰されただけに留まらず、片目は大きく腫れ上がり片腕は既に壊されてしまったのかダラリと下げて持ち上げる事は無い。
 ショートのボブカットも今では乱れ、そんな関節の女神を彩るのは悲壮感。

「徒手格闘術も暫く使っていなかったけれど、意外と体は覚えているものね……とは言っても、貴方の言うように下品な壊し方になってしまっているのが少し残念だけれど、まだやるのかしら? それともそろそろ終りにしましょうか?」

「うる……さい……ッ……私はまだ……やれる……ぅッ!!」

 片腕は下がったままで息も絶え絶えの南に何が出来るというのか、それでも彼女は負けを認めない。
 片腕が動かずとも、腕はまだ一本残っている。
 南はその残ったもう片方の腕を小さく震わせながらハンへと伸ばすのだが、それに勢いだとか鋭さだとか、そういった類のものは感じられなかった。

「貴方……たいそうなマゾヒズムの持ち主のようね」

 ハンは己に伸ばされた南の腕の手首部分を片手で掴むと、伸びきった腕の肘部分をもう片方の掌で躊躇する事無く真下から突き上げた。

「んぎぃ……ぃ゛……ッ……ぃ゛ッ!?」

 突き上げられた南の肘はそこを支点にへの字に折れ曲がり、それと共に南の表情は苦痛に歪んでハンが手首から手を離すと南は両腕を下に垂らし膝からゆっくり崩れ落ちマットへとへたり込んだ。

「は……ッ……はぁ……ッ……あ゛……ぁ……ぅ゛」

「これで、貴方は何も出来なく……なった」

 ここでようやく南の顔に絶望感というものが浮かび上がる。
 それこそハンを目の前に背を向け逃げるといった行動に出る事は無かったが、口元は小さく振るえて視線は動かない二本の腕を見ているのか左右へ大きく泳ぎハンを見る事は無い。

「でも、まだやれるのよね? そうでしょ?」

 何処をどう見てもこれ以上は戦えない南を前にハンは微かに声色を弾ませて、マットへ垂れる南の片腕を掴み肩から首にかけて自らの両足を絡ませると三角締めの体制から一気に南の頚動脈を締め上げた。

「ひぎゅ……ぅ゛……ぐ……ぐるじ……が……ぁ゛……ッ……でぎ……っ」

「苦しくしているのだから当たり前でしょう?」

 ハンの両足が南を締め上げる度、南の口からは呻き声と血の混ざった薄紅色の泡のようなものが止め処なく溢れ顔色は紅潮を極めるか。

「し……し……ん゛……じゃ……ぁ゛……ぉ゛……」

「大丈夫よ。流石に試合中に殺しはしないわ、終わってからはどうなるか保障はできないけれど……あら、もう聞こえていないかしら?」

 試合と銘打たれた舞台で流石に殺人を犯すわけにはいかないと、苦しむ南にハンが声をかけるもそれは既に南の耳には届いてはいなかった。
 ハンの両足にはさまれた南の頭部はうな垂れ、全身はひきつけを起こしたかのように大きく痙攣し、口からは泡の他に涎が垂れ落ち、鼻からは鼻血と鼻水が混ざった粘度のある液体が糸を引いてマットに垂れ、南はもう動く事もハンの声にすら反応することも出来なかった――

664名無しさん:2010/02/25(木) 00:56:41 ID:???
―ラスト―

 試合が終わった数日後――
 とある団体の社長室。
 まだそれほど年を取ったとは思えない社長と思しき女性が一人。
 随分と憔悴しきったような顔色でCD-ROMが入ったケースを眺めていた。

「まさか……ね」

 女社長は震える声を押し殺すように息を呑み、ケースからCD-ROMを取り出すと机に置かれたノートパソコンへセットした。
 どうやらそのCD-ROMにはビデオファイルが収まっていたようで、自動再生された映像がノートパソコンのディスプレイへと写し出される。
 そこに写しだされたのは、女社長がいる部屋と同じく社長室と思しき場所。

「お久しぶりです」

 ただただ無人の部屋が映し出されていると思えば、突如として男の声が流れ始め女社長は小首をかしげる。
 「お久しぶりです」 と、言われても、あまりに聞き覚えの無い声だったからだ。

「とはいっても、貴方は覚えちゃいないかもしれませんがね」

 どこか、自分をあざ笑うかのような口調に女社長はさしていい気分になれないまま映像を眺め続けていると 「これならどうでしょう?」 その言葉が流れるとカメラアングルが変わり一人の男が映し出され、女社長は戦慄を覚えずにはいられなかった。

「あ……ぁ……ぁ……ッ」

 震える口を片手で押さえ、こみ上げるものを涙目で必死にこらえる。
 そんな女社長の脳裏に蘇るのはあのときの記憶。

――いえいえ、しっかし……良いセンスしてます。かなりイケてると思いますよ今回の照明器具は

 あの時の男だ。
 決して忘れる事は無い。
 あの男がそう言って去った後、社長室には無残な姿で吊るされた菊池理宇がいたのだから忘れる事などで気やしない。

「一番最初の贈り物とセンスの良い照明はどうしているでしょうか? ま、元々貴方の物だったのでお返ししただけに過ぎないのですけれどね……それにしても貴方の団体の選手はどうしてこうも懲りないのでしょうか?」

 女社長に気持ち悪さと怒りの混じったものがこみ上げる間にも、映像は淡々と進んでいく中で男がそう言いうとカメラアングルは徐々に引いて行き、そこに映し出されるのは女社長にとって衝撃的なものであった。
 映像が捉えたのは肌着をつけることを許されず、両手足を枷でつながれ四つん這いの状態の南利美。
 それだけに留まらず、猿轡をされとめどなく涎を垂らす南の背にウイスキーボトルとグラス、そしてアイスペール。もはや南を人として扱う事もせずテーブルとして扱うその映像に女社長は握った拳を机に落とす。

「この光景を見て、さぞお怒りのことでしょう。ただ、勘違いをして頂きたくは無い。私はこれが処分されそうになった所をテーブルとして救って上げたのだからね」

 映像の中の男はそう言って南に近づくと背に乗せたグラスを手に取り指二本ほどの量が注がれたウイスキーを一気に飲み干して、くっくと腹の底を振るわせるような笑い声を零した。

「実に良いテーブルですよ彼女は……。さて、貴方はどうするおつもりでしょう? 警察にお届けになりますか? それも結構。ですが、お考えになって頂きたい。法治国家であるこの国で隠すこともせずこうしてこういった行為を映像にして貴方に送っているという事をね……国家権力、マスコミその他もろもろが貴方の味方である保障は何処にも無い。くくく、ははは、あはははははは!!」

 男の見せる絶対的なその自信が何処から来るのか、女社長にはまったく検討もつかなかった。
 女社長が出来る事といえばノートパソコンから流れる憎たらしいまでの男の笑い声に、怒りを覚え血が滲むほど唇をかみ締める事だけだった――

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