705名無しさん:2010/03/05(金) 02:15:39 ID:???
デッキブラシ 蛍光灯 有刺鉄線

 米国フィラデルフィア郊外の特設リング。
 小早川志保は椅子に座ったままで、次に迫った自らの試合を待っていた。
 真夏の屋外会場に降り注ぐさんさんとした日差し。
 熱い空気がアスファルトの上でゆらゆらと揺れるのを、志保はじっと見つめる。
 アメリカ武者修行のついでに参戦することになったインディー団体だが
アメリカの『クソインディープロレス』は志保の想像を遥かに超えていた。
 リングの方向からは激しい炸裂音と、それをかき消すような観客の歓声。
 志保の心の中にあるのは後悔の念ただひとつであった。
 どうやら決着がついたらしく、地鳴りのような声援、『Hoooooooly Shit!!!!!!』の大合唱である。
 志保は座っていたパイプ椅子を折りたたむと、それを右手に持って入場ゲートまで走る。

 肌を刺す灼熱の太陽。
 屋外会場なのに蒸し暑い、その熱気に汗が噴き出す。
 パイプ椅子を手にしたまま、志保はブルーコーナーへともたれかかる。
 足元をてらてらと濡らしている、まだ乾ききっていない鮮血が生々しい。
 セルリアンブルーのマットに散乱しているひん曲がったパイプ椅子。
 ニュートラルコーナーには有刺鉄線を巻きつけたベニヤ板、
場外には蛍光灯を組み合わせた奇怪なオブジェが設置されている。
 赤コーナーに立っているのは、元AAC所属"メヒコのじゃじゃ馬娘"ジュリア・カーチス。
 日本では休憩前の中堅レスラーであったが、
このマットでは水を得た魚のように生き生きしていると、志保は噂で聞いていた。
「志保、『プロレス』を楽しもうよ。 ゴーフォーブロック、当たって砕けろってね」
 ニヤニヤと笑いながら、手のひらをひらひらと振るジュリア。
 そういえば、彼女の紹介でこの団体への参戦へとなったのであった。
 とんだ疫病神となった彼女を志保は睨みつけると、ジュリアへと駆け出し
手に持ったパイプ椅子を敵の頭めがけて振り下ろす。
 するりとかわしたジュリアは転がりながら場外エスケープ。
 志保も手にした武器を構えながらジュリアを追いかける。
 しかし待っていたのはリングサイド席から強奪したパイプ椅子を手に構えているジュリアであった。
 ジュリアは志保の顔めがけて武器をフルスイング。
 とっさに志保がバックステップで避けると、勢い余ったパイプ椅子はサードロープに叩きつけられて軽くバウンドする。
「ずいぶんやってくれるじゃない」
 小早川志保も血の気の多いレスラーである。
 体重を乗せた一撃をかわされてバランスを崩したジュリアの頭めがけて、手にしたパイプ椅子を叩き付けた。
 力任せに振り下ろされたパイプ椅子はジュリアの脳天にクリーンヒットし座面が抜けて
青く晴れ渡ったフィラデルフィアの空へと高く飛び上がった。
 志保はジュリアの首に引っかかったままのフレームを無造作に引き寄せると、
ポニーテールを乱暴に掴んで場外マットにフェイスクラッシャー。
 アスファルトに敷かれた薄いマットに敵の顔面を叩きつけると、
目の前に倒れこんでいる相手の背中を踏みつけて吠える。

706名無しさん:2010/03/05(金) 02:16:48 ID:???
 果たして、小早川志保はセルリアンブルーのマットの上で息を切らしていた。
 真夏の福島のような蒸し暑くてじっとりとした、このフィラデルフィアの空気は
激情した志保の闘いのリズムを狂わせるように体力を奪っていく。
 完璧に決まった場外でのフェイスクラッシャーだったが、
ジュリアはマット下に転がって時間を稼ぐと、それからは彼女の時間であった。
 ラフ技を織り交ぜて闘うジュリアを、志保は攻め落とすことが出来ずにいる。
 日本での余所行きのスタイルとは違う彼女のホームの闘いかたに、志保は焦りを感じざるを得ない。
 志保は流れを変えようと攻撃を繰り出すものの、ジュリアは巧くすかして致命打を受けず、
それがまた自分の体力を奪っていく、まさに悪循環であった。
 そんななかで志保が焦って出したクロスボディをジュリアは見逃さなかった。
 ジュリアは志保の身体をキャッチすると、ニュートラルコーナーに駆け出す。
 いわゆるオクラホマスタンピードであるが、ただひとつ違うのはコーナーにはバリケード。
 薄いベニヤ板にバラ線が巻かれただけの雑な作りのデスマッチアイテムが置かれている。
 有刺鉄線ボードとか言われているアレである。
 志保が悲鳴を上げる間もないほどの勢いで、二人の身体はそれに吸い込まれていった。
 二人の体重が掛けられたベニヤ板は真っ二つに割れて、志保の背中にバラ線が食い込む。
 志保は背中が厚く燃えるような激痛に軽く悲鳴を上げると、マットをのた打ち回った。
 ジュリアは真っ二つになったベニヤ板をマットに置くと、逃げようとする志保を捕らえてボディスラム。
「いぎいいいいいいっ」
 背中を突き刺される激痛に悲鳴を上げる志保の胸板めがけてジュリアはニードロップを落とすと、
そのまま身体を浴びせて片エビ固め。
 体重が掛けられた背中に有刺鉄線が食い込み、志保は激痛に顔を歪ませた。
「うあっ、くそっ、うっ、あああああああっ」
 志保は咆哮を上げると足をばたつかせて肩を浮かせる。
 カウントは2。
 フォールを返したものの、無理にもがいたために突き刺さったバラ線が肉を切り裂き、
燃えるような鮮血が四角いジャングルを真っ赤に染めてゆく。

 ジュリアは転がりながらサードロープの下からエプロン下へと降りた。
 マットの下をごそごそとあさると、自前の凶器を見つけ出して手に取る。
 リングに戻ったジュリアは、うつぶせになったまま息も絶え絶えの志保の横に仁王立ちすると、
凶器を持った手を観客に見せ付けるように高々と上げる。
 ジュリアの手に握られていたのは有刺鉄線を巻きつけたデッキブラシ。
 リングシューズの底で志保の頭にストンピングを3回落とすと、そのまま踏みにじる。
 ジュリアはデッキブラシの先端を志保の背中にあてがうと、力任せに擦り上げた。
「い゛ああああああああっ、あ゛あ゛っあっ」
 有刺鉄線で切り刻まれた背中をデッキブラシで乱暴にこすりあげられ、
傷口がめくれ上がり血飛沫が吹き出す。
 今までリングで体験したことの無いほどの激痛に、志保はマットをかきむしって逃げようとするものの、
このデスマッチのリングに逃げ場なんてものは無いのだ。
 ジュリアは左足で志保の側頭部を踏みつけたまま、足元に横たわる敵の傷口を無慈悲になぶり続ける。
 汗だくになって額に張り付く前髪を手の甲でぬぐうと、観客の手拍子を煽るジュリア。

707名無しさん:2010/03/05(金) 02:17:50 ID:???
「もうヤダッ!! 終わらせてっ……おわらしぇてくださひぃ」
 背中に開いた傷口からあふれ出す鮮血がどくどくとこぼれ落ちて、
志保の背中は首に巻いたスカーフと同じ色一色に染まりきっていた。
 志保は普段の勝気な性格から考えられないほどに泣きじゃくりながら、
自分を嬲り殺そうかとする対戦相手に助けを求める。
「OK、OK、終わらせるから。 志保も意外にコンジョーないね」
 ジュリアはマットに顔をこすり付けて泣いている志保の頭を蹴り飛ばすと前髪を掴み、
ロープの向こう側、場外を指差す。
 志保はリング上の地獄から逃げるためにゆらゆらと立ち上がると、
ジュリアに前髪を掴まれたままふらふら歩き出す。
 ジュリアに髪を引っ張られて先導されたまま志保が連れてこられたのはロープの向こう側、エプロンの上であった。
 ロープに傷だらけの背中をあずけた志保の目の前には、
キャンプファイヤーのやぐらのように何十本もの蛍光灯を積み上げたデスマッチアイテム。
 蛍光灯製の墓標のおぞましさに、志保の脚は無意識の内に震えだしていた。
 これから起こることから志保は逃げようとするものの、全身の筋肉が恐怖で硬直して満足に動かすことも出来ず
涙をこぼれ落としながら震えることしか出来なかった。
「ヘンな落ちかたしたらホントに死んじゃうかもね」
「ヤダぁ、死にたくないっ……あたしまだ死にたくないよぅ」
 ジュリアは志保の頭を後ろから両脚ではさむと、器用にトップロープへと座る。
「ほら、失明したくなかったらしっかり目を瞑って」
 ジュリアは志保の後頭部にすねを押し当てると、場外マットに設置されたデスマッチアイテムに身体ごと飛び降りた。
 場外へのカーフブランティングである。
 押し出された志保の両脚がエプロンから離れると、会場中に響き渡るほどの断末魔がこだまする。
「い゛あ゛あああああああああああああああああああっ」
 少し遅れて飛び散る蛍光灯の破片と炸裂音。
 二人の姿は白い粉塵に包まれてうかがい知ることは出来ないが、
これが試合のエンディングシーンであることは誰の目にも明らかであった。
「あ゛……はぁ、あ、あぁ」
 志保はグラウンドゼロの中心で、体中に刺さった破片に悶えながら、
涙と鼻水まみれになった顔を歪ませている。
 蛍光灯が貫通して破裂したのか、志保の肩口の肉がえぐれて血潮がこんこんと溢れ出していた。
 ジュリアはボロボロにちぎれたスカーフを志保の首から剥ぎ取ると、
血液でどす黒く染まったそれを高く掲げ勝利の雄たけびを上げた。
 その咆哮に応えるように沸き立つ会場の空気が、志保には遠く感じられる。
「狂ってるよ、こんな……うぅっ、っ」
 志保は顔が傷つくのも構わずに、破片の散らばった場外マットに顔をうずめた。

 アメリカのクソインディー団体の洗礼を受けた小早川志保だが、この試合後に緊急帰国。
 二度と海外団体への遠征に行くことは無かったといわれている。

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