819名無しさん:2010/03/28(日) 00:50:18 ID:OdREIeCg

1.
「おかしいですねぇ。今日の試合はハードコアマッチって聞いてたのに、ハンディキャップマッチだったんですかぁ?」

石川涼美は武器を構えた三人のレスラーを眺めつつ、解説者席にいる社長に視線を向ける。その表情に焦りはなく、兄弟の悪戯を見つけた姉のような柔和な笑みだった。
小川ひかるはその余裕の笑みが気にいらず、木刀を持つ手の色が白くなるほど握り込んだ。

「今日の試合は龍子先輩のタッグパートナーの座を賭けたハードコアマッチです。『反則裁定無し』この意味分かりますよね?」
「何をやっても止めるレフェリーはいねぇ。石川の姉さんにゃ良くしてもらったが、お宅の社長さんからはそれなりの額の金をもらってるんでね」
「まぁ、潔くアタシ達にボコられてくれや。そしたら肋骨の一本くらいで済ましてやるよ」

小川の言葉を継いだ村上姉妹がケラケラと品のない笑い声をあげながらも、隙のない動きで獲物をコーナーへと追い詰めていく。
武器を持ったレスラー三人をまえに、さすがの石川も後退を余儀なくしていた。
そして、レスラーたちの動きが止まる。石川の背がコーナーポストについたからだ。もはや後退は許されない。
彼女達のようなレスラーの手を借りるのは小川としても苦渋の決断だったが、憧れの龍子のタッグパートナーになるためには手段を選んでいられなかった。
そして、村上姉妹の力を借りて石川涼美を追い詰めているという現実。それこそが価値あることだった。

「もう逃げ場はありませんよ、石川先輩」
「ひかるちゃん、これで私に勝てると思ってるの?」
「……なにが言いたいんですか?」
「ネズミがいくら集まったところでライオンには勝てませんよぅ」

820名無しさん:2010/03/28(日) 00:51:39 ID:OdREIeCg
2.
石川の嘲笑に対して真っ先に動いたのは村上千春だった。
手に持ったスレッジハンマーを振り上げ、木こりが斧を振るうように相手の側頭部めがけて豪快に振り下ろす。
当たれば致命傷は避けられないが、その動きはあまりにも隙が大きかった。斧を振り上げたときには、普段の温和な表情からは想像し難い鋭い動きで距離を詰めた石川の肘が千春の顔面にめり込んでいた。
さらに、石川は盛大に鼻血を吹き上げて仰け反る千春の腕を獲ると、無理矢理伸ばし自身の膝に思い切り叩き付けた。

「ぎィやぁあああぁぁあああッ!!」

乾いた音がリングに響く。しかし、それも利き腕をへし折られた村上千春の悲鳴によってすぐに掻き消されてしまう。

「テメェ、よくも姉貴を。ブッ殺してやる」

姉の腕を何のためらいもなく折った相手に対して、村上千秋は手につけたメリケンサックで殴りかかる。
コーナーという狭い空間では背後は取れない。しかし、千秋は限界まで身体を沈め、石川の視界の外からパンチを繰り出す。
ジュニアヘビー級のソレとはいえ、メリケンサックで強化された拳である。顔面に入れば致命傷は避けられない。

「ひぎィあッ!?」

悲鳴とともに白い軌跡が宙を舞った。しかし、それは石川涼美のものではなく、姉の村上千春が上げたものだった。
砕け飛び散った歯がマットに落ちた頃、千秋は自分が殴ったものをようやく理解し、狼狽の声を上げた。

「ア、姉貴!?」
「お姉ちゃんを殴ったりして悪い子ですねぇ」

まるで動きを読んでいたかのように村上千春の顔を盾代わりに使った石川は、狼狽する妹レスラーの頭部をがっちりと掴むと意地の悪い笑みを浮かべる。

「お姉ちゃんとお揃いの血塗れの顔にしてあげますよ」
「ひぃっ!! や、やめッ……へぶッ!?」

容赦のないヘッドバットが顎に叩き込まれ、マットに倒れ込む村上千秋の顔面に、止めとばかりにストンピングが落とされる。
しかし、悲鳴は上がらなかった。最初の頭突きを食らったとき、すでに村上千秋は意識を失っていたのだから。

821名無しさん:2010/03/28(日) 00:53:24 ID:OdREIeCg
3.
目の前で起こった惨劇をまえに、小川ひかるは呆然と立ち尽くしていた。
二人のレスラーがやられるまで30秒足らず、小川には呆然と惨劇を見ていることしかできなかった。
村上姉妹の相手をしている石川には致命的な隙があったはずだった。しかし、小川の身体はどうしても動かなかった。

「これで、五分かな? でも、ひかるちゃんはまだ武器持ってるし、私のほうが少し不利かしら」

額に付いた血を手で拭いながら、石川が一歩前にでる。

「ッ!?」

『一歩前にでる』ただそれだけの動きに鬼気迫るものを感じ、小川は自身でも気付かないうちに後退していた。
そんな小川の姿を見て、石川は表情を歪める。

「勝つためにどんな手段も厭わないその姿勢は評価に値します。でも、龍子のパートナーになるには弱過ぎです、特に精神が」

二人のレスラーを倒すときにも温厚な表情を崩さなかった石川だったが、苦虫を潰したような表情でそう吐き捨てた。

「私はまだ負けていません。貴女に勝って龍子先輩に認めてもらいます。私こそがパートナーに相応しいって」

自身に言い聞かせるように呟き、木刀を握り締める。
木刀とはいえ、防具をつけていない人間に振り下ろせば骨を折ることは容易い。喉や水月を突けば相手を昏倒させることもできる。
それなりのリーチもあり、スレッジハンマーのように取り扱いが難しいわけでもない。

(勝つのは難しいことでじゃない。弱気になる必要はない)

心の中で何度も繰り返し、鎌首をもたげていた恐怖心を押さえ込む。
木刀を正眼に構える。すぐに特攻するような愚は犯さない。それでは村上千春の二の舞だ。

「来ないんですか? ならこちらから行きますよ〜」

ロープの反動を利用し砲弾の如く迫る石川に対し、カウンターを狙う。なにを狙っているのか分からないが、リーチはこちらに分がある。
木刀を振り上げ、真っ直ぐに向かってくる石川の顔面を狙い振り下ろす。
小川の視界がコマ送り映像の如くゆっくりと流れる。
木刀の間合い寸前でジャンプしドロップキックをする石川の姿。だが振り下ろされる木刀は止まらない。木刀は石川の靴裏へ吸い込まれ……あっけなく折れた。
それでも、圧倒的な質量の塊となった石川のドロップキックの勢いは止まらず、そのまま小川の顔面にめり込む。
一瞬浮遊感を感じ、身体がマットに叩き付けられた。

822名無しさん:2010/03/28(日) 00:54:40 ID:OdREIeCg
4.
「ッッ!!」

本能的に霞む視界の前に両腕をクロスさせると、衝撃とともに痛みが駆け抜ける。サッカーボールキックの要領で思い切り顔面を蹴りにこられたのだ。もし、ガードが間に合ってなければ意識が飛んでいただろう。
リング外へエスケープするため、ゴロゴロとマットを転がり逃げようとするが、すぐに髪を掴まれ、リング中央まで引き戻されてしまう。
だが、追撃はなかった。立ち上がり、構える。
すでに武器はなく、仲間もいない。

「まだ、やる? お仲間も武器も壊れちゃったけど」
「……当然です。私にはまだレスリングがありますから」

血を吐き出すように呟く。

(甘かった。頭数を揃え、武器を持てば勝てる。あまりにも稚拙な作戦だった)

対して石川涼美はさすがの名参謀ぶりだった。
追い込まれたフリをしてコーナーへと下がったのは、背後という絶対的な死角を作らず、相手の攻めるルートを限定し、行動を読みやすくするため。
ハードコアマッチであえて武器を持たなかったのは、どんな攻撃にも素早く柔軟に対処するためだ
武器を持つということはそれだけ行動が制限されるということでもある。人間は武器という絶対的なアドバンテージを使わずにいられない。

(私は石川先輩の掌で踊らされていた。それならそれでも良い。もう、正攻法で攻めるしか方法は残ってないんだから)

覚悟を決め、重心を低く落とす。
狙うはタックルからのサブミッション。まともに組み合えばパワー技に引き込まれる。慎重に間合いを取り、カウンターを狙う。
一瞬で二人のレスラーが昏倒した怒涛の展開からひとときの膠着状態へと移り変わる。だが、それも長くは続かなかった。
膠着状態を破ったのは石川涼美だった。ロープの反動を利用し猛然と肉薄するのに対し、小川は僅かに上体を上げてギリギリまで相手の出方を見る。
間合いの僅か外で腕をしならせる石川。

(ラリアット、それならッ!!)

勝機を見出し、笑みがこぼれる。

823名無しさん:2010/03/28(日) 00:55:51 ID:OdREIeCg
5.
首を折られかねない強烈なラリアットに対し、小川は相手の懐にもぐりこむようにタックルを仕掛ける。
振り下ろされる腕を避けつつその腕を捕り、足をかけて一気に倒す。

脇固め。

レスラーが本気で仕掛けた関節技。自力での脱出は不可能である。

「ひぐゥッ!!」

石川がこの試合ではじめて苦痛の声を漏らす。

「タップしてください。脱臼しますよ」
「ひ……ひかるちゃんにそんな勇気があるかしら」
「私は本気です」

石川の挑発にさらに極める。しかし、石川は悲鳴を上げながらもタップはしない。

「後悔しますよ」

肩の外れる音とに、石川の悲鳴が会場に響いた。

「……勝った」

肩を抱えて蹲る石川を見下ろし。小川は安堵の息を漏らす。

(これで、私が龍子先輩のパートナー)

感慨深い想いが込み上げる。
だが、

(どうして鐘が鳴らないの?)

試合終了を告げるゴングが鳴らない。それはすなわち……。

「まだ試合は終わっていませんよぅ」

824名無しさん:2010/03/28(日) 00:58:06 ID:OdREIeCg
6.
いつもの笑顔を痛みで引き攣らせながらも、石川涼美が立ち上がっていた。

「そんな……ありえない」
「たとえ髪の毛一本になっても相手を締め上げる。それがWARSレスラーじゃないですか。それに……」

そう言うと、石川はしっかりとした足取りでコーナーへと向かっていく。
そして、外れた肩を抱えコーナーに押し付け一気に体重をかけると、

ボグンッ

胸の悪くなるような音を立て外れていた方が無理矢理嵌めこまれる。

「肩を外されたぐらいなら自分で治せば良いんですよ」

無理矢理治した肩の調子を確かめるようにぐるぐると回す石川の姿を、小川は呆然と見つめていた。

「……ありえない」

武器を持ったレスラー二人を何の躊躇もなく秒殺することも、外された肩を無理矢理治してまだ闘おうとすることも。
一度は押さえ込んだはずの恐怖心が再び湧き上がってくる。
小川は無意識のまま後退していた。

「また下がっちゃうんですか? ひかるちゃんはホント臆病者ですねぇ」
「……ッ」
「でもでも、逃がしまんよぉ。次は私が技をかける番です」

一歩また一歩と距離を詰められる。そのプレッシャーに耐え切れず、後ろ後ろへと下がってしまう。
ピタリ、背中に冷たい感覚が走る。

「ッ!?」
「もう逃げ場はありませんよぉ」

コーナーへと追い詰められ、石川の太い腕に喉元を捕らえられてしまう。

「くはぁッ」

毒蛇のように喉に絡みつき、気道を締め上げる手を引き離そうと必死で抵抗するが、

「苦しいですか? でも審判は来ませんよ。だって今日はそういうルールですから。ひかるちゃんが望んだことでしょ」
「ぐうぁッ」
「そろそろ放してあげたほうがよさそうですね」

825名無しさん:2010/03/28(日) 01:00:55 ID:OdREIeCg
7.
石川は小川の身体を片腕一本で高く持ち上げると、マットに一気に叩き落した。
衝撃で僅かに残っていた肺の中の空気が押し出され、直前まで気道を締め上げられていたのも合わさって激しく咽てしまう。

「まだまだこれからですよ」

そうにこやかに笑うと、うつ伏せ状態の小川の身体をクラッチしそのまま肩に背負うように持ち上げる。
カナディアンバックブリーカーである。

「あッ、あ、いやぁ、ぐぅッ」

上下に揺さぶられ小川の背骨がエグイ角度で反っていく。

「良い悲鳴を上げますねぇ。もう二度と龍子のパートナーになりたいなんて大それた事考えないように徹底的に可愛がってあげますからね」

石川の笑顔に悪意が満ちていく。
背骨を攻め抜かれ口から漏れる悲鳴が小さくなった頃、小川の身体はゴミでも捨てるようにマットに投げられ、受身も取れないままマットに叩き付けられる。

「せっかくのハードコアマッチでも武器を使わないのもアレですね。さっくり流血といきましょう」

石川は背骨から来る痛みでまともに動くことすらできない小川の身体に馬乗りになると、恐怖心を煽るように右手に握ったメリケンサックで頬をなでる。

「じゃあ、一発目いきまーす」

ライトに照らされたメリケンサックが輝いた瞬間、激痛が顔面を駆け巡った。
メリケンサックで強化された石川の右拳は小川の鼻を潰し付着した鼻血を撒き散らしながら、二発目でその頬を陥没させた。
三発四発と拳が振り下ろされるたびに血が飛び散る。

「い゛やッ……も゛う゛……許し……てくださ……い゛」

五発目の拳が振り下ろされようとしたそのとき、小川の悲鳴が会場内に響いた。
顔面を血袋のように真っ赤にして、涙ながらに懇願する小川に、石川はとびきり残酷な宣告を用意していた。

「良い子ですね、良くできました。ご褒美にお姉さんが抱きしめてあげますね」
「嫌、い゛や゛です。やめッ……」

小川の必死の抵抗もむなしく、易々と持ち上げられてしまう。

「苦しまないようにフルパワーでしてあげるから」

石川の両腕の筋肉が盛り上がり、背骨と肋骨が圧迫される。だが、痛みはなかった。
なぜなら、小川ひかるは痛みを感じるまえに恐怖で失神していたのだから
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